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2025.09.10
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南ア4-6月GDPは久々の高成長も、実態との乖離を示唆する内容
~ランド相場は米ドル安や実質金利が下支え役となるも、先行きも米ドル相場に左右される展開が続く~
西濵 徹
- 要旨
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トランプ米政権は、安全保障上の理由や貿易赤字の是正を目的に相互関税を発動している。しかし、南アフリカへの貿易赤字は小幅にもかかわらず30%の高関税を課し、BRICS諸国を標的とする姿勢を鮮明にしている。南アフリカの対米輸出依存度は低いものの、低成長が続くなかで、すでに自動車関連輸出などに深刻な悪影響が出るなど、景気の重石となることは避けられない
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こうした状況ながら、4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+3.37%と久々の高成長となるなど回復が確認されている。インフレ鈍化や中銀の利下げを背景に個人消費は拡大するなど、景気持ち直しの動きをけん引している。しかし、固定資本投資は減少が続いているほか、輸出不振の動きも確認されている。さらに、在庫の積み増しが景気を押し上げる様子が確認されており、景気回復の持続性には疑問が残る。
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分野別では、農林漁業や製造業、サービス業など幅広い分野で生産拡大が確認されている。その一方、建設業や公益部門の生産は低迷しており、景気実態と数字との乖離を示唆している可能性がある。また、中銀は昨年後半以降に利下げを進めてきたものの、足元では消費拡大を追い風にインフレ圧力が再燃する動きがみられる。今後はトランプ関税の余波を受けた雇用悪化や在庫調整が景気の足かせとなり得る。
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通貨ランド相場は、金融市場における米ドル安に加え、高い実質金利を追い風に堅調な推移をみせる。ただし、インフレ動向や実体経済の不透明感を勘案すれば、米ドル相場の動向に左右される展開が続こう。
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昨今の世界経済や金融市場は、トランプ米政権の関税政策に翻弄されている。米国は、安全保障上の脅威への対応や貿易赤字の是正を目的に関税を用い、相手国との協議による『ディール(取引)』を通じて米国に有利な環境の構築を図っている。米国はすべての国に対して一律10%の関税を課すとともに、一部の国や地域に非関税障壁などに応じて税率を上乗せする相互関税を導入している。なお、南アフリカに対する米国の貿易赤字額は他の国や地域に対して小幅であるにもかかわらず、米国は同国に対する相互関税を30%と高水準に設定している。これは、トランプ氏が第1次政権から南アフリカに対して強硬姿勢をみせており、第2次政権でも同様に圧力を強めたことが背景にあるとみられる(注1)。また、トランプ氏は南アフリカも加わるBRICSが主導する『反米政策』に同調した国に対して追加関税を課す方針を示し、ブラジル(注2)やインド(注3)にも軒並み高い関税を課すなど、BRICSを標的にする動きを鮮明にしている。南アフリカにおける対米輸出額は名目GDP比4%強、輸出全体に占める対米比率も8%弱に留まるものの、過去2年の経済成長率は1%に満たない低成長が続いており、他の新興国と比較して低調な推移をみせるなか、トランプ関税の影響は無視できないのが実情である。米国による自動車や自動車部品に対する追加関税の影響により、関連する対米輸出は大幅に減少する動きが確認されており(注4)、先行きは相互関税による影響も重なる形で景気の足かせとなることは避けられないであろう。
このように、南アフリカ経済には不透明要因が山積しているものの、4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+3.37%と3四半期連続のプラス成長となり、前期(同+0.44%)から加速するとともに11四半期ぶりの高い伸びとなるなど、足元の景気は持ち直しの動きを強めている様子が確認されている。一昨年半ば以降のインフレ率は中銀目標の域内で推移している上、昨年以降は鈍化の動きを強めるとともに、年明け以降は目標の下限を下回る伸びが続いており、実質購買力が押し上げられている。さらに、インフレ鈍化を受けて中銀は昨年後半以降に断続的な利下げを実施し、着実な金融緩和を進めていることも追い風に、耐久消費財を中心に個人消費が押し上げられる動きがみられる。また、ラマポーザ政権の政権基盤は脆弱な状況にあるものの、過去数四半期にわたって減少傾向が続いた政府消費が拡大に転じたことも、景気を押し上げている。ただし、インフレ鈍化や中銀による断続的な利下げ実施が追い風となり、民間投資に底打ちの兆しはうかがえるものの、固定資本投資全体は引き続き減少傾向で推移しており、中長期的な成長抑制要因となる懸念はくすぶる。また、トランプ関税の余波を受ける形で輸出は大きく下振れする一方、在庫投資による成長率寄与度は2四半期連続のプラスで推移するなど、在庫の積み増しが足元の景気を下支えする動きも確認できる。よって、実際の景気動向は統計上の数字ほど好調ではないと捉えられる。

分野ごとの生産動向をみると、農林漁業で拡大の動きが続いているほか、過去数四半期にわたって減少が続いた鉱業や製造業で拡大に転じるとともに、個人消費の堅調さを反映してサービス業の生産も拡大の動きを強めるなど、幅広い分野で堅調な動きが確認されている。しかし、投資活動の弱さを反映して建設業は減少傾向が続いているほか、経済活動に連動する傾向がある電力をはじめとする公益関連の生産は力強さを欠いている。こうした動きも、足元の景気実態が数字と乖離している可能性を示唆している。なお、上述したように年明け以降のインフレ率が中銀目標の下限近傍で推移するなど落ち着いている上、トランプ関税による実体経済への悪影響が懸念されるなか、中銀は7月の定例会合で追加利下げを決定しており、昨年後半以降における累計の利下げ幅は125bpとなっている(注5)。しかし、足元のインフレ率は引き続き中銀目標の域内で推移しているものの、個人消費が活発化していることも追い風となって加速に転じるなどインフレ圧力が強まる動きがみられる。先行きについては、トランプ関税の余波を受ける形で農林漁業関連や自動車産業といった特定産業を中心とする雇用環境の悪化が避けられないほか、在庫調整の動きも重なる形で景気の足かせとなるとともに、インフレ圧力を緩和させる可能性はある。とはいえ、今後の景気見通しに不透明要因が山積する展開が続くことは避けられないであろう。

このところの国際金融市場では、トランプ米政権の政策運営に対する不透明感に加え、FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ観測の高まりも追い風に、米ドル安が意識されやすい状況にある。こうした事情も影響して、南アフリカの通貨ランドの対ドル相場は、実体経済の動向にかかわらず堅調な推移をみせている。これは、昨年後半以降の中銀による断続的な利下げにもかかわらず、実質金利(政策金利-インフレ率)が歴史的高水準で推移するなど、投資妙味が相対的に高いことが影響した可能性がある。しかし、足元のインフレ率は加速に転じるなど実質金利のプラス幅の縮小が見込まれるほか、実体経済の動きも統計数字との乖離が意識されるとともに、先行きの不透明感が山積していることを勘案すれば、ランド相場は引き続き米ドル相場の動向に左右される展開が続くことに留意する必要がある。

注1 3月18日付レポート「米トランプ政権による南アへの「強硬姿勢」の裏側にあるもの」
注2 7月10日付レポート「ブラジルが突如トランプ関税の「標的」に!?」
注3 8月27日付レポート「米国、インドへの追加関税発動、トランプ関税はブラジルと同じ50%へ」
注4 7月17日付レポート「南アにトランプ関税の影響直撃、ランド相場は堅調さを維持できる?」
注5 8月1日付レポート「南ア中銀、トランプ関税警戒で追加利下げも、3年連続の低成長か」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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