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2026.03.13
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トルコ中銀、イラン戦争による物価への影響を警戒して利下げ休止
~市場のリスクオフ、原油高、有事のドル買い、金需要などリラ安につながる材料は尽きない~
西濵 徹
- 要旨
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トルコ中銀は、3月12日に開催した定例会合において、政策金利(1週間物レポ金利)を37.00%に据え置いた。中銀は2024年12月から利下げ局面に入り、政治不信を理由とするリラ相場の急落を受け、リラ相場の防衛を目的とした利上げを一時迫られたが、その後もインフレが鈍化したため、2026年1月まで計8回の利下げを実施した。しかし、今回はインフレに再加速の兆しがみられ、利下げの休止を決定した。
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背景には、最低賃金の引き上げや旺盛な個人消費によりインフレが上振れするリスクが高まっていることがある。さらに、中東情勢の混乱による原油高やリラ安を通じた輸入物価の上昇も懸念されている。会合後に公表した声明では、引き締めスタンスの維持をあらためて示しつつ、インフレ見通しが目標から大きく乖離した場合は再利上げも辞さない姿勢を示すなど、慎重姿勢を強調している。
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エルドアン大統領は、イラン情勢で仲介役を務めているが、イランが今月2度にわたりトルコへ向けて弾道ミサイルを発射する事案が発生した。イランは関与を否定しているものの、NATO加盟国であるトルコへの攻撃はNATOによる集団的自衛権の行使を誘発しかねず、中東情勢のさらなる悪化リスクがある。金融市場では、リスク回避の動きが強まり、「有事のドル買い」や金預金の急増もリラ安に拍車をかける展開が続いている。円に対してはドル/円相場の影響を受ける可能性はあるが、状況改善は見通しにくいであろう。
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トルコ中央銀行は、3月12日に開催した定例の金融政策決定会合において、政策金利である1週間物レポ金利を37.00%に据え置くことを決定した。トルコでは、2024年半ばを境にインフレが鈍化し、中銀は2024年12月に現在の経済チームの下で初の利下げに動いた。その後も中銀は追加利下げに動いたものの、2025年3月のイマモール・イスタンブール市長の逮捕をきっかけとする通貨リラ急落など市場混乱を受けて、リラ相場の防衛を目的とした利上げを迫られた。しかし、インフレはその後も鈍化したため、中銀は2025年8月に利下げを再開し、2026年1月の定例会合で5会合連続、2024年12月以降の利下げ局面で計8回目の利下げを実施するなど、金融緩和を進めてきた(注1)。なお、中銀は利下げ幅を段階的に縮小させるとともに、先行きの政策運営について、利下げ休止や再利上げの可能性に含みを持たせるなど慎重姿勢をみせた。背景には、中銀は2026年末時点のインフレ率が16%と一段と鈍化する見通しを維持しているものの、政府は1月から最低賃金を27%と大幅に引き上げており、インフレの高止まりにつながる懸念がある。2025年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率+1.54%と鈍化したものの、インフレ鈍化や中銀の断続的な利下げ実施を追い風に個人消費は旺盛に推移しており、インフレ圧力を招く動きがみられる(注2)。金融市場ではリラ安に歯止めがかからず、輸入物価を通じたインフレも懸念される。こうしたなか、2月のインフレ率は前年同月比+31.53%と前月(同+30.65%)から加速しており、鈍化基調が続いた流れに変化の兆しが出ている。さらに、中東情勢の混乱を受けて原油価格は急上昇しており、先行きはエネルギー価格の上昇も懸念される。こうしたなか、中銀は利下げ局面の休止を余儀なくされたとみられる。


会合後に公表した声明文では、物価動向について「地政学リスクを巡る不確実性が高まり、世界的にリスク選好が低下しており、エネルギー価格が上昇した」との認識を示すとともに、「インフレ見通しに与えるリスクを抑制すべく、緊縮的な金融政策と財政政策の協調を図っている」とし、「地政学リスクが物価見通しに与える影響を注視している」との考えを示した。そのうえで、先行きの政策運営について「需要動向や為替レート、期待を通じて、物価安定を実現するまで引き締めスタンスを維持する」との従来姿勢を維持している。政策決定について「インフレ見通しと実績、基調的な動きを勘案して決定する」、「会合ごとにインフレ見通しを注視しつつ慎重に見直す」とし、「足元の動向によってインフレ見通しが目標から大きく乖離した場合は引き締め姿勢を強める」と再利上げに含みを持たせる考えを示した。また、「信用市場や預金市場で予期せぬ事態が発生した場合は、流動性を巡る状況を注視しつつ、マクロプルーデンス政策を強化する」とし、「インフレ目標の実現に向けて、予見可能なデータに基づく透明性の高い枠組みの下で必要な環境整備を図るべく政策決定を行う」との考えをあらためて示した。声明文は、1月の前回会合時点とほぼ同じ内容が踏襲されたものの、足元のインフレに再加速の兆しがみられること、中東情勢の混乱による原油高の影響が懸念されるなど、インフレに対する警戒感を一段と強めているとみられる。
トルコのエルドアン大統領はこれまで、イラン情勢を巡って仲介役を申し出るとともに、外交努力を通じた解決を繰り返し呼び掛けてきた。同氏は米国とイスラエルのみならず、イランの行動を批判するとともに、トルコ自身の安全保障に対するいかなる脅威にも対応すると警告している。背景には、イランがイスラエルと米国による軍事行動への報復措置の一環として、今月4日と9日にイランからトルコに向けて弾道ミサイルを発射し、いずれも地中海に配備されているNATO(北大西洋条約機構)の防空システムが撃墜した事案が影響している。この問題を巡っては、その後にエルドアン氏とイランのペゼシュキアン大統領が電話会談を行い、イラン側は関与を否定したうえで、疑念解消に向けた合同調査チームの設置に言及したとされる。トルコはNATO加盟国であり、イランによる攻撃はNATOによる集団的自衛権の行使を誘発する口実を与えかねない。その意味では、イランの対応次第では中東情勢の沈静化が極めて困難になる可能性がある。金融市場では中東情勢の悪化を受けてリスク選好が低下しているうえ、トルコにおいては原油価格の上昇によるインフレや対外収支への悪影響が懸念される。さらに、「有事のドル買い」の動きが活発化するとともに、トルコ国内においては「有事の金」として金預金が急増していることも重なり、リラ安に歯止めがかからない事態を招いている。なお、日本円に対してはドル/円相場の動向の影響を受ける可能性には注意が必要であるものの、ドルに対して一貫して下落基調が続くなかで大幅に状況が変化するとは見通しにくい。

注1 1月23日付レポート「トルコ中銀はインフレ鈍化も小幅利下げ、インフレ再燃を警戒の模様」
注2 3月3日付レポート「トルコ、25年成長率は+3.6%に加速も、リラ相場は晴れず」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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