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2026.06.11
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ロシア中銀・ナビウリナ総裁を巡って「憶測」が広がる
~過去2週間近く消息不明、中銀の政策運営はどうなる~
西濵 徹
- 要旨
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ロシア中銀のナビウリナ総裁が2週間近く公の場に姿をみせておらず、その動静がSNS上で注目を集めている。同氏は重要会議を相次いで欠席しており、中銀は病気による休暇取得を公表した。しかし、代理出席も立てられず、急な事態との見方も浮上している。同氏の任期は2027年6月末だが、次期総裁候補を巡る動きも活発化しつつある。
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ナビウリナ総裁は2024年に大幅利上げを断行し、インフレ鈍化を実現した一方、高金利が経済成長を抑制したとして産業界やプーチン大統領周辺から批判を受けた。中銀は2025年6月から利下げに転じ、2026年4月まで8会合連続で利下げを実施したものの、歳出増による物価上昇リスクを理由に利下げ局面の終了も示唆した。さらなる緩和を求める産業界との間で難しい政策運営が続いている。
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5月のインフレ率は前年比+5.32%と中銀目標(4%)に向けた鈍化傾向が続いており、プーチン大統領は19日の定例会合での追加利下げに前向きな発言を行ったとされる。しかし、足元の物価改善は食料品価格の下落が主因であり、スーパーエルニーニョの影響による干ばつや農業被害が見込まれるなか、食料インフレが再燃するリスクも抱えている。ウクライナ戦争や中東情勢の不透明感とあわせて、物価見通しの不確実性は依然として高い。
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ロシア中銀のナビウリナ総裁は、長期にわたって公の場に姿をみせておらず、SNS上などでその動向に注目が集まっている。同氏が最後に姿をみせたのは、5月末のプーチン大統領によるカザフスタン訪問に同行した際であり、それから2週間近くが経過している。同氏の任期は2027年6月末までであり、あと1年を残している一方、現在は3期目のため、現行法上は退任が義務付けられている。こうしたなか、一部には次期総裁候補を巡る動きも活発化しつつある。
同氏は、6月3~6日の日程で開催された同国最大のビジネスイベントであるサンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)において、6月5日のパネルディスカッションに登壇する予定であった。パネルディスカッションでは、オレシキン大統領補佐官(経済担当)やシルアノフ財務相、レシェトニコフ経済発展相とともに議論する予定であったものの、直前に同氏の名前はリストから外された。さらに、同氏は6月9日にロシア証券市場参加者委員会(NAUFOR)が主催した会議も欠席した。その後、中銀は同氏が病気を理由に休暇を取得していることを明らかにしている。なお、同氏が会議を欠席する際は、副総裁などが代理出席することが通例となっているものの、いずれの会議にも代理は立てられず、急な事態であった可能性がある。こうした事情も、SNS上で同氏の消息を巡る憶測が飛び交う一因となっていると考えられる。
同氏は、2024年に物価抑制を目的とする大幅利上げを実施し、その後のインフレ鈍化につなげることに成功した。しかし、産業界はこうした対応を激しく批判したほか、プーチン大統領周辺もそうした動きに同調する姿勢をみせた。インフレ鈍化に成功する一方で、高金利が幅広い経済活動の足かせとなり、2025年の経済成長率は+1%にとどまる一因になった。中銀は、インフレ鈍化を理由に2025年6月に利下げに舵を切り、2026年4月の定例会合まで8会合連続の利下げを実施した(注1)。その一方、先行きの政策運営について、歳出増に伴う物価上昇リスクを理由に利下げ局面の終了を示唆した。とはいえ、産業界などは中銀に対してさらなる利下げ実施を求める動きを強めており、難しい舵取りを迫られている様子がうかがえる。
現地報道によれば、プーチン氏は10日、政府高官に対して、19日に開催予定の定例会合で政策金利が引き下げられると期待する根拠があるとの見方を示した模様である。具体的には、「足元の経済状況はコントロール下にあることは明白であり、これまでに講じられた措置は望ましい成果を上げた」として、中銀の政策が成果を上げていると説明した。そのうえで、足元の物価動向について「下振れし、5%をわずかに上回る程度であり、利下げとその他の必要な指標の実現の両方を期待する十分な根拠がある」とした。
事実、5月のインフレ率は前年比+5.32%、コアインフレ率も同+4.88%と鈍化しており、中銀目標(4%)に着実に近づく動きが確認されている(図1)。しかし、これは足元の食料品価格が下落するなど、生活必需品を中心にインフレ圧力が後退したことが影響している。2026年はスーパーエルニーニョの発生が予想されており、ロシアでは南部で干ばつリスクが増大するほか、穀物品質の低下、森林火災の増加といった事態も懸念されるため、先行きは食料インフレが再燃することも考えられる。プーチン氏の発言は足元の状況を好感しているものと捉えられる一方、ウクライナ戦争や中東情勢の行方も依然として見通せないうえ、異常気象による悪影響が重なれば予想外の形で物価動向が変化するリスクは高まっている。

通常、19日の定例会合後にはナビウリナ氏による記者会見が予定されているが、その場に同氏が出席するか否かも含め、その動向を巡って様々な憶測を呼ぶ展開が続くことが予想される。
注1 4月27日付レポート「イラン戦争の「最大の勝者」とされるロシア経済の実像」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

