米国:イラン・中東情勢の混乱が活動を抑制(3月ISM非製造業)

~サービス業でも供給網の混迷と高まるコスト増圧力~

桂畑 誠治

要旨
  1. 外部環境の悪化により拡大ペースが鈍化 26年3月のISM非製造業景気指数(総合、季節調整値)は54.0となり、前月の56.1から2.1ポイント低下し、市場予想中央値の54.9を下回った。トランプ政権による関税賦課への懸念が続くなか、米国とイスラエルによるイラン攻撃に伴う価格上昇、サプライチェーンの混乱、不確実性の高まりを受け、非製造業部門の拡大ペースが鈍化したことが示された。もっとも、国内需要の堅調さを背景に、指数自体は依然として高い水準を維持している。 2.内需の強さと供給制約の混在 3月の調査結果を項目別にみると、入荷遅延が56.2(前月比+2.3ポイント)、新規受注が60.6(同+2.0ポイント)と上昇した一方、事業活動が53.9(同▲6.0ポイント)、雇用が45.2(同▲6.6ポイント)と低下した。 各項目の動向を詳しく見ると、新規受注は上昇ペースを加速させており、サービス需要の強さを裏付けている。しかし、事業活動が拡大圏ながら大幅に低下するなど、非製造業部門の活動は鈍化した。雇用指数も低下し、労働需要の停滞を示した。また、トラック輸送等のボトルネックに加え、ホルムズ海峡の事実上の閉鎖によるグローバルなサプライチェーンの混乱により、入荷遅延が高い水準に上昇した。こうした中、仕入価格指数も大幅に上昇し、インフレ圧力が強まったことが示された。
  2. 企業コメントではイラン情勢とコスト増へ警戒 ・調査対象企業のコメント ・業種別のコメント
  3. 構成項目の詳細分析 ・新規受注 新規受注指数は上昇し、高い水準となった。拡大した業種が18業種中14業種(前月15業種)に減少、縮小は1業種(同2業種)に減少しており、需要の広がりが示された。運輸・倉庫業が拡大に転じたほか、不動産・賃貸・リース、卸売業、企業向けサービス、金融・保険、教育サービス、宿泊・飲食サービス、その他サービス、専門・科学・技術サービス、情報、公益、建設業、公的部門、医療・社会支援が拡大を継続した(下線は拡大・縮小が2カ月以上続いたことを示す、以下同様)。 ・事業活動 事業活動指数は拡大圏ながら大幅に低下した。拡大した業種は18業種中11業種(前月13業種)へ減少し、縮小した業種は小売業、医療・社会支援、公的部門の3業種(同1業種)に増加した。関税の影響を受け易い卸売業が価格上昇リスクの抑制に動いたことで拡大を続けたほか、需要旺盛な教育サービス、企業向けサービス、金融・保険、宿泊・飲食サービス、情報、公益、専門・科学・技術サービス、建設業が拡大を維持した。また、運輸・倉庫業、その他のサービス業が拡大に転じた。 ・雇用 雇用指数は縮小を示す水準に低下し、拡大した業種数が18業種中5業種(同7業種)に減少、縮小した業種数は6業種(同5業種)に増加した。 ・入荷遅延 入荷遅延は上昇し、物流の遅れが強まったことを示唆している。コメントには、「サプライヤーやメーカーからのバックオーダーが遅延の原因」や「トラック不足が配送の遅延を引き起こしている」といった状況が報告されている。 ・物価 インフレ関係では、仕入価格指数が70.7と前月比+7.7ポイント上昇し、13年以上ぶりの大幅な月間上昇幅を記録した。18業種中17業種(前月16業種)で上昇し、価格下落を報告した業種はゼロだった。下落品が皆無だった一方、人件費、銅、木材、メモリ製品、燃料、ガソリン、コンピューター、ソフトウェアライセンス、アルミニウム等が上昇した。また、供給不足としてメモリ部品、電子部品、高電圧機器、熟練労働者、電線・ケーブルが報告された。

5.業種別動向と結論:1-3月期の基調は「加速」を示唆 ・業種別の拡大・縮小状況 3月に拡大を報告した業種は、18業種中13業種(前月14業種)に減少した。拡大した業種は、強い順に、卸売業、企業向けサービス、金融・保険、宿泊・飲食サービス、運輸・倉庫、教育サービス、鉱業、建設業、公益、その他サービス、不動産・賃貸・リース業、専門・科学・技術サービス、情報産業と続いた。一方、縮小した業種は、小売業、農林水産業、公的部門の3業種(前月3業種)と同数だった。 ・四半期平均による景気判断 米国経済全体の景気動向を示す「ISM総合景気指数(製造業と非製造業の合成)」は、3月に53.9と前月比1.8ポイント低下し、拡大ペースの鈍化を示した。しかし、1-3月期平均でみると、製造業が52.6(10-12月期48.2)、非製造業が54.6(同52.7)とともに大幅に改善した。この結果、同期のISM総合景気指数は54.4(同52.3)へと上昇しており、26年1-3月期の米景気が単月の不透明感を含みつつ、基調としては加速していることを示唆している。

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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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