2026~2027年度日本経済見通し(2026年5月)(2026年1-3月期GDP1次速報後改定)

新家 義貴

図表
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  • 実質GDP成長率の見通しは2026年度が+0.5%(3月時点予測:+0.8%)、27年度が+1.1%(同+1.0%)である。暦年では26年が+0.5%(同+0.7%)、27年が+0.8%(同+1.1%)となる。イラン情勢の悪化によって原油価格が高止まりしていること、石油関連製品の供給懸念・調達難による悪影響が足元で一部顕在化していることなどに加え、エネルギー・食料品価格の上振れを通じた個人消費の下押しも見込まれることから、26年度の成長率見通しを下方修正した。

  • 中東情勢については、米国、イランとも紛争の長期化は回避したいとの思惑があるとみられ、26年夏までに緊張緩和に向かうことを予測の前提としている。メインシナリオとして、ホルムズ海峡の実質封鎖を巡る問題が緩和に向かうことで供給不安が沈静化し、調達難による混乱は一時的なものにとどまると想定している。一方、再び緊張が高まることへの警戒感の残存、保険料の高止まり、中東諸国の供給設備や物流網の正常化に時間がかかることなどを踏まえると、ホルムズ海峡の実質封鎖が解除され、供給制約が解消に向かう場合でも、原油価格が危機前の水準まで速やかに低下するとは限らない。今回の予測では、ドバイ原油価格について、26年末に80ドル程度、27年末に70ドル程度を前提としている。なお、食料品に対しての消費税減税については、実際に実施されるか否か、される場合の実施開始時期、財源等、現時点で詳細が不明のため見通しに織り込んでいない。

  • 26年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.1%と、2四半期連続のプラス成長となった。個人消費、設備投資が増加を維持したことに加え、輸出も高い伸びになるなど、内外需とも底堅く推移し、潜在成長率を上回る成長が実現している。イラン情勢悪化の影響が本格化する前の日本経済が緩やかな回復基調を維持していたことが確認できる。

  • 一方、先行きについては、イラン情勢悪化の影響が本格化することで景気への下押し圧力が強まる可能性が高い。最大の懸念は供給不安・調達難による悪影響である。調達不安がある局面では、企業は事業継続のために通常より早めの在庫確保・積み増しといった行動に出やすく、そのことがさらに需給のひっ迫感を強める恐れがある。足元では、石油化学製品や建設資材などで実際に調達難や納期遅れ、受注制限などの動きが出始めており、今後、生産・出荷の遅れや建設工事の遅延・中断といった形で経済活動を抑制する可能性がある。また、輸出についても、中東向け輸出は当面弱含む可能性が高いほか、供給制約が国内外の生産活動を下押しする可能性があることが懸念材料である。こうしたことから4-6月期は前期比年率▲0.3%の小幅マイナス成長を予想している。

  • 景気は目先停滞が予想されるものの、景気回復シナリオそのものが崩れたとみる必要はない。足元では、輸入の減少や供給量の細りが懸念されることに加え、先行きの供給懸念から企業が在庫確保を急ぐことで流通の目詰まりが生じ、調達難に繋がっている面もある。今後、ホルムズ海峡封鎖を巡る問題が解決に向かうことで供給が正常化する見通しが立てば、備蓄や代替調達で当面は対処可能との見方が広がり、供給不安とそれに伴う混乱は沈静化に向かうだろう。この場合、4-6月期の落ち込みは一時的なものにとどまり、7-9月期以降は再びプラス成長へ復帰する可能性が高い。

  • 供給制約の悪影響が緩和された場合でも、価格への影響と経済への下押しはしばらく残る。資源価格が危機前の水準と比べて高いものにとどまることで企業収益が圧迫されることに加え、食料品や電気・ガス代などへの波及から物価上昇率が高まることが個人消費の下押しとなる。前回見通しでは、物価上昇率の鈍化と実質賃金の持ち直しを背景に26年度の個人消費が安定感を増すことを想定していたが、物価上振れによる悪影響が生じる分、消費の見方について下方修正を行っている。

  • もっとも、足元で企業収益は歴史的な高水準にあり、ショックへの耐性は相応に強い。こうしたコスト上昇のなかでもデジタル化・省力化投資などを中心に、設備投資への前向きな姿勢は崩れないとみている。個人消費についても、物価上昇による悪影響は避けられないものの、高い賃上げの持続や政府によるエネルギー価格補助、底堅い雇用環境などもあり、腰折れする可能性は低い。株価が高水準を維持すれば資産効果も一定の下支えとなるだろう。また、輸出については、米国経済が底堅く推移することが下支えになる。米国は資源輸出国でもあり、原油高による交易条件悪化の影響が資源輸入国に比べて小さい点も、外需の下支え要因となる。欧州、アジア経済の下振れリスクは懸念材料であるものの、輸出が全体として大きく落ち込む可能性は低い。こうしたことから、26年度後半の景気は力強さこそ欠けるものの緩やかな持ち直しが続くと予想している。

  • 27年度については、原油高による悪影響が減衰することで、景気の回復感は徐々に強まるとみている。中東情勢悪化による下押しが和らぐことで世界経済が持ち直し、輸出は回復が予想される。企業収益も、原油高によるコスト上昇圧力が軽減されることで上向き、設備投資への前向きな動きが強まるだろう。また、エネルギー、食料品価格への押し上げが弱まり、物価上昇率がピークアウトすることで個人消費も緩やかに増加することが見込まれる。内外需とも上向くことで、27年度の実質GDP成長率は前年比+1.1%と、26年度の同+0.5%から持ち直すと予想する。

  • リスク要因は、中東情勢悪化の長期化である。メインシナリオではイラン・米国間での交渉がまとまることでホルムズ海峡の実質封鎖を巡る状況が改善、供給懸念が沈静化することを前提としているが、交渉の行方は不透明であり、緊張状態が長期化する可能性も否定できない。この場合、備蓄や代替調達による対応への限界が意識され、供給制約への企業の不安心理は一層強まるだろう。企業の在庫確保の動きが加速すれば、混乱がさらに拡大し、価格への上昇圧力も強まる可能性が高い。生産活動や建設工事の停滞が長期化し、輸出の下振れも大きくなる恐れがある。こうした状況が現実になれば、26年度の成長率がマイナスに転じる可能性もあり、景気後退も視野に入る。

  • 消費者物価指数(生鮮食品除く総合、CPIコア)は26年度が+2.5%(3月時点予測:+2.1%)、27年度が+2.1%(同+1.7%)と、前回見通しから上方修正する。食料品価格の上昇率は足元で鈍化しており、本来であれば物価上昇率は徐々に低下していく局面にあった。しかし、イラン情勢悪化に伴う資源価格の高止まり、ナフサ高を通じた包装資材・物流費・加工食品価格への波及、電気・ガス代がタイムラグを伴って上昇することにより、26年度の物価には上振れ圧力がかかる。企業の価格転嫁姿勢が以前と比べて積極化している点も、物価を押し上げる要因になる。26年夏以降、政府は電気・ガス代補助を実施するとみられ、このことが一定の物価抑制にはなるが、資源価格上昇による押し上げをすべて抑えることは困難だろう。年度後半にかけて電気・ガス代や食料品(除く生鮮食品)を中心として消費者物価は上昇率を高める可能性が高い。一方、27年度には、こうした物価上昇圧力も一巡に向かう。四半期ベースでは27年1-3月期をピークとして上昇率は鈍化するだろう。

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本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測

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