イラン情勢悪化による貿易への影響分析

~「原油・ナフサ」だけではない~

星野 卓也

要旨
  • イラン情勢悪化を受けた貿易の変化を4月貿易統計・確速で分析。①中東原油・ナフサ輸入の急減と代替調達の進展、②中東からのアルミニウム輸入急減と代替調達の進展、③中東向け自動車輸出の急減と欧州・アフリカ向け自動車輸出の底堅さ、④オーストラリアからのLNG輸入の減少、⑤AI・データセンター関連財輸出の堅調さ、の5点を確認した。イラン情勢悪化の影響は顕著だが、代替調達をはじめそれを相殺する動きもみられる。
目次

イラン情勢悪化後の貿易を詳細に分析―5つの特徴的な動き

28日、財務省から4月の貿易統計の詳細(確速)が示されている。品目別・国別の貿易動向がデータで明らかになっており、イラン情勢の悪化、ホルムズ海峡の実質封鎖等の影響をハードデータで詳細に把握することができる。データからみられる特徴的な動きを5点にまとめた。

1.中東原油・ナフサ輸入の急減と代替調達の進展

  • 4月の原油輸入量は前年比▲63.7%と急減、中東からの輸入は同▲67.2%と急減。ホルムズ海峡の実質封鎖を受けて、輸入が停滞(図表1)。米国からの輸入は同+38.8%と明確に増加。規模は小さいが、徐々に代替調達が進展。

  • 精製品であるナフサの輸入量についても、4月は全体で前年比▲45.1%と大きく減少。中東からの調達が同▲80.1%と大幅減少。

  • 一方、米国、インド、アルジェリアからの輸入が明確に増加(図表2)。代替調達の進展が確認できる。政府は5月の代替調達はさらに拡大する見込みとしており、中東外からの輸入はもう一段拡大する可能性が高い。

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2.アルミニウム輸入急減と代替調達の動き

  • イラン情勢の悪化の影響が大きい品目の一つがアルミニウムである。アルミ精錬には大量の電力が必要であり、中東は安価なエネルギーを背景に一次アルミの主要産地となってきた。日本でも自動車・電子機器・建設などにおいて幅広く使われる素材。

  • 中東からの輸入が4月に前年比▲74.5%と急減(図表3)。輸入全体では前年比▲24.4%、インド、中国、ブラジルからの輸入が増加。代替調達が減少幅は抑えている状況。

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3.自動車輸出:中東向け急減と欧州・アフリカ向けの底堅さ

  • 中東向け乗用車輸出数量が前年比▲93.4%と急減。ホルムズ海峡の実質封鎖によって日本の輸入のみでなく、日本→中東への輸出も大きく減少した形(図表4)。

  • 一方、欧州向け乗用車輸出は前年比+22.5%、アフリカ向けは同+35.9%と強い。いずれもイラン情勢悪化以前から堅調であるが、国内自動車メーカーが中東向け生産ラインを切り替える動きも報じられている。輸出先の代替の動きも一部影響か。

  • また、中東(ドバイ)は日本からアフリカ向け輸出の中継点として機能してきた。今回のホルムズ封鎖を受けて中東を経由せずに直送に切り替える動きも出てきている模様。こちらはアフリカ向け輸出の増加に影響している可能性がある。

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4.オーストラリアからのLNG輸入が減少

  • 4月のLNG(液化天然ガス)輸入量が前年比▲20.6%と減少(図表5)。中東からの輸入は同▲76.1%と大幅減少しているほか、最大調達先であるオーストラリアからのLNG輸入も前年比▲29.8%と減少。

  • オーストラリアから日本への輸入については、ホルムズ封鎖の影響は直接的に及ばない。しかし、ホルムズ閉鎖を受けた各国のLNG調達強化によりスポット市場での競争は激化。間接的に調達減につながっている可能性。

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5.中東情勢悪化の外側で堅調なAI関連

  • データセンター・AI投資の拡大を反映した輸出が中東ショックとは独立して堅調。集積回路の輸出は前年比+45.0%、半導体素子は同+28.7%。電力インフラに関連する変圧器・電源:同+23.6%、接続用機器:同+18.7%も世界向けで底堅く推移(図表6)。

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以上

星野 卓也


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星野 卓也

ほしの たくや

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 日本経済、財政、社会保障、労働諸制度の分析、予測

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