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2025.11.25
日本経済
経済財政政策
物価
物価指標(日本)
(改定版)電気代・ガス代補助金の家計、物価への影響
~旧暫定税率廃止と合わせ、CPIコアを瞬間風速で▲0.8~▲0.9%Pt下押しか~
新家 義貴
- 要旨
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政府が物価高対策として26年1~3月に実施する電気・ガス代補助金により、3か月合計で世帯あたり7000円程度の負担減に。CPIコアは26年2、3月に▲0.65%Pt、4月に▲0.22%Pt押し下げられる。ガソリン旧暫定税率廃止と合わせてCPIコアを瞬間風速で最大▲0.8~▲0.9%Pt押し下げるとみられる。
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政府の物価高対策により相応の物価押し下げが実現する可能性が高く、26年2、3月のCPIコアは前年比で+2%を割り込む可能性が高い。足元まで減少が続いている実質賃金も、遅くともこのタイミングでプラス圏に浮上する見込み。
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一方、懸念されるのが円安による物価上振れリスク。先行きの物価は、食料品価格を中心として前年の高い伸びの裏が出ることで鈍化する可能性が高いが、為替レートの動向次第では、企業が価格転嫁を積極化させ、値上げが再び加速する可能性も否定できない。補助が縮小・終了に向かう26年4月以降の物価動向については不透明感が残る。
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電気・ガス代補助金が拡充されて26年1~3月に復活
政府は、11月21日に閣議決定した経済対策において、2026年1~3月にかけて電気・ガス料金の補助(電気・ガス価格激変緩和対策事業)を再開することを決めた。筆者が以前レポート(電気代・ガス代補助金の家計、物価への影響 ~家計負担は月平均1000~2000円減、CPIコアは▲0.4%Pt程度の下押しか~ | 新家 義貴 | 第一生命経済研究所)を執筆した11月12日時点では補助の内容が固まっていなかったが、今回正式に補助の規模が公表されたことから、物価への影響を改めて試算する。
今回の経済対策では、26年1、2月に電気料金は1キロワットアワーあたり4.5円、ガス料金は1立方メートルあたり18.0円、3月には電気料金で1.5円、ガス料金で6.0円が支援される。過去の一般家庭における1~3月の平均使用量等をもとに計算すると、1、2月が各3000円強、3月が1000円弱、合計で一世帯あたり7000円程度の負担減になるとのことである。寒さが厳しい1、2月の支援を厚くする形になっている。当初は25年夏の支援と概ね同額となる月平均1000円程度(合計3000円程度)の負担減で調整が進んでいたとの報道もあったが、首相の意向もあって補助額が大きく積み増された格好だ。

CPIへの影響は大きい

次に、消費者物価指数への影響を見る。電気代、ガス代のCPIへの反映は「使用月」ではなく「請求月」に反映されるため、2026年1〜3月の補助実施はCPI上では2026年2〜4月に影響することに注意が必要である。
今回の補助によって、CPIコアは26年2、3月に▲0.65%Pt、4月に▲0.22%Pt程度押し下げられると試算される。影響はかなり大きい。
また、CPIへの影響を見る上では、前年の裏の影響を勘案することも重要だ。そこで、電気・ガス代負担軽減策のCPIコア前年比に与える影響度合いを見たものが図2である。26年1月~3月に補助金が再開されない場合、CPIコアは26年2、3月に+0.35%Pt、4月に+0.18%Pt程度押し上げられるはずだった。これは、前年の同時期に補助が実施されて水準が下がっていたことの裏が出るためである。これが、26年2、3月のCPIコアへの負担軽減策による影響度合いは、それぞれ▲0.3%Pt程度のマイナス寄与、4月は概ねゼロとなる。1、2月分(CPI反映は2、3月)の補助が前年と比べてかなり大きいことによるものである(3月分の補助は前年と大きくは変わらない)。また、その先について、仮に26年夏、27年冬に補助が実施されない場合には、前年の裏要因によってCPIコアはそのタイミングで大きく押し上げられることにも注意しておきたい(なお、筆者は実施される可能性が高いと考えている)。
このように、前年の裏も絡んで複雑な動きとなることが予想されるため、CPIの先行きを予想する上で注意が必要である。
実質賃金は26年1-3月期にプラス転化も、円安による物価押し上げが懸念材料
この電気・ガス代補助金のほかにも、政府は年内のガソリン旧暫定税率廃止を決めており、これによりCPIコアは▲0.2%Pt程度の押し下げが見込まれる(ガソリン暫定税率が年内廃止に向けて前進 ~世帯あたり年間7600円の負担減。代替財源確保にどこまでこだわるか~ | 新家 義貴 | 第一生命経済研究所)。前述のとおり、電気・ガス代補助の実施により26年2、3月に▲0.65%Pt、4月に▲0.22%Pt押し下げられることと合わせると、押し下げが最大となる26年2、3月には▲0.8~▲0.9%Ptの下押しが予想される。政府の物価高対策により相応の物価押し下げが実現するだろう。このため、26年2、3月のCPIコアは前年比で+2%を割り込む可能性が高い。足元まで減少が続いている実質賃金についても、遅くともこのタイミングで小幅プラス圏に浮上するとみられる。
一方、懸念されるのが円安による物価上振れリスクだ。先行きの物価は、食料品価格を中心として前年の高い伸びの裏が出ることで、電気・ガス代補助を抜きにしても鈍化する可能性が高いと予想しているが、足元の為替レートを踏まえると上振れも意識しておく必要があるだろう。為替レートの動向次第では、企業が価格転嫁を積極化させ、値上げが再び加速する可能性も否定はできない。その場合、食料品価格の鈍化ペースが想定よりも緩やかなものにとどまり、CPIも思うように鈍化しないという展開も十分ありうる。電気・ガス代補助の額が予想以上に大きかったこともあり、26年2、3月のCPIコア+2%割れは固そうだが、補助が縮小・終了に向かう4月以降については不透明感が残る状況である。
新家 義貴
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 新家 義貴
しんけ よしき
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経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測
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