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2025.10.27
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アルゼンチン中間選挙、政権与党の勝利で自由市場改革継続へ
~国民は「ミレイ改革」の継続による経済混乱の回避を支持か、米国からの支援実施にも期待~
西濵 徹
- 要旨
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- アルゼンチンでは26日、ミレイ政権と与党連合・自由の前進に対する「中間評価」となる中間選挙が実施された。ミレイ政権は発足以来、連立政党や中間派の協力を得て経済再建を進め、インフレを大幅に低下させたほか、貧困率も政権発足前を下回るまで改善した。しかし、依然として国民の3分の1以上が貧困状態にあるほか、足元においては景気回復の勢いにも陰りが出ている。
- こうしたなか、「前哨戦」とされた先月のブエノスアイレス州議会選で与党は最大野党・正義党に惨敗し、市場では改革路線の頓挫懸念から「アルゼンチン売り」が起こった。中銀はペソ防衛のため大規模な為替介入を行い、外貨準備高は減少した。トランプ米大統領はミレイ氏への支援を表明し、米財務省や世界銀行も支援に動く方針を示したが、トランプ氏は実施条件に中間選挙でのミレイ氏の勝利とする「注文」を付けた。
- なお、事前には与党の苦戦が予想されたが、開票の結果、自由の前進が勝利し、下院で3分の1の議席を確保する見通しとなった。大統領の拒否権が維持され、今後は野党による改革の妨害が困難になる。選挙結果は、国民はミレイ政権に完全には満足していない一方、正義党への政権回帰を拒んだ姿勢の現われと言える。今後は、経済成長と雇用回復に加え、財政規律の維持を両立させつつ、破たん国家の再建に向けた取り組みが課題であり、その道のりは依然として遠い状況にあることは変わりがない。
アルゼンチンでは26日、ミレイ政権および与党連合「自由の前進」に対する中間評価となる中間選挙(国民議会上院(元老院)の半数、下院(代議院)の3分の1が改選)が実施された。一昨年末に発足したミレイ政権を支える自由の前進は、国民議会の上下院双方で少数派に留まるものの、連立政党や中間派政党の協力を得る形で『破たん国家』の立て直しを進めてきた。その結果、一時は300%近くに加速したインフレ率は大幅に鈍化し、直近9月は前年同月比+31.8%と2018年に経済混乱に陥る前の水準となるなど、落ち着きをみせている。また、政権発足直後には、その『ショック療法的』な政策運営が影響して一時は貧困率が50%を上回るなど国民生活を取り巻く状況は悪化したが、その後はインフレ鈍化も追い風に貧困率は低下して政権発足前を下回る水準となるなど国民生活にも改善がみられた。しかしながら、依然として国民の3分の1以上が貧困に喘ぐなか、足元ではミレイ政権が主導する構造改革を追い風にした景気回復の勢いに陰りが出ており、内・外需双方で底入れした流れに変化の兆しがみられる(注 )。この状況も影響して、先月に中間選挙の『前哨戦』として実施されたブエノスアイレス州議会選では、与党連合・自由の前進は最大野党「正義党」に惨敗を喫した(注 )。同州は元々正義党の牙城であるという事情を考慮する必要はあるが、事前調査では自由の前進の善戦が予想されていたため、予想外の惨敗を受けて、金融市場ではミレイ政権の改革路線が頓挫することが警戒され、通貨ペソ、主要株式指数(メルバル指数)、国債のすべてに売り圧力が強まる『アルゼンチン売り』の動きが強まった。

金融市場の動揺を受けて、中銀はペソ防衛を目的とする大規模な為替介入を余儀なくされ、その結果、外貨準備高は減少するなど経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の脆弱さが増した。こうしたなか、先月にニューヨークで開催される国連総会に併せてトランプ米大統領とミレイ氏の会談が行われ、トランプ氏がミレイ氏を全面的に支援する方針を示した。さらに、ベッセント米財務長官は具体策として、為替安定化基金を活用してアルゼンチンが発行するペソ建およびドル建国債の購入に加え、信用供与枠の提供、通貨スワップ協定の導入などを検討している旨を明らかにした。また、世界銀行も今年4月に公表したアルゼンチンに対する総額120億ドルの支援パッケージのうち最大40億ドル分(観光業の雇用創出など)の進捗加速に動く方針を明らかにした(注 )。米国による支援表明を受けて、直後には大きく調整したペソ相場が底入れしたほか、主要株式指数も底入れするなど、好感の動きがみられた。しかし、その後のペソ相場を巡っては、中間選挙での与党連合・自由の前進の苦戦が予想されたことも影響して再び調整の動きを強めるなど不安定さが増した。さらに、上述したようにトランプ氏はミレイ氏を全面的に支援する方針を示したものの、米国によるアルゼンチンへの支援実施についてミレイ氏の勝利を条件とする『注文』を付けた。こうした動きが中間選挙の行方に如何なる影響を与えるかが注目された。

上述したように、事前の世論調査では与党連合・自由の前進の苦戦が予想されたものの、内務省が発表した暫定開票結果に拠れば、自由の前進の勝利が確実となったほか、ミレイ大統領も勝利宣言を行った。開票率92%時点において、自由の前進の得票率は41%となっており、大半の州でリードしているほか、議会下院では改選議席である127議席のうち64議席と改選前(37議席)から大幅に議席を増やすとともに、下院全体の3分の1の議席を確保するなど大統領の拒否権が保持される見通しとなっている。国民議会ではここ数ヶ月、野党が大統領の拒否権を覆す形で歳出法案を可決するなど、ミレイ政権が主導するショック療法的な改革に対する妨害の動きが活発化していたが、今後はそうした対応が困難になると予想される。今回の選挙結果は、有権者の多くはミレイ氏が主導する政策に必ずしも満足していないものの、アルゼンチンを破たん国家にした正義党に政権を渡すことはできないと判断したと捉えることができる。この結果を受けて、米国からの支援実施が期待されるとともに、不安定な動きをみせてきたペソ相場や国債を取り巻く環境は大きく好転すると見込まれる。その一方、足元の景気が勢いを欠く動きをみせるなか、今後は経済成長と雇用拡大の実現とともに、財政規律にも留意した政策運営を打ち出す必要性も高まっていることは間違いない。破たん国家の再生の道のりはまだ遠い状況にあると捉えられる。
注1 10月17日付レポート「アルゼンチン・ミレイ改革による景気回復一服、中間選挙の行方は?」
注2 9月9日付レポート「アルゼンチン・地方選で与党惨敗、ミレイ改革の行方に「黄信号」」
注3 9月25日付レポート「トランプ米政権の支援でアルゼンチンのミレイ改革は継続できるか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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