- HOME
- レポート一覧
- 経済分析レポート(Trends)
- UAEがOPEC、OPECプラスからの脱退を表明
- Asia Trends
-
2026.04.30
アジア経済
新興国経済
原油
その他アジア経済
産油国経済
トランプ政権
イラン情勢
UAEがOPEC、OPECプラスからの脱退を表明
~短期的な影響は限定的も、原油市場のボラティリティ拡大、中東秩序に影響する可能性も~
西濵 徹
- 要旨
-
-
UAEは5月1日付でOPECおよびOPECプラスからの脱退を表明した。1967年以来の加盟国であり生産量はOPEC第3位であるが、増産をめぐるサウジとの対立、イエメン内戦を巡る亀裂、イランによる攻撃といった摩擦が積み重なっていた。市場への影響が限定的とみられるタイミングを選びつつ、加盟国との事前協議なしに一方的な脱退を決定した。
-
脱退の背景には、OPECを批判するトランプ米政権との関係も影響している可能性がある。また、イラン攻撃に際してアラブ連盟やGCCが明確な批判を示さなかったことへの不満も一因とされる。UAEはホルムズ海峡を迂回するパイプラインを経由する形で独自に輸出することが可能であり、「米国との距離感」の違いも今回の判断に影響したとみられる。
-
短期的な影響はホルムズ海峡封鎖による輸出停滞もあり限定的とみられる。しかし、中長期的には、UAEの増産計画がOPECの需給調整機能を低下させ、他の産油国も追随すれば原油市場のボラティリティが高まる恐れがある。さらに、OPECが担ってきた湾岸諸国の安全保障協調の枠組みも後退し、中東地域の秩序にも大きな影響を与える可能性がある。
-
【UAEがOPEC、OPECプラスからの脱退を表明】
UAE(アラブ首長国連邦)は4月28日、5月1日付で主要産油国の枠組みであるOPEC(石油輸出国機構)、ならびにロシアなど非加盟国を加えたOPECプラスから脱退すると表明した。UAEとOPECを巡っては、UAEを構成するアブダビ首長国が1967年にOPECに加盟し、1971年のUAE建国後も加盟を継続してきた。UAEの原油生産量は日量300万バレル程度で推移しており、OPECの枠内ではサウジアラビア、イラクに次ぐ第3位であるとともに、余剰生産能力の大きさを理由に有志8ヶ国の一角として生産枠の調整役を担ってきた。しかし、OPEC内では、価格維持を重視するサウジアラビアが協調減産を主導する一方、UAEは増産を主張して対立する場面が表面化してきた。サウジアラビアとUAEは、イエメン内戦への対応を巡っても亀裂が深まる動きがみられた。加えて、中東情勢の緊迫化によるホルムズ海峡の事実上の封鎖により湾岸産油国は輸出に苦慮、イランによる中東の米軍基地や関連施設への報復攻撃ではUAEは集中攻撃に直面した。こうしたなか、ホルムズ海峡の事実上の封鎖により湾岸産油国からの輸出が停滞しており、市場への影響を抑えられると判断し、敢えてこのタイミングでの脱退を決定したとしている。そのうえで、サウジアラビアをはじめとする加盟国と事前協議を行っていないとして、一方的に脱退する方針を明らかにしている。今回の決定についてUAEのマズルーイ・エネルギー相は、世界がより多くのエネルギー資源を必要とするなか、そのニーズを満たすことに役立つとの見方を示した。
【UAEがOPECから離脱を決定した別の背景とは】
UAEがOPECやOPECプラスからの離脱を決定した背景には、トランプ米政権との関係も影響している可能性がある。トランプ氏はかねてより、OPECが原油価格を高止まりさせて世界から搾取していると非難してきた。さらに、中東情勢が緊迫化するなかで、トランプ氏は湾岸地域に対する米軍の支援と原油価格を関連付ける形で、米国がOPEC加盟国を防衛する一方、OPEC加盟国はこうした動きにつけ込む形で原油価格を釣り上げていると批判していた。前述のようにUAEはイランによる報復攻撃に直面してきたものの、湾岸産油国の枠組みであるアラブ連盟やGCC(湾岸協力会議)がイランに対して明確な形で批判をしなかったことに、UAEは苛立ちを強めていたとされる。なお、UAEはペルシャ湾岸のハブシャーン油田からフジャイラ港をつなぐADCOP(アブダビ原油パイプライン)を通じて、ホルムズ海峡を経由しない形で日量150~180万バレルの原油をオマーン湾側に輸送することが可能である。その意味では、湾岸産油国のなかでの「米国との距離感」の違いも今回の判断に影響した可能性が考えられる。

【今回のUAEによる決定が与える影響を考える】
今回のUAEによるOPECとOPECプラスからの離脱決定について、前述したようにホルムズ海峡の事実上の封鎖で湾岸産油国が輸出に苦慮していることもあり、短期的な影響は限定的とみられる。今回の発表を受けても原油価格は高止まりしているが、これは短期的に原油供給が大幅に増えることはないとの見方を反映している可能性がある。しかし、OPECからの離脱により生産枠に関係なく増産を進めることが可能になるUAEは、2027年までに原油生産量を日量500万バレルまで拡大させる計画を進めている。そうなれば、OPEC内の生産枠を巡る調整弁となってきたサウジアラビアの役割の持続性に疑問が生じる。また、他の産油国もUAEに同調する形で市場シェアを優先する姿勢を強めれば、需給調整機能の低下を理由に原油市場のボラティリティが高まることも考えられる。
さらに、OPECは原油価格の調整のみならず、中東湾岸諸国における緩やかな安全保障協調の枠組みの役割を担ってきたが、UAEの脱退決定はこうした役割が後退することを意味する。したがって、今回の決定は中長期的な原油市場のあり方に加え、中東湾岸産油国の行方にも大きな影響を与える可能性は高いと考えられる。
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
-
経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
執筆者の最近のレポート
-
オーストラリア、インフレ加速確認でRBAは追加利上げに動くか ~物価上昇の一方で景気変調の兆し、3月会合同様「票割れ」の可能性は高まっている~
アジア経済
西濵 徹
-
コロンビアで左派政権継続の可能性高まる、米国との関係の行方は ~選挙の行方は政治や経済のみならず、日本のエネルギー安全保障にも影響~
新興国経済
西濵 徹
-
イラン戦争の「最大の勝者」とされるロシア経済の実像 ~中銀は8会合連続で利下げも利下げ局面の終了を示唆、戦時経済の構造的矛盾が深まる~
新興国経済
西濵 徹
-
メキシコが日本に100万バレルの原油輸出を表明 ~意義は極めて大きいが持続性は低い、需要抑制の検討を始める必要性は高まっている~
新興国経済
西濵 徹
-
台湾・3月輸出受注額は過去最高を更新(Asia Weekly (4/20~24)) ~半導体のみならず、すべての分野で受注が拡大する動きが確認される~
アジア経済
西濵 徹
関連テーマのレポート
-
オーストラリア、インフレ加速確認でRBAは追加利上げに動くか ~物価上昇の一方で景気変調の兆し、3月会合同様「票割れ」の可能性は高まっている~
アジア経済
西濵 徹
-
トルコ中銀、原油高による物価への影響を警戒して様子見継続 ~外貨準備高の減少で構造的な脆弱さが増すなか、リラ相場はジリ安が続く可能性が高い~
アジア経済
西濵 徹
-
フィリピン中銀、中東情勢による物価高で2年半ぶりの利上げ決定 ~為替介入を否定でペソ安圧力が強まり、さらなる利上げに追い込まれる可能性も~
アジア経済
西濵 徹
-
AI需要が韓国景気をけん引も、今後は中東情勢緊迫化の影響に懸念 ~KOSPIは堅調だがウォンは低調、サプライチェーン強靭化は日本への恩恵に期待~
アジア経済
西濵 徹
-
インドネシア中銀、ルピア最安値更新で様子見姿勢を維持 ~ルピア安定を最重要課題に挙げるも、中東情勢に左右される展開は続く~
アジア経済
西濵 徹

