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トルコ中銀、インフレ鈍化で利下げ幅拡大、リラの行方は見通せず

~インフレ鈍化は一時要因の可能性、リラ相場は政治や外交を巡るリスクに揺さぶられる展開も~

西濵 徹

要旨
  • トルコ中銀は、12月11日の定例会合で政策金利を150bp引き下げ38.00%とした。利下げは4会合連続、昨年12月以降の利下げ局面で通算7回目となる。内需拡大が続くなか、足元でインフレ鈍化が確認されたことで、前回より利下げ幅を拡大しており、景気下支えと物価安定の両立を図った。
  • 声明では食料価格下落によるインフレ鈍化と景気の強さを指摘しつつ、インフレ期待や企業の価格設定をリスクと認識。物価安定が達成されるまで引き締め維持を明言し、利下げ停止や再利上げの可能性も示した。足元のインフレ鈍化を受けて実質金利はプラス幅が拡大するなど、実質的に金融引き締め度合いは強まっている。今後も利下げを続けると見込まれるが、その幅は実質金利の動向をみて調整されるであろう。
  • 足元の金融引き締め度合いは高まるも、リラは対ドルで下落が続いている。イマモール市長を巡る政治リスクのほか、イスラエル高官への逮捕状、ロシアとのLNG契約延長を進める一方、米国とのF-35協議など外交面の不透明感がリラ安を助長している可能性がある。今後も相場変動に警戒する必要性は残る。

トルコ中央銀行は、12月11日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利である1週間物レポ金利を150bp引き下げ、38.00%とすることを決定した。同行による利下げ実施は4会合連続であるうえ、昨年12月以降の利下げ局面において計7回目の利下げとなる。10月の前回会合での利下げについては、昨年半ばを境に鈍化してきたインフレが加速に転じるなど物価動向に変化の兆しがみられるなかで行われたため、それまでの利下げと異なる状況にあった(注1)。こうした事情から、利下げ幅は100bpと、7月(300bp)や9月(250bp)に比べて小幅に留めるなど慎重な対応を迫られた。しかし、その後のインフレは再び鈍化に転じており、11月のインフレ率は前年比+31.1%と4年ぶりの低い伸びとなっている。さらに、今月初めに公表された7-9月の実質GDP成長率は前期比年率+4.41%と5四半期連続のプラス成長となり、インフレ鈍化や中銀による断続的な利下げ実施も追い風に、幅広く内需が拡大する動きが確認されている(注2)。よって、中銀は追加利下げを行うだけでなく、利下げ幅を150bpとわずかに拡大させるなど、景気下支えと物価安定の双方に配慮する姿勢を示したものと考えられる。

図表
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会合後に公表した声明文では、足元のインフレ鈍化について「食料品価格のサプライズ的な下落によって想定を下回っている」とした上で、「インフレ基調はやや低下している」との認識を示している。一方、足元の景気動向について「想定を上回る結果となった」とした上で、「先行指標は需要環境がディスインフレプロセスの下支えを示唆している」との見方を示している。その上で、先行きの物価動向について「改善の兆しはみられるが、インフレ期待と企業による価格決定行動がディスインフレプロセスへのリスク要因となっている」との認識を示した。そして、先行きの金融政策について「需要動向や為替レート、期待を通じて、物価安定を実現するまで引き締めスタンスを維持する」との従来からの姿勢を繰り返したうえで、その決定について「インフレ見通しと実績、基調的な動きを勘案して決定する」、「会合ごとにインフレ見通しを注視しつつ慎重に見直す」としつつ、「インフレ見通しが目標から大きく乖離した場合は引き締め姿勢を強める」と引き続き利下げの再休止や再利上げにも含みを持たせる考えをみせた。また、「信用市場や預金市場で予期せぬ事態が発生した場合は、流動性を巡る状況を注視しつつ、マクロプルーデンス政策を強化する」としつつ、「インフレ目標の実現に向けて、予見可能なデータに基づく透明性の高い枠組みの下で必要な環境醸成を図るべく政策決定を行う」との考えをあらためて示した。なお、中銀による断続的な利下げ実施にもかかわらず、インフレが鈍化していることを受けて、足元で実質金利(政策金利-インフレ率)のプラス幅が拡大しており、実質的には引き締め度合いがやや高まる動きがみられる。先行きも中銀は利下げを継続すると見込まれるものの、利下げ幅は実質金利の動向をみながら調整する展開が続くであろう。

図表
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前述のように、金融政策の引き締め度合いはやや高まる動きがみられるものの、足元の通貨リラの対ドル相場はジリ安が続いて最安値を更新する展開をみせている。なお、リラ安の動きに歯止めが掛からない一因には、トルコの検察当局が先月にイマモール・イスタンブール市長(現在は停職中)に対して、計143の容疑を理由に828年から最大で2352年の禁固刑を求刑するなど(注3)、政治リスクが再燃していることも影響している。イマモール氏の求刑容疑の詳細については現時点で不明であるものの、トルコではここ数年、司法がエルドアン大統領の意向を忖度したような判断を下す場面が相次いでおり、三権分立が事実上形骸化している可能性がある。さらに、検察当局は10月にイスラエルのネタニヤフ首相をはじめ計37人の政府高官に対して、人道に対する罪とジェノサイド(大量虐殺)の罪で逮捕状を発行している。また、今月初めには今月末に期限切れを迎えるロシアとのLNGの輸入契約を1年間延長したことが明らかになるなど、不安定な状況が続くトランプ米政権との関係に不確実性が高まる懸念もある。その一方、米国(バラック駐土大使)は最新鋭ステルス戦闘機(F-35)の配備計画へのトルコの再参加を協議していることを明らかにしているが、その行方は見通しにくい。足元のリラ相場は緩やかな下落が続くものの、大きく動揺する事態は免れている。しかし、政治動向や外部環境の変化を理由に再び大きく動揺する可能性には引き続き注意が必要である。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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