電気代・ガス代補助金の家計、物価への影響

~家計負担は月平均1000~2000円減、CPIコアは▲0.4%Pt程度の下押しか~

新家 義貴

要旨
  • 政府は物価高対策として、電気・ガス代への補助金を26年1月~3月に復活することを検討中。具体的な補助額は未定だが、前年並みであれば世帯当たり月約1000円の負担軽減となる。もっとも、補助の規模を拡充する可能性も浮上しており、この場合負担軽減額が月平均1800円超となる可能性もある。

  • 仮に25年1月~3月と同じ補助額となった場合、CPIコアは26年2、3月に▲0.4%Pt、4月に▲0.2%Pt押し下げられる。ガソリン旧暫定税率廃止と合わせ、26年2、3月のCPIコアを▲0.6%Pt押し下げる。また、仮に補助額が24年夏並みまで拡充されれば、ガソリン旧暫定税率廃止と合わせてCPIコアを瞬間風速で最大▲0.8%Pt押し下げる可能性も。

  • 政府の物価高対策により相応の物価押し下げが実現する可能性が高く、26年2月以降のCPIコアは前年比で+2%を割り込む可能性がある。足元まで減少が続いている実質賃金も、このタイミングで下げ止まり、もしくは小幅プラス圏に浮上する可能性がある。

電気・ガス代補助金が再復活へ

各種報道によると、政府は2026年1月~3月にかけて電気・ガス料金の補助(電気・ガス価格激変緩和対策事業)を再開する方針で最終調整に入っているとされている。正式決定は2025年11月中の経済対策取りまとめ時とされ、総合経済対策の柱の一つとして年内成立を目指す補正予算案に盛り込まれる見込みだ。

本制度は23年1月使用分の開始以降、延長・縮小・休止・再開を繰り返してきた。近いところでは、25年1月~3月にかけて補助が実施(1、2月の電気料金は家庭向けで1キロワットアワーあたり2.5円、ガス料金は1立方メートルあたり10.0円。3月分は電気料金で1.3円、ガス料金で5.0円)されたほか、25年7月~9月にも補助が再開されていた(7月と9月分は電気料金で2.0円、ガス料金で8.0円。8月分は電気料金で2.4円、ガス料金で10.0円)。この補助は25年9月使用分をもっていったん終了したが、物価高騰で苦しむ家計への支援として今冬に再度復活する。実施のタイミングは1年前と同様に1月~3月となる見込みである。

補助の規模は前年並み?それとも深堀り?

具体的な補助額については現時点で未定だ。25年1月~3月と同程度の「電気、ガスを合わせて平均的な世帯で月あたり1000円程度の負担軽減」を目安として調整が行われている模様だが、11月11日の衆院予算委員会において、高市首相は(1000円程度から)「深堀りする」と述べたとされ、補助規模の拡大が今後検討される可能性も残されている。仮に、24年夏に実施された「酷暑乗り切り緊急支援」時における補助額(24年8、9月分は電気料金で4.0円、ガス料金で17.5円、10月分は電気料金で2.5円、ガス料金で10.0円)と同等のものに拡充する場合には、一世帯あたり負担軽減額は月平均で1850円程度まで拡大する 。

図表1
図表1

CPIへの影響は大きい

次に、消費者物価指数への影響を見る。電気代、ガス代のCPIへの反映は「使用月」ではなく「請求月」に反映されるため、2026年1〜3月の補助実施はCPI上では2026年2〜4月に影響することに注意が必要である。

仮に25年1月~3月と同じ補助額となった場合、CPIコアは26年2、3月に▲0.4%Pt、4月に▲0.2%Pt程度押し下げられる。また、仮に24年の「酷暑乗り切り緊急支援」時における補助額と同等のものへと拡充した場合には、CPIコアは26年2、3月に▲0.6%Pt、4月に▲0.4%Pt程度押し下げられることになる。影響は相応に大きい。

また、CPIへの影響を見る上では、前年の裏の影響を勘案することも重要だ。そこで、電気・ガス代負担軽減策のCPIコア前年比に与える影響度合いを見たものが図2である。

26年1月~3月に補助金が再開されない場合、CPIコアは26年2、3月に+0.4%Pt、4月に+0.2%Pt押し上げられるはずだった。これは、前年の同時期に補助が実施されて水準が下がっていたことの裏が出るためである。一方、26年1月~3月に前年と同規模の補助が実施された場合には、26年2月~4月の前年比でみた押し上げ分はゼロとなる。また、仮に26年夏、27年冬に補助が復活しない場合には、26年8月~10月、27年2月~4月にそれぞれ前年の裏の影響で押し上げられることにも注意が必要だ。

また、26年1月~3月の補助の規模が、24年夏の「酷暑乗り切り緊急支援」時並みに拡大するケースでは、26年2月~4月のCPIコアはそれぞれ▲0.2%Ptのマイナス寄与となる。これは前年と比べて補助額が拡大し、押し下げ分が大きくなることによるものである。

このように、前年の裏も絡んで複雑な動きとなることが予想されるため、CPIの先行きを予想する上で注意が必要である。なお、物価の基調判断においては除いて考えることが望ましいだろう。

図表2
図表2

実質賃金プラス転化の可能性も

この電気・ガス代補助金のほかにも、政府は年内のガソリン旧暫定税率廃止を決めており、これによりCPIコアは▲0.2%Ptの押し下げが見込まれる(ガソリン暫定税率が年内廃止に向けて前進 ~世帯あたり年間7600円の負担減。代替財源確保にどこまでこだわるか~ | 新家 義貴 | 第一生命経済研究所)。前述のとおり、電気・ガス代補助の実施により26年2、3月に▲0.4%Pt、4月に▲0.2%Pt押し下げられることと合わせると、押し下げが最大となる26年2、3月には▲0.6%Ptの下押しが予想される。また、補助を24年夏並みに拡充した場合には、ガソリンと合わせた押し下げ寄与は▲0.8%Ptとなる。政府の物価高対策により相応の物価押し下げが実現する可能性が高いだろう。

この場合、26年2月以降のCPIコアは前年比で+2%を割り込む可能性が高くなる。足元まで減少が続いている実質賃金についても、このタイミングで下げ止まり、もしくは小幅プラス圏に浮上する可能性があることに注意しておきたい。

出口はあるか

23年1月に始まった電気代・ガス代補助金は、途中で支援規模の縮小や休止等をはさみながら、現在に至るまで継続している。最近では、以前のような年間にわたっての補助という形ではないものの、冷房・暖房代が嵩む夏と冬における支援策として定着しつつある。一度始めた補助金を終了するのがいかに難しいかということが良くわかる。そう考えると、26年1月使用分から復活が見込まれている電気代・ガス代補助金は、果たして3ヶ月間の期間限定で終了できるかどうかは微妙なところだろう。

26年夏には物価が前年比で+2%を割り込んでいる可能性があり、物価高対策としての役割が薄れたとして補助を終了することも考えられなくはない。もっとも、長く続いたこの補助を終了することのハードルはそれなりに高いだろう。その時の政治情勢次第ではあるが、26年夏、27年冬にも(支援規模を縮小しつつ)再復活する可能性を見ておくのが無難と思われる。

新家 義貴


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ