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2026.05.07
新興国経済
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産油国経済
イラン情勢
OPECプラス有志7カ国、6月は日量18.8万バレル増産合意で結束に腐心
~原油価格への影響は限定的、先行きは増産競争に発展するリスクも~
西濵 徹
- 要旨
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- OPECプラスの有志7カ国は5月3日にオンライン閣僚会合を開催し、6月の生産量について日量18.8万バレルの増産で合意した。直前にUAEがOPECを脱退したこともあり、今回の小幅増産合意は枠組みの結束維持を内外に示す狙いがうかがえる。
- しかし、ホルムズ海峡の事実上の封鎖により湾岸産油国の実際の生産量は低迷しており、増産合意が物理的な供給拡大に直結するかは中東情勢次第の状況が続く。サウジの3月の実績産油量が生産枠を大幅に下回っていることもその象徴であり、今回の合意は実態よりも「主導権の誇示」としての側面が強いと判断できる。
- UAEのOPECからの脱退や増産方針を契機に、先行きはカザフスタンなどによる生産枠超過といった既存の不満が再燃するとともに、枠内での増産競争に発展するリスクが残る。中東情勢が安定化してホルムズ海峡が再開されれば、そのリスクは一層高まると予想される。
- 結論として、今回の小幅増産決定にもかかわらず、原油価格の動向はイラン情勢に左右され続けるとみられ、供給制約が解消されない限り増産合意の実効性は極めて限定的である。
- 目次
【OPECプラス有志7カ国、6月は日量18.8万バレルの増産合意で結束維持に腐心】
主要産油国の枠組みであるOPECプラスの7カ国(サウジアラビア、ロシア、イラク、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)は、5月3日にオンラインで閣僚会合を開催した。今回の有志国会合は、5月1日付でUAE(アラブ首長国連合)がOPEC(石油輸出国機構)から脱退したことを受け(注1)、同国を除く7カ国体制で初めて開催された。
中東情勢の緊迫化をきっかけに原油価格が急上昇したことを受けて(図1)、有志国は4月、5月と2ヶ月連続で日量20.6万バレルの増産で合意した。しかし、UAEのOPEC脱退により、OPECプラスの世界産油量に占める割合は45%程度と3pt低下している。そのうえ、OPECプラス全体としての余剰生産能力も約2割低下しており、OPECによる需給調整能力の低下が懸念されていた。

こうしたなか、6月の生産量について、過去2ヶ月のUAEの増産量を除いた分に相当する日量18.8万バレルの増産で合意した。今回の決定は協調体制の継続を確認した形であり、世界の原油需要の0.2%程度に当たる小幅増産を容認する一方、枠内の盟主であるサウジが主導する生産調整を通じて価格形成面で影響力を維持したい思惑がうかがえる。
【OPECプラスが価格形成面での主導権を維持したいとの思惑も透ける】
なお、有志国は4月以降に段階的な増産に動いているものの、ホルムズ海峡の事実上の封鎖を受けて湾岸産油国は貯蔵施設が不足しているうえ、イランによる関連設備に対する攻撃を理由に実際の生産量は低迷している。なかでもサウジについては、今回の決定で6月の生産枠は日量1029.1万バレルに引き上げられたものの、3月の生産量は報告ベースで同776万バレルにとどまる。増産で合意こそしているものの、実際に供給拡大につながるかは中東情勢の行方に大きく左右される状況は変わっていない。
会合後に公表した声明文では、「市場の状況を注視しつつ、評価を続ける」と説明しており、原油価格の安定に向けて慎重に増産を進める意向を示した格好である。このことから、今回の合意はホルムズ海峡の通行再開に備えて増産に動く用意があることに加え、UAEが離脱した後もOPECプラス全体としては従来通りのアプローチを維持する考えを改めて示したと捉えられる。その一方、表向きは小幅増産姿勢を維持した格好ではあるものの、同海峡の事実上の封鎖という供給制約要因を勘案すれば、物理的な供給拡大への影響力は極めて限定的であり、あくまでOPECプラスが主導権を握っていることを誇示することが目的との見方もできる。
【先行きはOPECプラスの枠内からも増産競争に動くリスクは残る】
UAEのOPECからの離脱を受けて、今回は枠組みの維持に腐心することにより結束を演出することが重視された可能性がある。しかし、UAEが増産に舵を切ったことで、枠内においてはほころびが表面化するリスクは残る。さらに、中東情勢が安定化することにより、ホルムズ海峡の通行が再開されれば、湾岸産油国をはじめとする枠内の国々は一転して増産に動き、増産競争に発展していく可能性は高まっている。
背景には、枠内の国々のなかで過去に増産に向けた動きが活発化していることがある。カザフスタンでは、2025年に主力のテンギス油田を拡張して以降、生産超過が常態化しており、3月の産油量は生産枠を1割上回る状況にある。同国以外にも、イラクやオマーンといった国々が生産枠を超えて生産する動きをみせていた。2023年末にアフリカ2位の産油国であるアンゴラがOPECを脱退した背景にも、OPECプラスが定める生産枠と自国の目標生産量との乖離が影響したとされる。したがって、今後OPECからの脱退を受けてUAEが大幅増産に動いて石油収入を増やすことに成功すれば、枠内の国々のなかで生産枠に対する不満が再び高まることは充分に考えられる。
【小幅増産を決定したものの、原油価格の動向は引き続き中東情勢次第の展開が続く】
とはいえ、今回の増産決定にもかかわらず、湾岸産油国にとっては供給制約を理由に事実上の減産を余儀なくされる状況は変わらない。イラン情勢の見通しが立たないなかでは、今回の決定も「絵に描いた餅」となる可能性は極めて高く、イランによる報復攻撃が激化していることを受けて、状況は一段と厳しさを増すことも予想される。こうしたことから、原油価格の動向は引き続きイラン情勢次第の展開が続くとみられる。
注1 4月30日付レポート「UAEがOPEC、OPECプラスからの脱退を表明」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

