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2026.05.19
日本経済
日本経済見通し
景気全般
景気指標(日本)
2026年1-3月期GDP(1次速報値)
~イラン情勢悪化前の日本経済は底堅く推移も、先行き懸念は強まる~
新家 義貴
イラン情勢悪化前の日本経済は底堅く推移
本日内閣府から公表された2026年1-3月期の実質GDP成長率(1次速報)は前期比年率+2.1%(前期比+0.5%)と、2四半期連続のプラス成長となった1。個人消費が強めだったことで事前の市場予想(前期比年率+1.6%)をやや上振れたが、概ね想定の範囲内といってよいだろう。内容も事前予想から離れたものではなく、意外感はない。
個人消費が前期比+0.3%、設備投資が同+0.3%と増加を維持したことに加え、住宅投資、公共投資も増加するなど、内需は底堅く推移した。消費については、食料品価格の伸び鈍化や政府による電気・ガス代補助の影響もあって物価上昇率が鈍化し、実質賃金がプラスに転じたことが下支えになっている。外需についても、アジア向け輸出の増加や米国向け自動車輸出の持ち直しなどを背景に輸出が前期比+1.7%と高い伸びとなり、成長率を押し上げた。内外需とも底堅く推移し、潜在成長率を上回る成長が実現している。全体として、イラン情勢悪化の影響が本格化する前の日本経済が緩やかな回復基調を維持していたことが確認される結果といえる。
イラン情勢の悪化については、3月の中東向け輸出が急減したほか、消費者マインドも悪化していたが、1-3月期の成長率への影響は限定的なものにとどまった。影響が出始めたのが3月であり、1-3月期平均でみると影響が薄まることに加え、3月時点ではまだ悪影響が本格化していなかったためである。
マインド悪化の一因となったガソリン価格については、いったん上昇圧力が強まったものの、政府が早期に補助の再開を決定したことで、価格高騰が一定程度食い止められた。この点は、消費者心理の悪化が実際の支出抑制へと広がることを防ぐうえで大きかったと考えられる。
さらに、3月時点では、ガソリンや灯油以外の消費財価格への波及も限定的だった。中東情勢の悪化によって先行きへの不安は強まったものの、まだ漠然とした不安の色彩が濃く、実際の消費行動を大きく抑制する段階には至っていなかったとみられる。
供給面でも、調達不安を背景とした減産などの動きは、3月時点では一部業種における限定的なものにとどまっていた。関連製品価格の上昇が本格化したのも4月以降であり、1-3月期における実体経済への波及はなお初期段階にあった。
このように、1-3月期はイラン情勢悪化による下押しが表れ始めた時期ではあったものの、価格面・供給面・消費行動への波及はいずれもまだ限定的だった。総じてみれば、今回のGDPは、イラン情勢悪化の影響が本格化する前までの日本経済が底堅く推移していたことを示す結果として位置付けられる。
4-6月期はマイナス成長の可能性も
もっとも、こうした1-3月期の強さはあくまで過去の数字である。先行きについては、イラン情勢悪化の影響が本格化することで、景気への下押し圧力が強まる可能性が高い。現時点では、4-6月期については小幅マイナス成長を予想している。
最大の懸念は、供給懸念・調達難による悪影響である。足元では、ナフサ等の石油化学製品、包装資材、建設資材などで調達難、納期遅れ、受注制限、価格高騰といった動きが出始めている。こうした動きが広がれば、製造業では生産・出荷の遅れ、建設業では工事の遅延や中断、小売業では品不足や値上げとして表れ、需要があっても供給できないといった形で経済活動を押し下げる。設備投資や住宅投資も、資材不足や工期遅延を通じて先送りされる可能性がある。
輸出にも下押し圧力がかかるだろう。中東向け輸出は当面弱含む可能性が高いほか、供給制約が国内生産を抑えれば、輸出にも影響し得る。アジア経済については現時点で明確な悪化が確認されているわけではないが、エネルギー・石油関連の供給制約や物流混乱が域内生産に波及すれば、日本からの部品・資本財輸出にも下振れリスクが生じる。1-3月期には輸出の増加が成長率を押し上げたが、目先は輸出を景気の支えとして期待しにくい。
なお、4-6月期については輸入が減少することが予想される。輸入減は外需寄与度を表面上押し上げる方向に働くが、それが供給制約を反映したものであれば、景気にとって前向きな動きとは言えない。輸入減による供給不足を既存在庫の取り崩しで補うことになれば、民間在庫・公的在庫の減少が成長率を押し下げることになる。輸入減による見かけ上の外需寄与度改善は、在庫取り崩しによって相殺されるだろう。
個人消費については、4-6月期の段階で消費財価格への波及が大きく進むとはみておらず、消費抑制が一気に強まる可能性は高くない。もっとも、中東情勢を巡る不安や供給混乱への警戒感は消費者マインドを下押ししており、高額消費の先送りや節約志向の強まりを通じて、消費の勢いを鈍らせる可能性がある。
こうしたことから、4-6月期は小幅マイナス成長に転じると現時点では予想している。当面、下振れリスクが大きい状況が続くだろう。
もっとも、景気回復シナリオそのものが崩れたとまでみる必要はない。基本シナリオとしては、米国、イランとも紛争の長期化は回避したいとの思惑があるとみられ、最終的には何らかの形で緊張緩和に向かうと想定している。ホルムズ海峡封鎖を巡る問題が解決、あるいは緊張緩和に向かい、供給が正常化する見通しが立つようであれば、備蓄や代替調達で当面は凌げるとの見方が広がり、供給不安とそれに伴う混乱は沈静化に向かうだろう。価格への影響と経済への下押しはしばらく残るものの、吸収可能な範囲にとどまるとみられる。この場合、4-6月期の落ち込みは一時的なものにとどまり、7-9月期以降は再びプラス成長へ復帰する可能性が高い。
一方、米国とイランの交渉がまとまらず、ホルムズ海峡封鎖問題に解決の動きがみられない状況が続く可能性も否定はできない。この場合、備蓄や代替調達による対応への限界が意識され、不安心理は一層強まるだろう。企業の在庫確保の動きが加速すれば、混乱が一段と拡大、価格への上昇圧力も強まることになる。生産活動や建設工事の停滞が長引くだけでなく、輸出の下振れも大きくなる。こうした状況が現実になれば、景気後退も視野に入るだろう。
需要項目別の詳細
個人消費は前期比+0.3%と増加した。均してみれば緩やかな増加傾向にあると判断できる。食料品価格の伸びが鈍化したことに加え、政府による電気・ガス代補助金の拡充の影響もあって1-3月期の物価は明確に鈍化、実質賃金もプラス圏に浮上した。こうした実質購買力の改善が消費の支えになったものと思われる。なお、イラン情勢の悪化により3月の消費者マインドは大幅に悪化したが、3月の段階では消費の下振れ等は確認されておらず、1-3月期段階での影響は限定的だったものとみられる。
形態別にみると、耐久財消費が前期比▲1.4%(25年10-12月期:+1.4%)、半耐久財消費が同+0.9%(10-12月期:+0.4%)、非耐久財消費が同+0.4%(10-12月期:▲0.2%)、サービス消費が同+0.2%(10-12月期:+0.5%)となっている。耐久財消費は前期の反動もあって減少したものの、これまで低調な推移が続いていた非耐久財消費が食料品価格鈍化の影響もあってプラスに転じている。また、サービス消費は引き続き緩やかに増加し、消費の下支えとなっている。
1-3月期の個人消費は底堅く推移したものの、問題なのは先行きだ。この先、不安心理の高まりから消費マインドが一段と悪化し、消費を抑制する可能性があるほか、物価上昇による消費下押しが懸念される。足元では、ナフサ価格の上昇や調達難・流通の目詰まりを通じて、食品トレーやラベルなどの包装資材価格にも上昇圧力がかかりつつあり、食料品の値上げにつながる恐れがある。また、資源価格の高止まりが続けば、タイムラグをもって電気・ガス代が上昇することも物価の上振れにつながる材料だ。1-3月期の個人消費を支えた要因の一つが食料品価格の鈍化による実質賃金改善であるだけに、物価が再度上昇してしまえば、消費にもダメージが及ぶ可能性があるだろう。
設備投資は前期比+0.3%と、25年10-12月期の+1.4%に続いての増加となった。伸びは小さいが、前期が高い伸びだった後であることを考えると問題はない。前年比でも+2.7%と良好であり、設備投資は均してみれば緩やかな増加傾向が続いていると判断される。高水準の企業収益が続いていることに加え、デジタル・省力化投資、研究開発投資などによる押し上げも寄与しているものと思われる。
先行きについて、資源価格上昇によるコストアップで企業収益が下押しされることが懸念されるが、収益の水準が非常に高いことや受注残がたまっていることを考えると、設備投資の緩やかな増加傾向が崩れる可能性は低いとみている。ただし、足元では資材の調達難による建設工事の遅れや中断、受注抑制や減産といった動きが出始めている点に注意が必要だ。これらの影響次第では、目先、設備投資が一時的に抑制される可能性もあるだろう。
輸出は前期比+1.7%と高い伸びとなった。3月の中東向け輸出が急減するといった動きはあったが、1-3月期全体でみれば影響は限定的なものにとどまっている。1-3月期は、インバウンド需要は前期比▲1.6%と微減だったが、財輸出(前期比+2.2%)が好調だった(サービス輸出は前期比+0.4%)。自動車を中心として米国向けが持ち直したことに加え、中国等のアジア向けも好調に推移した。
先行きについて、米国経済が底堅く推移している点は好材料である一方、中東向け輸出の減少が続くとみられることや、供給制約が国内外の生産活動を下押しする可能性があることが懸念材料である。目先、輸出は伸び悩む可能性が高いと予想する。
輸入は前期比+0.5%と小幅に増加した。イラン情勢悪化前に調達した原油が3月に入着したこともあり、1-3月期でみると大きな輸入減はみられなかった。このように輸出、輸入とも増加したが、輸出の増加度合いの方が大きかったことから、外需寄与度は前期比+0.3%Pt(前期比年率+1.1%Pt)と、成長率の押し上げ要因になった。
住宅投資は前期比+0.5%と増加した。25年4月の建築基準法・省エネ法改正に伴って、駆け込み需要と反動減が生じた。25年7-9月期の住宅投資は、こうした駆け込み需要からの反動減の影響で前期比▲8.1%と急減していたが、10-12月期、26年1-3月期には悪影響が和らぎ、前期比では増加している。ただし、既に住宅着工の増加は止まっている上、今後は資材調達難による下押しも生じる恐れがある。当面、住宅投資の増加は期待し難い状況である。
公共投資は前期比+1.4%と3四半期ぶりに増加した。基礎統計である建設総合統計で伸びが大きく高まったことが反映された。25年度補正予算による公共工事の進捗があったと思われる。


1 GDP統計では、季節調整のかけ直しや基礎統計の改定に伴い過去の値も毎回改定される。25年1-3月期が前期比年率+1.8%(改定前+1.1%)、4-6月期が+1.4%(同+2.4%)、7-9月期が▲2.5%(同▲2.6%)、10-12月期が+0.8%(同+1.3%)などとなった。全体として25年度の数字がやや下方修正されているが、符号の変化等はみられず、特段景気認識に変更を迫るほどではなかった。
新家 義貴
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。