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2025.09.22
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ブラジル、右派と左派で社会二分、地域情勢の行方にも影響
~右派の背後に米国、左派の背後に中国、地政学的な動向を含めて地域情勢の行方を左右するか~
西濵 徹
- 要旨
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ブラジルでは、2022年の大統領選以降、右派と左派の分断が深刻化している。敗北した右派のボルソナロ前大統領は選挙結果を認めず、その後に支持者による連邦議会などへの襲撃事件が発生した。ボルソナロ氏は司法手続きにより、公職追放や禁固刑の判決を受けるなど、司法的に厳しい状況に直面している。
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しかし、米国のトランプ大統領はボルソナロ氏を巡る裁判を「魔女狩り」と批判し、同国に高関税を課すなど援護射撃の動きを強めている。国内でも、左派与党は少数派に留まるなど政府とねじれ状態にあり、議会で多数を占める右派勢力がボルソナロ氏の支持者への救済法案の早期審議、議員の刑事訴追阻止に動くなど、政治的な支援を強めるとともに、ボルソナロ氏の恩赦を目論む動きもみられる。
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こうした事態を受けて、左派勢力は21日に過去数年で最大規模の抗議デモを実施した。こうした社会分断の深刻化は政治的混乱を長期化させる可能性がある。金融市場はこうした事態を材料視していない模様だが、政治的混乱が政策運営に支障を来たせば、国民生活に悪影響が及ぶ可能性がある。地域大国のブラジルを巡る動向は、米国や中国の動きによる地政学的な動向も併せて注視する必要が高まっている。
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ブラジルでは、右派と左派の対立によって社会の分断が深刻化している。2022年に実施された大統領選では、右派のボルソナロ前大統領と左派のルラ現大統領による決選投票を経て、ルラ氏が勝利した。しかし、その後もボルソナロ氏は選挙結果を認めない発言を繰り返すとともに、翌23年1月にボルソナロ氏の支持者などが連邦議会をはじめとする政府機関に対する襲撃事件が発生した。襲撃事件については、同氏は病気療養を目的とする訪米中であったため、直接的な関与は不透明とされたが、その後に大統領選での権力濫用を理由に公職追放判決を受けている。さらに、最高裁判所は今月、ボルソナロ氏などに対してクーデターを計画した容疑などを理由に禁固27年3ヶ月の刑を言い渡しており(注1)、司法手続き面で同氏をはじめとする右派は厳しい状況に直面している。
しかし、ボルソナロ氏には外部から思わぬ援軍が来ている。というのも、同氏はトランプ米大統領と似た政治手法を駆使し、国内外において『ブラジルのトランプ』などと揶揄する向きがみられるほか、トランプ氏と良好な関係を築いてきた経緯がある。その一方、トランプ氏はブラジルに対する関税を50%と大幅に引き上げることを発表し、その理由のひとつに、ボルソナロ氏を巡る裁判について「魔女狩り」との見方を示すなど、圧力を掛ける姿勢を鮮明にしてきた(注2)。さらに、ルラ政権を支える最大与党PT(労働者党)は、連邦議会内で元老院(上院)、代議院(下院)ともに少数派に留まるなど、政府と議会は『ねじれ状態』となっている。こうしたなか、連邦議会で多数派を占める右派勢力は、上述した連邦議会などへの襲撃事件に参加して収監されたボルソナロ氏の支持者を対象とする救済法案の迅速な審議を決定したほか、連邦議員の刑事訴追を阻止可能とする権限を連邦議会に付与する憲法改正案も可決した。さらに、ボルソナロ氏の支持者などは、立法上の恩赦や将来的な大統領による恩赦など、司法以外の政治的手段を通じて同氏を支援する働きかけを強めている。
こうしたなか、主要都市において21日、社会運動家や労働組合、PTをはじめとする左派政党が中心となり、連邦議会によるボルソナロ氏や側近議員などに対する司法からの保護を目的とする働きかけに対する抗議デモが行われた。同国においては、過去にも左派政党などが組織する形でデモが実施されてきたものの、今回のデモは過去数年で最大規模となるなど、右派勢力が勢いを強めるなかで危機感の高まりを示すものと捉えられる。その一方、右派と左派による社会の分断が一段と深刻化することは避けられず、結果的に政治的な混乱が長期化する可能性も考えられる。金融市場においては、トランプ米政権の政策運営に対する不透明感やFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ実施が米ドル安を招いているほか、中銀のタカ派姿勢も重なり(注3)、通貨レアル相場は堅調な動きをみせるほか、主要株式指数(ボベスパ指数)も最高値を更新するなど、社会の分断が材料視される動きはみられない。しかし、足元の景気は頭打ちの様相を強めるとともに(注4)、政治的な混乱を理由に適時適切な政策運営の遂行に支障が出る事態となれば、その悪影響を最も受けるのは国民であろう。域内大国である同国の行方は、地域情勢にも少なからず影響を与えることが予想されるなか、その動向に加え、同国への影響力を強める米国、そして、中国の動きを注視する必要性が高まっている。

注1 9月12日付レポート「ブラジル最高裁、ボルソナロ前大統領に有罪判決、米国との関係は?」
注2 7月10日付レポート「ブラジルが突如トランプ関税の「標的」に!?」
注3 9月18日付レポート「ブラジル中銀、非常に長期にわたる金利据え置きをあらためて示唆」
注4 9月3日付レポート「ブラジル景気は一段と頭打ち、景気は内憂外患の様相を強める」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

