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2026.04.08
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ニュージーランド中銀は様子見維持も、将来的な利上げに言及
~「タカ派」姿勢はNZドル相場を下支えする可能性も、引き続き中東情勢次第~
西濵 徹
- 要旨
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- RBNZは4月8日の理事会で政策金利(OCR)を2.25%に据え置いた。2024年8月に開始した利下げサイクルで累計325bpの引き下げを実施してきたが、2025年以降はインフレが再加速し目標を上回る一方、景気回復も道半ばの状況にある。さらに、中東情勢の緊迫化による原油高は景気とインフレの両面でリスクとなっており、政策判断の難易度が増している。こうしたなか、2会合連続で様子見姿勢を維持した。
- 2025年12月就任したブレマン総裁の下で2回目となる今回の理事会後の声明では、中東情勢によりインフレ見通しとリスクバランスが大きく変化したと指摘した。短期的なインフレ上昇と景気回復の鈍化を見込みつつ、今回の据え置きはインフレ抑制と景気回復阻害リスクのバランスを取った判断と説明した。また、条件次第では将来的な利上げも辞さないとする「タカ派」的な姿勢を示しつつ、当面は中東情勢の動向を見極める方針を示した。
- 米国とイランの停戦合意を受けた原油価格の下落により、当面はインフレ期待の沈静化とNZドル相場の底打ちが期待される。RBNZがタカ派姿勢を示したこともNZドルの下支え要因となると見込まれる。しかし、停戦はあくまで一時的なものであり、関係国間の思惑の違いも残るなど中東情勢の先行き不透明感は払拭されていない。したがって、当面のNZドル相場は様々な情報に揺さぶられやすい展開が続くと予想される。
ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、4月8日に開催した定例の金融政策理事会において、政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を2.25%に据え置くことを決定した。RBNZは2024年8月に約4年ぶりの利下げに動き、その後も一時休止を挟みつつ、2025年11月まで断続的に累計325bpもの利下げを実施してきた。背景には、ここ数年高止まりしてきたインフレ率が、2024年後半以降はRBNZが定める目標(1~3%)の範囲内で推移するなど落ち着きを取り戻したことがある。物価高と金利高の共存が内需を下押しするとともに、中国景気の低迷も重なり、2024年半ばにかけてテクニカル・リセッションに陥るなど景気失速に直面したことも利下げを後押しした。しかし、2025年以降のインフレ率は加速に転じるとともに、10-12月は前年比+3.1%と2四半期連続で目標を上回る伸びで推移するなど、インフレが強まりつつある。他方、2025年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率+1.0%と2四半期連続のプラス成長で推移しているものの、内需は総じて力強さを欠くなど景気回復の動きは道半ばの状況にある(注1)。同国は原油や石油製品、天然ガスなどの収支(輸出と輸入の差し引き)がGDP比で2%を上回る赤字と試算されるため、中東情勢の緊迫化を受けた原油価格の上昇はマクロ的に景気の足かせとなることが懸念される。その一方、エネルギーを中心とする物価上昇がインフレを招くことも警戒されるなど、RBNZの政策判断はこれまで以上に困難の度合いが高まっており、今回は2会合連続で政策金利を据え置くなど様子見姿勢を維持した格好である。

RBNZでは、2025年12月にブレマン新総裁が就任しており、今回は同氏の下で開催される2回目の理事会となる。2月の前回会合で同氏は、先行きの政策運営について、2026年末の利上げの可能性に言及する一方、景気と物価動向に左右されると述べるなど、明確な方向性を示さなかった(注2)。会合後に公表した声明文では、足元の状況を「中東情勢を受けてインフレ見通しとリスクバランスが大きく変化した」との認識を示している。当面の同国経済は「短期的にインフレ率は上昇し、景気回復は弱まると見込まれる」としたうえで、政策運営について「あらゆるインフレ圧力を警戒しつつ、インフレ抑制のために行動する用意がある」との考えを示した。そのうえで、今回の決定を「中期的なインフレ上昇リスクに先手を打つことによる潜在的な利益と、景気回復を不必要に阻害するリスクとのバランスを取ったもの」とした。他方、先行きの政策運営は「コアインフレ率と賃金上昇率の抑制を維持しつつ、中期的なインフレ期待を2%前後で推移させる必要がある」とし、「これらの条件が満たされない場合、政策金利を断固として、適切に引き上げる必要が出てくる」と将来的な利上げに言及した。なお、足元の世界経済は「コロナ禍とウクライナ戦争が重なる形でサプライチェーンが混乱し、エネルギー価格の上昇を招いた2022年とは異なる」としたうえで、その理由に「当時は需要の力強さがインフレ圧力を高めていた」と指摘。当面の物価は「中東情勢の動向に左右される」としており、様子見姿勢を維持する可能性が高いと見込まれる。

足元では、米国とイランが2週間の停戦交渉で合意したことを受けて、金融市場ではホルムズ海峡を経由する海運の正常化が進むとの見方から原油価格は大幅に下落しており、インフレ期待の沈静化につながることが予想される。さらに、こうした市場環境を反映した「有事のドル買い」の動きも重なる形で調整局面が続いたNZドル相場も底打ちに転じている。そのうえ、RBNZが将来的な利上げに言及するなど「タカ派」姿勢を強めている様子がうかがえることは、当面のNZドル相場を下支えすると見込まれる。ただし、足元では米国とイランが「一時的な停戦」に合意しただけであるうえ、両国やイスラエルの思惑の違いが依然として大きいことに鑑みれば、事態が再び不透明さを増す可能性は残る。当面は様々な情報に揺さぶられやすい展開が続くことに注意が必要である。

注1 3月19日付レポート「NZ景気回復の足場は乏しく、早期利上げの可能性は一層低下」
注2 2月18日付レポート「ニュージーランド中銀は当面緩和維持、市場予想より「ハト派」の模様」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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