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マレーシア、地方選で国政与党どうしが激戦、政局への影響は

~アンワル首相率いるPHが連立相手BNに惨敗、早期解散・総選挙観測の行方は~

西濵 徹

要旨
  • 2022年総選挙で四分五裂となったマレーシア下院では、アブドラ国王の仲介により、PH(希望連合)、BN(国民戦線)などによる連立政権が発足し、PHのアンワル氏が首相に就任した。しかし、国政では連立を組むPHとBNも、地方レベルでは対立が残っており、国政与党内での政策運営を巡る意見対立の表面化を受け、アンワル首相は対立拡大時の早期総選挙実施の可能性に言及するなど、金融市場では早期解散・総選挙観測が浮上している。

  • こうしたなか、7月11日に実施されたBN地盤の南部ジョホール州議会選挙では、選挙前に40議席を有していたBNが8議席積み増して48議席を獲得する一方、PHは12議席から4議席減の8議席にとどまり、BNが優位に選挙戦を制した。この結果を受け、BNのアフマド・ザヒド・ハミディ議長は、8月1日実施予定のヌグリ・センビラン州議会選挙など今後の州議会選を見据え、党勢拡大への意欲を示している。

  • ジョホール州議会選の結果は、早期解散・総選挙観測が高まるなかで国政連立の先行き不透明感を強めるとの見方につながり、リンギ相場の重しとなっている。ヌグリ・センビラン州議会ではPHとBNが拮抗しており、解散・総選挙の判断も含め現時点では不透明だが、仮に地方選挙でPHが連敗すれば、早期総選挙に踏み切った場合でもPHが優位に戦えるかは不透明であり、マレーシア政局を巡る動きが一段と活発化する可能性に注意が必要である。

マレーシアで2022年に実施された連邦議会下院(代議院:総議席数222)総選挙は、与野党問わず四部五裂となった結果、いずれの政党も単独で半数を上回ることはできなかった。その後は、政権樹立に向けて各政党による交渉が行われたものの、四部五烈の選挙戦で各政党は互いに非難し合っていたこともあり、協議は難航した。これを受けて、アブドラ国王が政党の仲介役となる事態に発展した。その結果、選挙前は野党であった政党連合PH(希望連合)と地方政党連合であるGPS(サラワク同盟)に加え、選挙前は与党の一角であった政党連合BN(国民戦線)が連立与党入りすることで合意した。これにより、PHを率いるアンワル氏が首相に就任して政権が発足した。こうした経緯から、PHとBNは国政ではアンワル政権を支える与党連立を構成している(図1)。

図表1
図表1

しかし、総選挙において、PHは選挙前に最大与党であったBNの汚職体質を痛烈に批判してきたため、BN内では表面的には与党連立を構成する一方、PHに対する不満が根強く残った。なかでも、地方政治はこうした色合いが強く、国政では連立を組むPHとBNが地方では与野党を違える動きも散見された。この関係について、両陣営は州レベルでの意見相違は国政レベルでの連立には影響しないとの見方を示してきた。なお、現在の代議院の任期は2028年2月までであり、次期総選挙までは最大で1年7ヵ月程度は時間的猶予がある。とはいえ、与党内では政策運営を巡って度々意見対立が表面化する動きがみられ、アンワル首相は、対立が一段と拡大するようであれば早期に総選挙を実施する可能性に言及した。このため、金融市場においては、早期の解散・総選挙の可能性を見込む動きもみられる。

こうしたなか、7月11日に南部ジョホール州議会(総議席数56)選挙が実施された。同州はBNが地盤としており、選挙前には40議席と7割以上の議席数を確保していた。さらに、PHも12議席を確保しており、両党で議席数は9割以上の圧倒的多数を占めていた。しかし、BNは議席の上積みを、PHも議席の奪還を目指すなど対立構図による選挙戦が展開された。そして、BNの獲得議席数は48と8議席積み増す一方、PHは8議席と4議席を失ったものの、両党ですべての議席を占めることとなった。この結果を受けて、BNのアフマド・ザヒド・ハミディ議長は、8月1日に実施予定のヌグリ・センビラン州議会選挙など今後予定される州議会選を念頭に、「ブルー(党のシンボルカラー)ウェーブ」を引き起こすことを願うと述べるなど、次期総選挙へ弾みをつけることを目指す姿勢をみせた。

ジョホール州議会選の結果を受けて、金融市場においては前述のように早期の解散・総選挙の観測があるなか、国政での連立の行方に不透明感が高まるとの見方が通貨リンギ相場の重しとなっている(図2)。ヌグリ・センビラン州議会ではPHとBNが拮抗しているうえ、解散・総選挙の動向もアンワル首相次第であり、現時点においてその行方は見通せない。しかし、仮に地方選挙でPHが連敗を喫することになれば、その場合、早期の総選挙に踏み切った場合もPHが優位に選挙戦を展開できるかは不透明である。このため、マレーシアの政局を巡る動きが一気に喧しさを増す可能性に注意が必要になっている。

図表2
図表2

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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