ガソリン価格急騰と補助再開

~補助支給でCPIコアを0.5%Pt程度抑制。次は電気・ガス代か~

新家 義貴

要旨
  • イラン情勢悪化を受けた原油価格の高騰により、3月16日時点のガソリン価格は190.8円/ℓと、前週から+29.0円の急上昇。

  • 政府はガソリン補助再開を決定済で、3月19日出荷分からガソリン、灯油で30.2円/ℓの補助が支給される。値下がりまでに数日から一週間程度かかる可能性はあるが、ガソリン価格は170円/ℓ程度に向けて値下がりする見込み。この補助支給により、支給がない場合と比較してCPIコアは0.5%Pt程度抑制されると試算される。

  • 補助の財源として現在の燃料油補助金の基金残高が活用されるが、早期に枯渇する可能性が高い。その後は予備費が活用されるとみられるが、長期化した場合には新たな予算措置が必要に。

  • 電気・ガス代補助が今後拡充される可能性も。電気・ガス代の値上がりは現時点で限定的だが、秋以降に本格化。原油高が長期化した場合、冬の補助金が拡充される可能性が高いことに加え、補助実施が秋に前倒しされる可能性もある。

ガソリン価格が前週対比+29.0円もの急上昇

資源エネルギー庁によると、レギュラーガソリンの店頭価格(全国平均、16日時点)は190.8円/ℓと、前週の161.8円/ℓから29.0円もの値上がりとなった。これは調査開始以来の最高水準であり、都道府県別で最も高かった山形県では198.5円/ℓと200円/ℓに迫っている。また、灯油価格も154.1円/ℓと、前週の125.9円/ℓから28.2円の上昇となっている。イラン情勢悪化に伴う原油価格の急騰が反映された格好だ。

こうした状況を受けて、高市首相は3月11日にガソリン補助金の再開を表明した。旧暫定税率の廃止を受けてガソリン補助金は終了されたばかりだが、今回の価格高騰を受けて再び補助金の支給に踏み切ることとなった。

今回の補助金は、ガソリンについて、全国平均の小売価格が170円程度を超える見込みになった場合、その超過分を全額補助する形で実施される。これまでのような「ガソリン1リットルあたり〇円」といった定額の支給ではなく、「全国平均170円程度」を上限の目安にして、その上振れ分を埋める方式となっている。「定額で一律に下げる」旧制度から「急騰した分だけ機動的に抑える」新制度に変わっており、原油価格急騰に対応した緊急上振れ抑制策といった位置づけとなっている。この補助金が継続される限り、ガソリン価格が170円/ℓを大きく超えて上昇することは避けられる見込みだ。

ガソリン以外については、軽油・重油・灯油はガソリンと同額の補助が支給される。このうち軽油は4月1日の旧暫定税率廃止までは既存の17.1円/ℓの補助に追加して支給され、灯油・重油は、従来の5円/ℓの定額補助に代えてガソリンと同額に切り替える。また、航空機燃料はガソリン補助額の4割相当を支給する。

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3月19日から補助開始。170円/ℓに向けて価格低下へ

この補助は3月19日出荷分から支給が開始され、支給額はガソリンで30.2円/ℓになるとされている。この補助がなければ今週から来週にかけてガソリン価格は200円/ℓ程度まで上昇していたとみられるが、補助支給により170円/ℓ程度まで価格が引き下げられる見込みである。

なお、店頭価格引き下げのタイミングは多少ばらつく可能性がある。3月19日から即日反映し170円/ℓ程度まで値下げする店舗もあるとみられる一方、高く仕入れた補助支給前在庫の存在を重視して値下げを遅らせる店舗もあるだろう。ただ、仮に値下げを遅らせた場合、顧客が早期値下げ実施店舗に逃げる、もしくは給油を遅らせることは明らかであり、値下げ実施を極端に遅らせることは困難とみられる。補助が反映されるまで数日~1週間程度見ておけば良いのではないだろうか。

CPIコアを0.5%Pt程度抑制か。次は電気・ガス代補助拡充の可能性あり

この制度の対象となるのはガソリン、軽油、灯油、重油、航空機燃料であり、このうち消費者物価指数に影響するのはガソリンと灯油である。仮に1リットルあたり30.2円/ℓの補助が継続した場合、補助がない場合と比較してCPIコアは0.5%ポイント程度押し下げられると試算される。物価抑制に大きな効果があるだろう。

一方で問題になるのが財政への影響である。補助支給の財源としては、現在の燃料油補助金の基金残高である約2800億円が活用されるが、足元のような高額の補助が続いた場合、1ヵ月程度で底をつく可能性がある。その後は予備費での対応が予想されるが、事態が長期化した場合にはその対応にも限界がある。いずれ新たな予算措置が必要になるだろう。

なお、今回はガソリンや灯油などへの補助が再開されたが、次に問題になるのは電気・ガス代だ。原油価格の高騰は、ガソリンや灯油などについては比較的早期に価格に反映されるが、電気・ガス代への反映はかなり遅れる。電気代は燃料費調整制度によってある程度機械的に価格が決まり、具体的には3~5ヵ月前の輸入実績価格をもとに、2か月後の電気料金に反映させる仕組みとなっている。そのため、電気代への影響が出始めるまで半年程度かかり、今回のケースでは影響が本格化するのは秋以降になるだろう。電気代・ガス代は家計支出に占める割合が大きいだけに、仮に原油価格高騰が長期化した場合の家計負担増やCPIへの影響度合いは、ガソリンや灯油よりも大きくなる可能性があることにも注意が必要である。

電気代やガス代の価格上昇への政府の対応は現時点で未定だが、これまでの高市政権のスタンスを考えると、原油高が続くようであれば追加の補助を実施する可能性が高いのではないだろうか。ここ数年、電気・ガス代補助は、電気代が嵩む夏と冬に実施されてきた。まだ電気代の上昇が限られる夏についてはともかく、値上げがピークを迎える冬については補助が一段と拡充される可能性があると思われる。また、実施のタイミングも秋に前倒しされる可能性があるとみておきたい。

新家 義貴


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新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測

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