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政労使会議では、高市首相から一昨年、昨年と遜色のない水準での賃上げと、物価上昇に負けないベースアップが労使に要請された。経営側、労働側も賃上げに前向きであり、2026年春闘でも高い賃上げが必要との認識は政労使で一致している。
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多くの産業別組合組織から2026年春闘に向けての要求方針案が発表されている。前年並み、もしくは前年をやや上回る要求方針が打ち出されていることが多く、昨年からトーンダウンしている組合は現時点で見当たらない。賃上げ姿勢は前年から衰えていない。25年春闘でも賃上げは実現したものの、物価高により実質賃金が改善しなかったことに対する問題意識が強く、26年春闘では実質賃金の改善を目指すことが強調されている。
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①連合による賃上げ目安は前年並みの高い水準、②経団連も「さらなる定着」を強調し賃上げに前向き、③政労使会議で賃上げの重要性を強調、④産業別組合組織の要求方針は前年からトーンダウンせず、など足元までの動向は2026年春闘でも高い賃上げが続くことを示唆している。春闘の初動モメンタムについてはかなりの程度確認できたと思われる。
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筆者は8月26日発行の2026年春闘のスケジュールと金融政策展望 ~2026年春闘から考える利上げタイミング~ | 新家 義貴 | 第一生命経済研究所と、11月14日発行の「春闘の初動モメンタム」をどう読むか ~春闘の初動から考える日銀利上げのタイミング~ | 新家 義貴 | 第一生命経済研究所で、2026年春闘の主要スケジュールとポイント、実際の組合側、経営側の初動等を整理したが、その後も春闘に向けての動きが具体化しつつある。本稿では、春闘の「初動のモメンタム」をアップデートし、現時点の賃上げムードを確認する。
高い賃上げの定着への期待が示された政労使会議
11月25日に政労使会議が開催された。政労使会議は、政府、労働側(連合など)、経営側(経団連など)の代表によって、春闘の賃上げなど労働条件改善に向けた意見交換を行う場である。政労使会議は、当時の安倍政権により2013年~2015年にかけて開催されていた。2016年以降は全国レベルでの政労使会議は行われていなかったが、2023年に当時の岸田政権で8年ぶりに再開、石破政権でも24年11月に実施された。今回は高市政権下で初の開催となる。
ここで高市首相は「30年以上振りに5%を超える高水準となっている賃上げを確かなものとして定着させるために、一昨年、昨年の水準と遜色のない水準での賃上げ、とりわけ、物価上昇に負けないベースアップの実現に向けた御協力を心よりお願いいたします」と労使に要望した。また、価格転嫁・取引適正化の徹底や、中小企業・小規模事業者向け1兆円規模支援など、賃上げの環境整備に取り組むことを表明した。
また、経団連の筒井会長も「賃金引上げの力強いモメンタムの『さらなる定着』により、適度な物価上昇の下、実質賃金の安定的なプラス化の実現に貢献」と賃上げに前向きな姿勢を示したほか、連合など労働側の代表も賃上げ継続に向けての意欲を述べている。
総じて、2026年春闘でも高い賃上げが必要との認識は政労使で一致している。「昨年の水準と遜色のない」、「さらなる定着」、「実質賃金プラス」等の言葉から分かるとおり、政労使とも、前年から加速させることまでは想定していないものの、少なくとも前年並み、もしくは前年に近い賃上げが意識されている模様である。
産業別労働組合の要求案の判明が進む
労働側の産業別組合でも動きが出ている。12月4日には、多くの産業別組合組織から2026年春闘に向けての要求方針案が発表された。まず、繊維、流通などの労働組合で構成されるUAゼンセンの2026年春闘の要求方針案では、6%の賃上げ(ベア4%)が目標とされた。これは2025年春闘と同水準で、要求トーンに鈍化は見られない。また、鉄鋼や重機、造船などの労働組合で構成されている基幹労連は、ベースアップで月額1万5000円を求める統一要求案を発表した。これは、過去最高だった前年と同水準である。さらに、機械・金属産業の中小製造業を中心とする「ものづくり産業労働組合(JAM)」は、企業規模間の格差是正を目指し、ベア1万7000円以上を要求する方針を発表した。これは、25年春闘の1万5000円を2000円上回り、過去最高の要求水準となる。いずれも高い要求水準であり、賃上げ継続への強い意欲が窺える。
そのほか、私鉄やバスの労働組合で構成される私鉄総連が12月2日に、ベアで1万5600円を要求する方針を固めた。これは、前年の1万3400円を2200円上回る。人手不足が深刻化するなるなか、待遇改善によって人材確保を図る方針である。また、電線産業を中心とする全電線(全日本電線関連産業労働組合連合会)も1万5000円以上の賃金改善を要求する方針を固めたとされている。これは前年の1万3000円を2000円上回る。
このように、現時点までの動向を見る限り、多くの産業別組合組織では前年並み、もしくは前年をやや上回る要求方針を打ち出している。昨年からトーンダウンしているところは見当たらず、賃上げ姿勢は前年から衰えていないようだ。25年春闘でも賃上げは実現したものの、物価高により実質賃金が改善しなかったことに対する問題意識がいずれも強く、26年春闘では実質賃金の改善を目指すことが強調されている。
なお、筆者が注目している自動車総連については現時点で要求方針が公表されていない。ただ、自動車総連が加盟している金属労協において、前年と同額となる月額1万2000円以上のベアを要求する方針を打ち出していることから考えて、自動車総連で前年を大きく下回る要求となる可能性は低いのではないか。自動車関連企業の要求は春闘の相場観を左右することから元々注目度が高いが、今回はトランプ関税が賃上げに及ぼす影響度合いを測る上でより重要度が高い。仮に前年と同等程度の賃上げ要求を行うようであれば、「トランプ関税の影響を最も受ける自動車でも高い賃上げ要求」として賃上げムードが一層強まる可能性があるだろう。

初動のモメンタムの確認は終わった?
このように、2026年春闘の初動のモメンタムを確認する上での材料が揃いつつある。
など、賃上げに対して前向きな動きが確認されている。このうち①と②については「春闘の初動モメンタム」をどう読むか ~春闘の初動から考える日銀利上げのタイミング~ | 新家 義貴 | 第一生命経済研究所で既に述べたが、最近になって③と④が加わった。
なお、2026年の春闘賃上げ率(厚生労働省「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」ベース)についての11月上旬時点でのエコノミストのコンセンサスは4.88%であり、25年の5.52%、24年の5.33%から伸びが鈍化するとされている。もっとも、本稿で述べた足元の状況を見る限り、コンセンサスは今後上方修正されていく可能性が高いのではないか。現時点での多くの見方は「高い伸びだが前年からは鈍化」といったものだが、これが次第に「前年に近い高い伸び」との評価に変わってくるだろう。近いうちに3年連続の5%台の賃上げがコンセンサスになるとみている。
ちなみに筆者の予想は、厚労省ベースで5.20%、厚労省より公表が早く注目度が高い連合ベースで4.95%である(2026年・春闘賃上げ率の見通し ~25年比でやや鈍化も、高い伸びが持続と予想。キーワードは「さらなる定着」~ | 新家 義貴 | 第一生命経済研究所)。現時点で予測値は変更していないが、連合ベースでも5%台に乗せる可能性は十分あるだろう。
こうした状況を踏まえると、「春闘の初動のモメンタム」の確認については概ね決着が着いたと言っても良いかもしれない。12月18、19日の日銀の金融政策決定会合までに残された春闘関連の材料は12月15日に公表される日銀短観くらいだが、ここでよほどのことが無い限り、2026年春闘でも強い賃上げが実現する可能性が高いという判断が覆ることはないだろう。
(参考文献)
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新家 義貴(2025)「2026年春闘のスケジュールと金融政策展望 ~2026年春闘から考える利上げタイミング~」(第一生命経済研究所 Economic Trends)
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新家 義貴(2025)「「春闘の初動モメンタム」をどう読むか~春闘の初動から考える日銀利上げのタイミング~」(第一生命経済研究所 Economic Trends)
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新家 義貴(2025)「2026年・春闘賃上げ率の見通し~25年比でやや鈍化も、高い伸びが持続と予想。キーワードは「さらなる定着」~」(第一生命経済研究所 Economic Trends)
新家 義貴
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。