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2026.04.21
新興国経済
原油
産油国経済
イラン情勢
内外経済ウォッチ『アジア・新興国~OPEC有志国、5月も日量20.6万バレル増産で合意~』(2026年5月号)
西濵 徹
5月も日量20.6万バレルの増産で合意に至る
主要産油国の枠組みであるOPECプラスの有志8ヶ国(サウジアラビア、ロシア、イラク、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)は、4月5日にオンラインで閣僚会合を開催した。イスラエルと米国が2月末にイランに対する軍事行動を開始したことを受けて、イラン革命防衛隊は報復攻撃を活発化させるとともに、ホルムズ海峡を事実上封鎖するなど、イラン情勢は不透明な展開をみせた。ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾をつなぐ海上輸送の要衝であるうえ、ペルシャ湾岸産油国の原油輸出の大部分、世界の原油消費量の約2割が通過する。革命防衛隊による事実上の封鎖を受けて、全世界的にエネルギー需給環境が急速に悪化するとの懸念を反映して原油価格は上昇し、その後も事態が長期化したことを受けて高止まりした。こうしたことから、有志8ヶ国は、イスラエルと米国による軍事行動開始直後に開催した3月の閣僚会合において、4月に日量20.6万バレルの増産を行うことで合意した。
増産でイラン情勢の悪影響緩和を目指したが…
有志8ヶ国は2024年から自主減産を実施したものの、自主減産が長期化するなかで世界の原油生産量に占めるシェアが縮小するなど、影響力の低下が顕著になった。このため、有志8ヶ国は2025年4月に一転して自主減産を段階的に縮小させるなど実質増産に動いてきた。しかし、世界経済を巡る不透明感が需要の重しとなる一方、実質増産による需給緩和観測を理由に原油価格は下落した。これを受け、有志8ヶ国は2026年1~3月の増産を停止するなど、生産計画を修正した。その後はイラン情勢の悪化を受けて、4月は増産に動く方針を示したものの、会合では増産幅について日量13.7万~54.8万バレルと幅のある形で協議が行われたとされた。これは、状況に応じて一段の増産が可能であるとの姿勢を示したと捉えられる。しかし、ホルムズ海峡の事実上封鎖という供給制約を理由に、金融市場においては決定そのものが「実効性に乏しい」と見なされ、結果的に原油価格が高止まりしてきた可能性がある。
停戦交渉に期待も、原油価格はイラン情勢次第
今回の閣僚会合において、有志8ヶ国は5月に日量20.6万バレルと4月と同水準の増産を行うことで合意している。なお、増産を決定したにもかかわらず、ホルムズ海峡が事実上封鎖されていることを受けて、増産余力があるサウジアラビア、UAE、クウェート、イラクといった湾岸産油国は事実上の減産を余儀なくされている。したがって、今回の決定は、ホルムズ海峡が解放されて航行が再開されれば増産に動く方針を示したものと捉えられる。同日に開催された合同閣僚監視委員会(JMMC)では、ホルムズ海峡の事実上封鎖を念頭に、円滑な流通を確保する観点から海上ルートの保護が極めて重要との認識が強調された。一方、イランによる報復攻撃が湾岸産油国のエネルギーインフラを対象としたため、損傷した施設の復旧に時間を要するなど供給懸念が高まっていることも指摘されている。米国とイランは4月8日に2週間の停戦で合意、停戦交渉に臨む意向が明らかにされるなど、事態打開に向けた兆しがうかがえる。イランは、停戦期間中におけるホルムズ海峡の安全航行を保証する方針を示すなど、供給懸念が解消される可能性も出ている。しかし、本稿執筆時点において停戦交渉の行方は見通しが立っておらず、再び事態が悪化する懸念は残る。こうした状況を勘案すれば、有志8ヶ国は原油価格の安定に向けた「強い意志」を示したことは間違いないものの、引き続きイラン情勢の行方に左右される展開が続くことは避けられない。
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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