インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

景気減速にもかかわらず南ア中銀は2会合ぶりの追加利上げを決定

~原油高やサービス物価を警戒、ランド相場は外部環境に左右される展開が続く~

西濵 徹

要旨
  • SARB(南アフリカ準備銀行)は9月23日の金融政策委員会で、政策金利を25bp引き上げて7.25%とすることを全会一致で決定した。南アフリカでは、景気低迷とインフレ鈍化を背景に2024年9月以降、金融緩和が進められてきた。しかし、イラン情勢悪化に伴う原油高を受けてインフレ圧力が再び強まり、SARBは5月会合で約3年ぶりの利上げに転じた。7月会合では景気悪化への懸念から金利を据え置いたものの、4-6月期の実質GDP成長率が7四半期ぶりのマイナスとなる一方、8月のインフレ率は前年比+4.4%と高止まりしており、景気と物価の「板挟み」が続いている。

  • SARBは、地政学リスクによる供給懸念やサービス物価、インフレ期待の高止まりを警戒し、2026年末から2027年初めにかけてインフレ率が5%を上回るとの見通しを示した。一方、2026年の経済成長率は+1.2%を見込むものの、下振れリスクが大きいとみている。先行きは年内の金利据え置きを想定し、その後はインフレ鈍化に伴う利下げの可能性を示すが、政策判断は経済指標次第としている。今回の利上げはランド相場を下支えし得るものの、景気の不透明感や金価格など外部環境への依存度が高く、ランド相場は引き続き不安定な展開が見込まれる。

南アフリカ準備銀行(SARB)は、9月23日に開催した定例の金融政策委員会で、政策金利を25bp引き上げて7.25%とすることを決定した。SARBは、2024年9月にコロナ禍後初の利下げに舵を切り、その後も一時休止を挟みつつ、断続的に利下げを進めてきた。背景のひとつには、同国の経済成長率が過去数年、2023年(+0.8%)、2024年(+0.5%)、2025年(+1.1%)と他国と比較して見劣りしていることがある。さらに、2024年以降のインフレ率は鈍化し、SARBが定める目標のレンジ内で推移したことも、断続的な利下げを後押しした。しかし、イラン情勢の悪化を受けた原油高の進行により、そうした環境は大きく変化している。

4月のインフレ率は前年比+4.0%となり、SARBが定める目標レンジ(2~4%)の上限に達した。このため、5月の定例会合で約3年ぶりの利上げに踏み切った。その後も、インフレ率は原油高を追い風に伸びが一段と加速するとともに、コアインフレ率も目標レンジを上回る水準まで高まった。金融市場ではSARBが7月会合で連続利上げに動くとの観測が強まった。にもかかわらず、7月会合で金利を据え置く判断を下した(注1)。SARBはその理由について、先行きの景気に不透明感が高まっているものの、物価の上振れリスクがあり、「板挟み」状態に直面しているとの認識を示した。実際、その後に公表された4-6月の実質GDP成長率は前期比年率▲0.96%と7四半期ぶりのマイナス成長となるなど、景気に急ブレーキが掛かっていることが確認された(注2)。一方で、その後のインフレ率は原油高の動きが一服したことを受けて伸びは一時的に鈍化したものの、8月は前年比+4.4%と高止まりしている(図1)。

会合後に公表した声明文では、今回の決定について「全会一致で決定した」として、5月会合での利上げ、7月会合での据え置き決定に際しては票が割れた状況が大きく変化している様子がうかがえる。そのうえで、足元の状況について「世界経済は依然として極めて厳しく、不確実な状況にある」との認識を示し、「地政学リスクを理由とする供給懸念がインフレ圧力を招いており、多くの中央銀行が利上げに動いている」とした。同国経済については、「前回会合で下振れリスクを警告したが、先行きは回復が見込まれる」として、2026年通年の経済成長率を+1.2%と見込む一方、「世界的なショックの影響を受け、成長率のリスクは下振れ方向に傾いている」との認識を示した。物価動向については「短期的な見通しを引き上げた」として、「2026年末から2027年初めにかけてインフレ率は5%を上回る」としたうえで、「2027年末ごろには3%程度に鈍化する」との見通しを示した。一方、サービス物価の高止まりやインフレ期待を背景に、物価には上振れリスクが残るとの見方も示した。先行きの政策運営について「モデルに基づけば年内は横ばいで推移し、その後はインフレ率が鈍化するに伴い利下げに向かう」との見方を示したが、「あくまで指針であり、経済指標や見通し、リスクを踏まえて会合ごとに判断する」とした。

今回の決定は、景気減速にもかかわらず、原油高やサービス物価を中心とするインフレ圧力の根強さ、インフレ期待の高止まりを警戒して追加利上げに踏み切ったと捉えられる。前述の通り、SARBが7月会合で予想外の金利据え置きを決定したことを受けて、直後にランド相場は大幅に調整した。しかし、その後は金価格が持ち直しの動きをみせたことを反映して、ランド相場は下支えされた。足元では金価格の上昇が一服しており、ランド相場は再び上値が抑えられるなど、外部環境に左右される展開が続いている(図2)。SARBの利上げ決定はランド相場を下支えする可能性はあるものの、実体経済の不透明感の強さは積極的な資金流入につながるとは見通しにくい。このため、先行きのランド相場も引き続き外部環境に翻弄される展開になると予想される。

図表
図表

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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