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2026.04.22
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イラン情勢
トランプ氏が停戦無期限延長表明、市場が見越した「TACO」は続くか
~TACOの先に待つチキンゲームと実体経済への懸念をどう織り込むか、市場の懸念は続く~
西濵 徹
- 要旨
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2月末のイスラエルと米国によるイランへの軍事行動を受け、イランはホルムズ海峡を封鎖した。これにより原油や肥料価格が上昇し、エルニーニョによる不作懸念も重なり、食料やエネルギーを中心としたインフレ加速が世界経済に悪影響を与えるリスクが高まっている。
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トランプ米大統領は当初、数週間での終結を見込むも、1ヶ月半以上経過しても目的は達成されていない。4月7日に2週間の停戦が合意し、直接交渉が行われるも決裂した。その後も米軍がイランの港湾封鎖、ホルムズ海峡の逆封鎖に動き、協議の行方は不透明さが続いた。
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停戦中もイスラエルがヒズボラへの軍事作戦を継続したことがイランの態度硬化を招いた。4月16日にイスラエルとレバノンが停戦合意し、打開の糸口がみえたものの、イランは協議に後ろ向きの姿勢を崩さなかった。パキスタンが仲介役として積極的に働きかけを続けた。
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強気姿勢を示し続けたトランプ氏は4月22日、パキスタンの仲介を理由に停戦の無期限延長と和平交渉継続を表明した。一方、米軍による海上封鎖は継続される。しかし、革命防衛隊系メディアなどはこれを批判しており、協議の先行きは不透明なままである。
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金融市場はトランプ氏が最終的に妥協するとの「TACO」期待から株価が上昇してきた。今回はその期待通りの展開となったが、米国とイランの立場の隔たりは依然大きく、協議が長期化すれば実体経済への打撃をどう織り込むかが市場にとって難しい課題となろう。
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2月末のイスラエルと米国によるイランへの軍事行動をきっかけに、中東情勢は緊迫が続いている。イスラエルと米国の最初の攻撃では、イランの最高指導者であったハメネイ師など政府要人を殺害するなど一定の成果を収めた。一方、イラン革命防衛隊はイスラエルのほか、中東の米軍基地や関連施設、米国と関係が深い国々に対する報復攻撃に動いた。さらに、ペルシャ湾とオマーン湾をつなぐ海上輸送の要衝であり、湾岸産油国の輸出入の大部分、世界の石油消費量の2割が通過するホルムズ海峡を事実上封鎖した。その結果、中東産原油の供給懸念を理由に原油価格は上昇しており、世界的にエネルギー価格の上昇を招いている。また、湾岸産油国は尿素など窒素系肥料の世界輸出量の3分の1を占め、供給懸念を背景に肥料価格も上昇しており、農業生産に影響を与える可能性が高まっている。2026年はエルニーニョ現象の発生による異常気象や不作も予想されるなか、中東情勢の緊迫を受けて穀物価格が上昇する流れが一段と加速することも考えられる。したがって、中東情勢の緊迫化をきっかけに、食料品やエネルギーなど生活必需品を中心にインフレが加速するなど、幅広く世界経済に悪影響を与える懸念が高まっている。
トランプ米大統領は当初、攻撃期間は1~2週間、長くても3~4週間にとどまるとの見方を示した。しかし、軍事行動の開始から1ヶ月半以上が経過した現時点でも、トランプ氏が掲げた当初の目的(核開発施設の破壊、核燃料の奪取、テロ支援能力の排除)の目処が立っていない。その後は米国とイランの双方と関係が深いパキスタン、トルコ、エジプトなどが仲介役となる形で水面下での協議が進められた。そして、米国時間の4月7日に米国とイランが2週間の停戦で合意するとともに、最長15日間の停戦交渉に臨む意向を明らかにした。4月11~12日にはパキスタンのイスラマバードで両国による直接交渉が行われたが、長時間に及ぶ交渉にもかかわらず合意に至らなかった。両国の間でホルムズ海峡と核開発に関する問題が主な相違点になったとされる。その後も米国はトランプ氏を中心に交渉を継続する意向を示す一方、米軍がイランの港湾を海上封鎖するとともに、ホルムズ海峡の「逆封鎖」に動いた。これを受けて、イラン側は交渉継続を拒否する考えをみせるなど、協議の行方は不透明な展開が続いた。
イラン側が態度を硬化させた背景には、米国とイランは停戦で合意したものの、その間もイスラエルはイランと関係が深いレバノンの民兵組織であるヒズボラに対する軍事作戦を継続したことがある。米国がイランに対する軍事行動に踏み切った背後にも、イランを「最大の存亡の脅威」とみなすイスラエルが大きな影響を与えたとされる。イスラエルの存在が米国とイランによる停戦合意を巡る不確定要素とみられていたが、あらためてそうした懸念が顕在化した。こうしたなか、米国の仲介により4月16日にイスラエルとレバノンが10日間の停戦で合意し、翌17日に停戦期間に入ったことで、事態打開に向けた道筋が開かれたようにみえた。しかし、イランは前述した米軍によるイランの港湾に対する海上封鎖やホルムズ海峡の逆封鎖を批判するなど、公には協議に後ろ向きの姿勢をみせてきた。そのような状況のなか、仲介役であるパキスタンは米国、イラン双方に対して働きかけを行うなど、交渉継続に向けた動きを積極化させた。
トランプ氏は2週間の停戦期限を突如、自身のSNSで米国時間の4月22日夜と当初予定(同21日夜)から事実上1日延期する一方、繰り返し停戦の延長を望まない考えを示すなど強気の姿勢を示してきた。にもかかわらず、トランプ氏は22日にイランとの停戦を無期限に延長したうえで、和平交渉の継続を可能にすると表明した。その理由について、パキスタンからイランの指導者らが統一した提案を取りまとめ、協議が結論に至るまで攻撃を控えるよう要請があったとし、米国がこれに応じたとした。その一方、米軍によるイランの港湾に対する海上封鎖やホルムズ海峡の逆封鎖は継続する方針を示している。なお、トランプ氏の発表に対するイラン側からの公式な発表はなされていないものの、革命防衛隊に近いタスニム通信はイラン側からは停戦延長を要請しておらず、米軍による封鎖を武力突破すると警告している。さらに、イラン側の交渉役であったガリバフ国会議長の側近も、トランプ氏の発表を奇襲攻撃のための「時間稼ぎの策略」と批判しており、今後の協議が円滑に進むかは見通しが立たない状況が続いている。
こうした状況ながら、金融市場においては主要国を中心に株価が上昇基調を強めるなど活況を呈する動きをみせてきた。背景には、トランプ氏の政策運営を巡っては、最初は強硬姿勢で相手を威嚇する動きをみせるものの、株価や経済への悪影響を恐れて方針転換する動きが繰り返されてきたことがある。こうした動きについて、市場では「TACO(トランプ氏はいつも尻込みする)」という造語が共有されており、このところの株価上昇の動きもトランプ氏によるTACOを見越した動きと捉えられる。とはいえ、米国とイランの思惑には依然として大きな隔たりがあるうえ、イラン内部も米国との協議を巡って対立の構図がうかがえるなど一枚岩にほど遠く、協議が行きつ戻りつする可能性は極めて高い。今回は金融市場が期待したTACO通りとなったものの、先行きは米国とイラン双方が激しいチキンゲームの様相を呈することも予想され、事態が長期化することに伴う実体経済の悪化をどのように織り込むか難しい判断を迫られることになろう。
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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