FRBは4会合ぶりの据え置き、失業率に安定の兆しで (26年1月27、28日FOMC)

~データ重視の姿勢崩さず、市場の利下げ予想は後ずれへ~

桂畑 誠治

目次

●FRBは4会合ぶりに据え置き、FFレートを3.50~3.75%に維持することを決定

26年1月27、28日に開催されたFOMCで、FRBはFFレート誘導目標レンジを予想通り4会合ぶりに据え置き、3.50~3.75%に維持することを賛成10人、反対2人の賛成多数で決定した。ウォラーFRB理事、ミランFRB理事は、25bpの利下げが適切として、据え置きに反対した。

●4会合ぶりの据え置きは、やや高いインフレのもと労働市場の軟化に歯止めがかかったため

FRBは、経済活動が12月の緩やかなペースから、今回堅調なペースに加速したと、景気判断を上方修正した。また、失業率について安定化の兆しが見られると労働市場の軟化に歯止めがかかりつつあるとの認識を示したうえ、失業率の下振れリスクが和らいだと指摘するなど労働市場に対する見方を上方修正した。一方、インフレ率は22年半ばの高値から大幅に緩和したが、2%の長期目標に対してやや高いままとの判断が維持された。

このような経済情勢のもと、パウエル議長は、「昨年9月以降、政策金利を75bp引き下げ、中立と推定される妥当な範囲内まで引き下げた」ことが、経済成長や労働市場を支える一方、現在のやや引き締め的な政策金利の水準を維持することで、「関税引き上げの影響が過ぎた後にインフレ率が再び2%に向けて低下を再開させるのに役立つ」と、関税の影響の剥落後のインフレ低下に繋がるとの見方を示した。また、議長は「私たちは、入ってくるデータ、変化する見通し、リスクバランスに基づき、政策金利の追加調整の程度とタイミングを判断するのに適した立場にある」と様子見姿勢が適切な経済状況であるとの認識を示し、政策金利据え置きの決定を説明した。

●パウエル議長は議長辞任後の理事留任について発言せず

パウエル議長は、議長任期終了後の理事職の継続に関する質問への回答を避けた。パウエル氏の議長としての任期は26年5月に満了する予定だが、FRB理事の任期が28年1月まであるため、FOMCメンバーとして残ることが可能である。理事職を辞任すると、新たな理事をトランプ大統領が指名することが可能になるため、FRBの独立性に対する懸念が高まる恐れがある。ウォラーFRB理事以外の人物が新FRB議長に就任すれば、パウエル議長はFOMCメンバーとして理事職を続ける可能性がある。

図表
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●経済の現状判断では、景気、雇用は上方修正、インフレは変わらず

FOMC声明文で、景気、雇用判断が上方修正された。インフレ判断は変わらなかった。景気判断は、今回「入手可能な指標は、経済活動が堅調なペースで拡大していることを示している」と前回「入手可能な指標は、経済活動が緩やかなペースで拡大していることを示している」から、堅調なペースで拡大していると景気判断を上方修正した。

雇用情勢について声明文では、今回「雇用者数は依然として低水準にとどまり、失業率は安定化の兆しを見せている」と前回「雇用の伸びは今年に入って鈍化し、失業率は9月まで小幅上昇した。最近の指標もこれらの動向を裏付けている」から、失業率が安定化の兆しをみせていると判断を上方修正した。議長は、「労働市場では、段階的な軟化の期間を経て状況が安定しつつある可能性が示唆されている」との見方を示した。

インフレについて声明文で、「インフレ率は依然としてやや高水準にある」と前回「インフレ率は年初から上昇し、依然としてやや高い水準」と、年間の説明部分が削除されたが、インフレ判断は変わらなかった。

●FRBは経済見通しをさらに上方修正へ

先行きに関して、声明文では、前回同様「経済見通しの不確実性は依然高い」と指摘された。しかし、パウエル議長は「経済活動見通しは、前回会合以降、明らかに改善した」と見通しの上方修正を指摘した。一方、議長は、インフレ率は予想通りの推移との見方を示したうえで、関税のインフレへの影響について、一時的な押し上げに留まるとの楽観的な見方を維持した。

●FRBは高まっていた雇用の下振れリスクが和らいだと判断

リスクに関する声明文で、今回「委員会は二つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」と前回「委員会は二つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っており、雇用の下振れリスクがここ数ヶ月で高まっていると判断している」と“雇用の下振れリスクがここ数ヶ月で高まっていると判断している”との文言を削除した。議長は、雇用とインフレの二大責務間の緊張が依然存在しているが、幾分緩和し、インフレの上振れリスクと雇用の下振れリスクは和らいだと説明した。

ただし、議長は「関税の価格転嫁の影響がまだ完全には見通せないことから、FRBはインフレを注視し続け、時期尚早な勝利宣言をすべきではない」と、一部の利下げに前のめりになっている人に警鐘を鳴らした。

●今後の追加利下げは、失業率次第

今後の金融政策の方針では、声明文で前回同様「FFレート誘導目標レンジに対する追加調整の程度と時期を検討する」と今後の判断をより慎重に行う方針を維持した。同様の文言が加えられた24年12月のFOMC以降、25年8月にかけて政策金利の据え置きを続けた。議長は、「金融政策はあらかじめ決まった方向ではなく、会議ごとに意思決定を行う」との方針を改めて指摘し、今後の金融政策決定はデータ次第であることを強調した。

今後、関税の影響が剥落した後のインフレ率が緩やかに低下しても、経済が堅調さを維持し、失業率の一段の上昇が回避されている間は、追加利下げの可能性は低いだろう。ただし、FRBは、GDP成長率よりも失業率を重視しており、失業率が4%台後半に上昇すれば、利下げを実施すると見込まれる。

●FF先物市場は、26年に2回程度の利下げを織り込み

FF金利先物市場では、26年3月FOMCでの据え置きの可能性が約87%(前日約83%)に上昇した。4月FOMCまで据え置きの可能性が約74%(前日約69%)に上昇した。6月FOMCまで据え置きの可能性が約40%(前日約35%)に上昇した。年末のFF金利の水準は、3.19%と前日の3.17%から小幅上昇した。予想通り据え置きだったことや、議長の記者会見も金融政策見通しを大きく変化させる内容ではなかったことから、金融市場の反応は限定的となった。国債利回りは、小幅上昇した後、低下した。ドルは主要通貨に対して弱含んだ。主要株価指数は方向感のない展開。

図表
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【参考】ドットチャートは、25bpの利下げ回数が26年1回、27年1回、28年ゼロ回で変わらず

声明文と同時に公表されたFOMC参加者の経済・金利予測中央値(25年12月)では、25年の実質GDP成長率(10-12月期:前年同期比)が+1.7%(前回9月+1.6%)と上方シフトした一方、PCEデフレーター(10-12月期:前年同期比)が+2.9%(同+3.0%)、PCEコアデフレーター(10-12月期:前年同期比)が+3.0%(同+3.1%)と下方シフトした。失業率(10-12月期平均)は、4.5%(同4.5%)と変わらなかった。

26年に関しては、実質GDP成長率が+2.3%(前回+1.8%)と大幅に上方シフトした一方、PCEデフレーターが+2.4%(同+2.6%)、PCEコアデフレーターが+2.5%(同+2.6%)と下方シフトした。失業率は4.4%で変わらなかった。27年は、実質GDP成長率は上方シフトし、失業率は下方シフトした。PCEデフレーターは変わらなかった。

予測期間を通じて、潜在成長率を上回る経済成長が続くなか、失業率は小幅低下する楽観的な見通しとなっている。そのような中で、インフレは27年にFRBの2%目標付近に低下する予想となっている。これらの予測に関して、FOMC参加者は、成長率の下振れリスク、インフレ率や失業率の上昇リスクの他、これらの不確実性が高いとの見方を維持した。

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このようなファンダメンタルズの予測のもと、ドットチャート(FFレート誘導目標レンジの中央値、年末)では、25年末3.63%(前回9月3.63%)、26年3.38%(同3.38%)、27年3.13%(同3.13%)、28年3.13%(同3.13%)と前回から変化しなかった。また、FOMC参加者が中立金利と推測する長期(中央値)は、3.00%(同3.00%)と変わらなかった。利下げ回数は、25bpを1回とすれば、26年1回(同1回)、27年1回(同1回)、28年ゼロ回と前回と変わらず、小幅利下げが適切と予想された。FF先物市場が織り込む金利水準を上回っており、乖離が続いている。

ドットチャートについて、パウエル議長は「政策はあらかじめ定められた方向にない」と指摘したうえで、「これらの予測は委員会の計画や決定ではない」と改めて強調した。

図表
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桂畑 誠治


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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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