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2026.07.23
日本経済
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イラン情勢
6月でナフサの価格転嫁はどこまで進んだのか
~コストの波及シミュレーションと6月企業物価指数によるアップデート~
阿原 健一郎
- 要旨
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- 6月の企業物価指数では、2月対比で川中の中間財への価格転嫁が着実に進行した。特に「合成ゴム」や「化学肥料」において、これまでの原材料高を受けた段階的な値上げや価格改定の結果が大きく反映された。
- 6月は中東情勢の一時的な緊張緩和により上流素材で価格低下や一服感がみられたものの、7月に入り攻撃の再開等でナフサ価格は再び上昇している。上流のコスト低下の恩恵が下流へ届く前に、再びコスト上昇圧力に晒される可能性が高い。
- これまでのコスト上昇に伴う遅行的な価格転嫁(川下への波及)が続くなか、ナフサ市況の再上昇という新たな不確実性が、今後の各セクターの価格設定に与える影響を慎重に見極める必要がある。
川中の原料・素材では引き続き価格が上昇
2026年6月の企業物価指数は前年比+7.1%と、前月(同+6.6%)から伸びが加速した。理論上ナフサ高の影響を強く受ける30部門を対象に、2月を基準とした5月、6月の企業物価指数の変化率を比較すると、引き続き、原材料高の直接・間接効果が川中の中間財へとラグを伴って波及していることが確認された(図表1、2)。
品目別の動向を概観すると、6月に入り目立った動きを見せているのが「合成ゴム」と「化学肥料」である。5月の2月対比変化率が+13.2%であった「合成ゴム」は、6月には同+29.2%と急激に上昇幅を拡大させた。また、これまで転嫁が停滞していた「化学肥料」も、6月には同+2.9%と明確にプラス圏へと浮上した。これらは、長引く原材料高に対する段階的な価格転嫁、あるいは3月以降の原材料高を受けて確定していた価格改定が、6月に入り順次反映された結果と推測される(注1、2)。


上流品目の一部にみられた「一服感」
一方で、6月には、米国・イランが戦闘終結の覚書に署名したことで、一時的に中東情勢の緊張が緩和し、ナフサの価格が落ち着く局面が見られた。ナフサ価格の下落を受け、その影響を直接受ける川上の一部製品では前月から価格が落ち込むものもみられる。
具体的には、サプライチェーンのより上流に位置する「石油化学系芳香族製品」や「環式中間物・合成染料・有機顔料」に目を向けると、5月から6月にかけて指数の上昇率が鈍化している。下流製品での転嫁が進展する裏で、最も川上に近い基礎素材の一部では、ナフサの価格低下や需給バランスの調整により、初期のコストプッシュ圧力がピークアウトし、一服感がみられる。
足もとのナフサ市況再燃と先行きの不透明感
6月時点では、最上流セクターにおけるコストプッシュ圧力の一服感が見られたものの、足もとのナフサの価格動向を鑑みると、この落ち着きは短命に終わる可能性が高い。
直近のナフサ価格(シンガポール取引所・期近先物)の推移をみると、2月末の米国・イスラエルによるイランへの攻撃開始を契機に一時1,100ドル/トンの水準まで急騰した後、6月18日の「戦闘終結の覚書への署名」を受けて700ドル台へと調整し、これが直近の川上の物価低下に寄与していた。しかし、7月に入り米国とイランによる攻撃の応酬が再び発生し、覚書の履行は停止され、イラン情勢を巡る不透明感が再び強まったことで、ナフサ価格は再び上昇している(図表3)。この事態が長引けば、上流セクターにおける一時的なコスト低下の恩恵は川中・川下へ波及する前に霧散することになるだろう。
川中・川下製品においてこれまでのコスト高を受けた価格転嫁が進む一方、足もとではナフサ市況の再上昇という新たな不確定要因が発生している。既存のコスト波及の進展度合いとともに、上流価格の再反転が今後の各セクターにおける価格動向や収益意識にどう作用するか、引き続き注視が必要である。

【参考文献】
阿原(2026)、「ナフサ高騰の価格転嫁はどこまで進んだのか」
阿原(2026)、「5月で価格転嫁はどこまで進んだのか」
【注釈】
注1) 理論上の各部門の価格上昇率(直接効果、間接効果)は、ナフサの価格が+52.6%(2月を基準とした4~6月平均価格の上昇率)上昇した場合の試算値。価格上昇の影響はラグを伴って波及すると考えられるため、本稿では4~6月の平均価格を外生的なショックとして試算し直している(なお、試算の詳細は「ナフサ高騰の価格転嫁はどこまで進んだのか」を参照されたい)。また、当然ながら、図表1に記載の企業物価指数の上昇率は各部門の平均値であり、各企業が直面する価格上昇圧力は取り扱う財、置かれている状況によって幅がある点には留意されたい。
注2) 図表1からわかる通り、川中・川下製品において、実際の上昇率が「ナフサ高騰のみをショックとした理論値」を上回る品目があるが、これは便乗値上げではなく、ナフサ以外の複合的なコストプッシュ要因が同時に作用しているためである。具体的には、円安による輸入コストの増加、物流費やエネルギーコストの高止まり、人件費の上昇などが挙げられる。企業の価格圧力を正確に把握するには、ナフサ単体にとどまらず、輸入物価全体や各種サービスコスト等も含めた分析が必要となる。
阿原 健一郎
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 阿原 健一郎
あはら けんいちろう
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジアパシフィック経済、世界経済、計量分析
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