インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

トルコ景気はインフレ鈍化と利下げで底入れも、不安要因は山積

~政治不安に外部環境、インフレ再燃リスクも、金融政策やリラ相場の行方は不透明な展開が続くか~

西濵 徹

要旨
  • トルコではインフレ鈍化を受けて中銀が利下げを進めていたが、イマモール市長逮捕で政治リスクが高まりリラが急落し、一時利上げを余儀なくされた。その後はリラがジリ安ながら安定したため、再度利下げが行われている。しかし、最近はインフレ鈍化に変化の兆しがあり、金融政策の判断が難しくなっている。
  • 7-9月の実質GDP成長率は前期比年率+4.41%と、鈍化するも5四半期連続のプラス成長となり、インフレ鈍化や利下げを背景に内需が回復し、リラ安で輸出も持ち直した。その一方、異常気象により農林漁業は低迷し、先行きは食料インフレが懸念される。よって、金融政策の選択肢が狭まる可能性も考えられる。
  • イマモール氏は大規模汚職の容疑で起訴されたが、本人や所属政党(CHP)は政治的動機に基づく弾圧と主張する。司法の独立性低下が懸念されるなか、同氏が有罪となればCHPに打撃となることは避けられない。さらに、トルコはイスラエル高官への逮捕状発行など外交的緊張も抱えており、米国との関係悪化リスクもある。こうしたことから、先行きのリラ相場は引き続き政治リスクや外部要因で大きく揺れる可能性は残る。

トルコ経済を巡っては、個人消費をはじめとする内需が成長のけん引役となってきたが、昨年半ばを境にインフレが鈍化したことを受けて、中銀は昨年末以降に断続的な利下げを実施しており、景気を下支えすることが期待された。だが、今年3月のイマモール・イスタンブール市長の逮捕を受けて、金融市場では政治リスクが注目されてリラ相場が大きく調整したため、直後に中銀はリラ防衛を目的とする利上げを迫られた。その後のリラ相場はジリ安が続いて最安値を更新する展開が続いているものの、比較的落ち着いた推移をみせているほか、インフレ鈍化の動きが続いたため、中銀は再び利下げに動いている。なお、中銀は来年以降もインフレが一段と鈍化するとの見通しを維持するとともに、10月の定例会合でも追加利下げを決定している(注1)。しかし、足元では鈍化基調が続いたインフレの動きに変化の兆しが出ており、先行きの金融政策を巡る判断はこれまで以上に難しさが増している。

図表
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こうしたなか、7-9月の実質GDP成長率は前期比年率+4.41%と前期(同+6.56%)からペースは鈍化するも、5四半期連続のプラス成長となるなど底入れが続いている。なお、中期的な基調を示す前年同期比ベースの成長率は+3.7%と前期(同+4.9%)から鈍化するなど、景気の勢いに陰りが出る兆しがみられる。とはいえ、インフレ鈍化や中銀による断続的な利下げを追い風に、個人消費は3四半期ぶりの拡大に転じるとともに、設備投資や住宅投資も押し上げられるなど、内需が景気を押し上げている。さらに、ジリ安が続くリラ相場を追い風に輸出は2四半期ぶりの拡大に転じるなど、外需も景気を下支えしている。なお、内需の堅調さにもかかわらず輸入は減少に転じており、純輸出(輸出-輸入)の成長率寄与度のプラス幅が拡大している。その一方、在庫投資による寄与度は大幅マイナスになったと試算されるなど、在庫調整が進む動きも確認されている。分野ごとの生産動向を巡っても、内需の堅調さも追い風に、金融関連や不動産関連などサービス業のほか、建設業で活発な動きが確認されるとともに、外需の底堅さを反映して製造業にも底堅さがみられる。その反面、今年は地中海沿岸地域で大規模な干ばつが発生しており、山火事が頻発したほか、その後は霜害も相次ぎ、農林漁業関連の生産は3四半期連続で減少している。このため、先行きは供給懸念を理由とする食料インフレの動きが強まるとともに、物価動向を左右する可能性に注意する必要がある。その意味でも、先行きの金融政策の選択肢が狭まることが懸念される。

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トルコ検察当局は先月、イマモール氏を起訴した上で、同氏を計402人の容疑者が関わる大規模な汚職ネットワークが絡む組織犯罪の創始者、かつ首謀者として、贈賄や詐欺、恐喝、入札捜査など計143の容疑を理由に、828年から最大で2352年の禁固刑を求刑している(注2)。現時点においては、イマモール氏が罪を犯したか否かは不明である上、裁判の行方についても不確実な状況にある。しかし、ここ数年のトルコにおいては、司法がエルドアン大統領の意向を忖度したような判断が相次いで示されるなど、三権分立が事実上形骸化している様子がうかがえる。今年に入って以降も、9月にはイスタンブールの裁判所が、イマモール氏が所属する最大野党CHP(共和人民党)の幹部人事に介入する判断を下す動きをみせた。こうしたことから、イマモール氏やCHPは当初から一貫して容疑を否定するとともに、一連の逮捕劇を2028年までに実施が予定される次期大統領選に向けた政治的意図に基づくものと主張してきた。この背景には、CHPがイマモール氏を次期大統領選における候補に選出したことも影響したと考えられる。しかし、仮にイマモール氏が長期の禁固刑に処せられれば、同氏は事実上政治の舞台から遠ざけられる上、CHPも同氏に代わる候補者を選定する必要に迫られるなど打撃は避けられない。その一方、検察当局は先月、イスラエルのネタニヤフ首相をはじめ計37人の政府高官に対して、人道に対する罪とジェノサイド(大量虐殺)の罪で逮捕状を発行しており、不安定な状況が続くトランプ米政権との関係に不確実性が高まる可能性もある。トルコは伝統的にロシア、ウクライナ両国と良好な関係を有しており、ウクライナ戦争に関して積極的に仲介を図る動きをみせてきたものの、米国が主導する和平案の行方は見通せない上、その動向がトルコに悪影響を与える可能性もくすぶる。よって、足元のリラ相場は緩やかな下落が続くなど大きく動揺する事態は免れているものの、政治動向や外部環境の変化を理由に再び大きく動揺する可能性には引き続き注意が必要である。

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以 上

注1 10月24日付レポート「トルコ中銀、インフレ加速も3会合連続の利下げ、リラ相場の行方は?

注2 11月12日付レポート「]トルコ検察当局、イマモール氏に最大2352年の禁固刑を求刑](https://www.dlri.co.jp/report/macro/534448.html)」

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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