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2026.06.05
日本経済
金融政策・日銀
物価
賃金
賃金指標
実質賃金は改善続くも、秋以降に下振れリスク(26年4月毎月勤労統計)
~実質賃金改善の持続性は今後の物価次第~
新家 義貴
- 要旨
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2026年4月の毎月勤労統計では、現金給与総額が前年比+3.5%、実質賃金が同+1.9%と、いずれも堅調な結果となった。共通事業所ベースでも現金給与総額は前年比+3.1%、実質賃金は同+1.6%と良好。実質賃金は26年入り以降プラス基調で推移。名目賃金の上昇に加え、物価上昇率の鈍化が実質賃金の改善につながっている。
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所定内給与は共通事業所ベースで前年比+2.8%、一般労働者でも同+2.6%と、高めの伸びを維持した。4月分には2026年春闘の結果がまだ十分反映されていないとみられ、今後5~8月にかけて賃上げの反映が進む。先行き、所定内給与は前年比で+2%台半ば~後半程度の高い伸びで推移する可能性が高い。
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当面は、名目賃金の安定的な伸びと政府の電気・ガス料金支援による物価抑制を背景に、実質賃金はプラス圏を維持するとみられる。ただし、秋以降は食品値上げの広がりや電気・ガス代の上昇が重なり、物価が上振れる可能性がある。秋以降に実質賃金が再びマイナス圏に沈むリスクに注意が必要。
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1. 名目賃金の上昇と物価鈍化で実質賃金はプラスが続く
厚生労働省から公表された26年4月の毎月勤労統計によると、現金給与総額が前年比+3.5%と、3ヵ月連続で3%台の伸びとなった。上昇率も前月の同+3.1%から高まっている。名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金(CPIの「持家の帰属家賃を除く総合」で実質化)も前年比+1.9%(3月:同+1.4%)と4ヵ月連続でプラスとなり、持ち直しの動きが続いている。
なお、報道等で言及されることの多いこの本系列は、調査対象事業所の部分入れ替えやベンチマーク更新等の影響を受けやすく、月次の賃金動向の基調を判断するうえでは必ずしも適さない。そうした観点からは、1年前と当月の双方で回答している調査対象のみに限定して集計した「共通事業所」ベースの前年比を併せて確認することが望ましい。
この共通事業所ベースの値でも、26年4月は前年比+3.1%と3%台の伸びとなり、前月の同+2.8%から伸びが高まった。実質賃金も前年比+1.6%(3月:同+1.2%)と5ヶ月連続で増加しており、良好な結果と評価できる。
このように、本系列・共通事業所ベースのいずれでみても、実質賃金は26年入り後、プラス圏で推移している。名目賃金が上昇基調を維持するなか、これまで高止まりしていた物価上昇率が鈍化してきたことで、実質賃金には改善がみられている。

2. 所定内給与は高い伸びが続く
所定内給与(共通事業所ベース、以下同じ)は前年比+2.8%(3月:同+2.9%)、一般労働者の所定内給与でも前年比+2.6%(3月:同+2.7%)と、いずれも前月からはやや鈍化したものの、引き続き2%台後半の高い伸びを保った1。また、パートタイム労働者の所定内給与も前年比+3.8%と高い。
なお、今回の4月分には、26年春闘の結果はあまり反映されていないとみられる。厚生労働省の調査によると、改定後の賃金の初回支給割合は4月15日まででは5%程度に過ぎず、5月15日までの支給で5割程度に上昇、その後も7~8月にかけて反映が進んでいく形となっている。そのため、今後5月~8月にかけて春闘の結果が実際の給与に順次反映されることになる。
26年春闘は、歴史的な賃上げとなった25年春闘からは僅かに鈍化したものの、引き続き高い賃上げが実現した模様である。こうした点を踏まえると、所定内給与は今後も前年比で+2%台半ば~後半程度の高い伸びで推移する可能性が高いだろう。

3. 実質賃金は当面プラス圏維持を見込むが、秋以降は下振れリスク
このように、4月の毎月勤労統計は総じて良好な結果だった。第一に、実質賃金のプラス基調が続いている。実質賃金は1~4月を通じてプラス圏で推移しており、物価鈍化が家計の実質購買力の押し上げにつながろう。第二に、名目賃金の中身も良好である。現金給与総額の伸びは特別給与だけに依存しているわけではなく、所定内給与も高い伸びを維持した。賃金の基調をみるうえで重要な所定内給与が強いことは評価できる。一般労働者の所定内給与も前年比+2.6%、パートタイム労働者のそれも同+3.8%と高く、賃金上昇の裾野も広がりつつある。
先行きについては、5月の実質賃金もプラスとなる可能性が高い。先に公表されている5月の東京都区部CPIの結果を踏まえると、5月の物価(持家の帰属家賃除く総合)も前年比+2%を割り込む可能性が高く、名目賃金の伸びを下回るとみられるためだ。
一方、その先、特に秋以降については不透明感が強い。名目賃金は引き続き安定的な上昇が期待できる一方、物価の上振れリスクが高まっているためである。
まず名目賃金については、目先の下振れリスクは小さい。2026年春闘の結果が今後順次反映されることに加え、夏のボーナスも底堅い企業業績や人手不足を背景に増加が見込まれるためである。イラン情勢の悪化や原油価格高騰が長期化すれば、冬のボーナスに影響が及ぶ可能性には注意が必要だが、当面は前年比+2%台半ばから後半程度の安定的な上昇が期待できる。
問題は物価である。夏場までは、政府の電気・ガス料金支援が物価を一定程度抑制するとみられることもあり、実質賃金はプラス圏を維持する可能性が高い。一方、その先、特に秋以降については不透明感が強い。
足元では食料品価格は前年比で鈍化傾向にあるが、ここにきて夏以降の値上げを表明する企業が増えている。ナフサ不足やそれに伴う川上段階での価格上昇を受け、食品トレイ等の価格が上昇しており、食料品にも値上げ圧力がかかりつつある。近年は、企業がコスト上昇分の価格転嫁に対して以前ほど慎重ではなくなっており、コスト高を理由に値上げに踏み切る企業が一段と増えることも想定される。夏以降の食品値上げの広がりには注意が必要だろう。
電気・ガス代の上昇も懸念材料だ。政府は今年の7~9月使用分について、電気・ガス料金への支援を実施することを決定している。これにより夏場の物価は抑制されるが、資源価格上昇の影響が遅れて波及することで電気代・ガス代の上昇が本格化するのは、夏ではなく秋から冬にかけてとみられる(電気代はいつ上がるのか ~電気代が秋から冬にかけて大きく上昇する理由。支援延長・拡充が論点に~ | 新家 義貴 | 第一ライフ資産運用経済研究所)。支援が切れるタイミングに燃料費上昇の波及による値上がりが重なれば、秋以降の電気・ガス代が大きく上昇する可能性がある。政府が秋以降の補助をどう運営するかによって結果は大きく変わるが、上昇分をすべて抑え込むことは難しいとみられ、物価上振れリスクは大きい。
結局のところ、2026年度の実質賃金を左右する最大のポイントは物価である。夏までについては、食品値上げは広がるものの、政府の電気・ガス代補助もあって物価が抑制されることで、実質賃金はプラス圏で推移する可能性が高いように思えるが、問題は秋以降だ。食品値上げの加速に電気・ガス代の上昇が重なれば、物価の伸びが大きく高まる可能性があり、その場合は実質賃金が再度水面下に沈む恐れがある。
原油高や調達難がいつまで続くのか、円安・資源高を背景としたエネルギー以外の値上げがどの程度広がるのか、さらに政府がガソリン補助金や電気・ガス代補助金をどのように運営するのかによって、物価のパスは大きく変わり得る。名目賃金の安定的な伸びは期待できる一方、実質賃金がプラス圏を維持できるかどうかは物価次第の面が大きい。先行きの不透明感は強く、今後の物価動向を注意深くみていく必要がある。
1 なお、26年入り以降は前年比で+2%台後半と、25年の+2%台前半から切り上がっているように見えるが、これは以前のレポート(実質賃金はプラス圏に浮上(2026年2月毎月勤労統計) ~実質賃金は改善も、先行きは物価次第~ | 新家 義貴 | 第一ライフ資産運用経済研究所)で指摘したとおりサンプル要因によるものである可能性がある。所定内給与の基調は安定して高めの伸びを維持していると判断して良いだろう。
新家 義貴
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 新家 義貴
しんけ よしき
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経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測
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