イラン情勢悪化後の消費・物価の動向

~過去の危機時と比べて駆け込み購入は抑制~

星野 卓也

要旨
  • スーパー、コンビニ等のPOSデータを用いてイラン情勢悪化後の日本の消費動向を確認。一部の日用品消費がイラン情勢悪化後に増加しており、品不足やナフサから作られるプラスチック等の値上がりが想起された可能性。しかし、過去のCOVID-19や南海トラフ地震情報発令時に比べるとその動きは相当抑制されている。この点での個人消費への影響は限定的にとどまりそうだ。
目次

POSデータでみるイラン情勢悪化後の消費と物価

イラン情勢の緊迫が続いている。日本経済に関しては原油供給の不足や価格高騰による関連製品の値上がり等が懸念されている。ナウキャスト社のPOSデータ(スーパーやコンビニ、ドラッグストア等のレジの価格、売上データ)を用いて、イラン情勢悪化後の消費の動向を確認してみよう。同データは食料品や日用品などの非耐久財をカバーしており、価格や売り上げの動向を日次で確認できる。図表1では売上の伸びから価格の伸びを差し引いた実質ベースのPOS売上をみている。マイナス圏の推移が続いている状態であり低調だが、イラン情勢をきっかけに消費が悪化した様相はうかがえない。統計のカバーする非耐久財消費への影響は現状限定されているといえよう。

図表
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細かく見ていくと、変化がみられたのは日用品である。1970年代のオイルショック時にはトイレットペーパー等の駆け込み購入がみられたが、POSデータからも「日用紙製品」の売上の増加率がイラン情勢悪化前から拡大していることや「調理・キッチン用品」、「洗濯用洗剤類」の拡大などが確認できた。品不足や石油化学製品の値上がり波及でプラスチック製品や洗剤類の値上がりが想起された可能性があるだろう。

一方で、過去のCOVID-19時と比較すると日用紙製品の伸びは限定的であり、足元ではすでにイラン情勢前の伸び程度まで戻っている姿になっている。また、COVID-19や2024年の南海トラフ臨時情報発令時には水や電池などの売上が顕著に増加していたが、そうした動きもみられてはいない。“パニック買い”の動きは限定的だ。今回は早い段階で経産省等が生産への直接的な影響がない旨を示すなど、駆け込み購入抑止に向けた注意喚起などを行っていた。こうした取り組みも奏功したのかもしれない。

図表
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また、物価への影響はまだ限定的だ(図表3)。同統計で物価の伸び(同様に食料品や日用品をカバー)をみるとコメのインフレが落ち着いてきたことなどから、伸び率の縮小が続いている。今後、徐々にコスト高の消費者価格への転嫁が予想されるものの、その時期はまだ後になりそうだ。

図表
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星野 卓也


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

星野 卓也

ほしの たくや

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 日本経済、財政、社会保障、労働諸制度の分析、予測

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