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2025.08.20
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インドネシア中銀、景気支援へ2会合連続の利下げを決定
~物価とルピア相場の安定、通商合意も利下げを後押しも、今後も政策運営は外部環境がカギを握る~
西濵 徹
- 要旨
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インドネシア中銀は19~20日に開催した定例会合で政策金利を25bp引き下げて5.00%とした。これで昨年からの利下げ幅は累計で125bpに達するとともに、金利も約3年ぶりの低水準となる。足元の物価は目標域内で推移しているが、食料品価格の上昇などを受けてインフレ率はやや加速するも、コアインフレ率は鈍化している。よって、中銀にとっては一段の金融緩和に動きやすい環境にあると捉えられる。
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外部環境を巡っても、米国との通商協議を経て相互関税は当初の32%から19%に引き下げられている。そして、EUとの経済連携協定に向けた合意も着実に進展するなど、不透明感は後退している。なお、足元ではトランプ関税の本格発動を前にした輸出に駆け込みが出ており、今後は反動が懸念される状況にある。
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中銀が金融緩和を急ぐ背景には、プラボウォ政権が経済成長率の大幅な押し上げを目指していることもある。景気を巡っては、年初は財政引き締めの影響で減速したものの、4-6月の実質GDP成長率は前年比+5.12%と持ち直しており、足元のルピア相場が安定していることも、中銀の利下げを後押ししている。
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中銀は声明で、今年の経済成長率見通しが+5.1%を上回る可能性に言及した。一方、ルピア相場や物価動向に留意しつつ、景気下支えに向けて流動性供給や為替介入を継続する方針を示す。ペリー総裁は追加利下げ余地に言及する一方、米国の関税政策など不確実性への警戒を強調している。よって、今後の政策判断については、引き続き外部環境に左右される展開が続くことは避けられないであろう。
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インドネシア銀行(中銀)は、19~20日の日程で開催した定例の金融政策委員会において、政策金利である7日物リバースレポ金利を2会合連続で25bp引き下げて5.00%に決定した。これにより、昨年からの利下げ局面では5回目、累計で125bpの利下げが実施された。政策金利の水準も3年弱ぶりの水準となり、金融緩和が進められている。足元の物価動向は、プラボウォ政権が今年1~2月にかけて実施した電力料金の割引措置による一時的な下振れが一巡するも、引き続き中銀が定めるインフレ目標(2.5±1%)の域内で推移している。なお、足元では異常気象などを理由に生鮮品をはじめとする生活必需品で物価が上昇しており、インフレ率も緩やかに加速している。その一方、比較的高い伸びが続いたコアインフレ率は足元で鈍化に転じている。こうした状況を勘案すれば、中銀にとっては金融緩和に動きやすい環境にあると捉えられる。

このところの世界経済はトランプ米政権の関税政策に翻弄されてきたが、米国は同国に対する相互関税を当初32%とASEAN(東南アジア諸国連合)周辺国のなかでも比較的高水準としたが、先月にはこれを19%に引き下げることで合意している。なお、その後に周辺国も米国との協議を経て相互関税は概ね19~20%程度に引き下げられることで合意しており、税率の違いが輸出競争力に影響を与える懸念は後退している。ただし、米国との合意では、中国による迂回輸出を念頭に、第三国からインドネシアを経由して米国に輸出される財に対しては関税が上乗せされる内容が盛り込まれている模様である。よって、当初に比べて関税を巡る不透明感は後退しているものの、足元ではトランプ関税の本格発動を前に輸出に駆け込みの動きがみられることから、先行きは反動が生じる可能性がある。その一方、先月にはEU(欧州連合)との包括的経済連携協定(CEPA)締結に向けた政治合意に至り、今年9月の最終合意を予定していることが明らかにされている(注1)。よって、こうした外部環境の改善も追い風となり、中銀は先月の定例会合で昨年から始まった利下げ局面における4度目の利下げを決定した(注2)。こうした外部環境の改善も、中銀にとっては一段の利下げを後押ししたと考えられる。

中銀が金融緩和を進める背景には、プラボウォ大統領が自身の任期中に経済成長率を大幅に押し上げる公約を掲げたことと無関係ではない。なお、年明け直後はプラボウォ政権が財政健全化を目的とする歳出削減に動いた結果、公共投資の進捗が遅延するとともに、トランプ関税を巡る不透明感が設備投資意欲を後退させるなど、景気に急ブレーキが掛かった。しかし、4-6月の実質GDP成長率は前年同期比+5.12%と2四半期ぶりに5%を上回る伸びを回復しており、インフレ鈍化や中銀の断続的な利下げが個人消費を押し上げるとともに、公共投資や設備投資の進捗も景気をけん引する動きが確認されている(注3)。また、ここ数年の金融市場における米ドル高による通貨ルピア安は、中銀にとって金融緩和に二の足を踏ませる一因となってきたものの、足元ではトランプ米政権の政策運営などを理由に米ドル安が進んでおり、結果としてルピア相場は安定している。こうした事情は、中銀のペリー総裁が前回会合で追加利下げの可能性を示唆した背景となっている。今回の利下げ決定に際しても、足元のルピア相場が安定していることが中銀の判断を後押ししたと考えられる。

なお、会合後に公表された声明文では、世界経済について「米国による相互関税の発動を受けて弱含んでいる」ほか、金融市場についても「不確実性が残るなかで警戒を維持する必要がある」との認識を示している。一方、同国経済については「4-6月は想定を上回った」とした上で、通年の経済成長率見通しについても「+4.6~5.4%の中央値(+5.1%)を上回ると見込まれる」との見通しを示した。また、対外収支について「引き続き良好で改善が続いている」とした上で、通年の経常赤字のGDP比も「▲1.3~▲0.5%に抑えられる」と従来見通しを維持している。そして、足元のルピア相場について「中銀による安定化策と資金流入に支えられ、上昇基調を維持しつつ安定している」とした上で、物価動向について「低水準に留まるなかで経済の安定を下支えしている」としつつ「来年にかけて目標域で推移する」との見通しを示している。金融市場についても「流動性を拡大するとともに、信用拡大に向けてマクロプルーデンス政策を強化する必要がある」との見解を示しており、中銀は景気下支えを重視している様子がうかがえる。
また、会合後に記者会見に臨んだ中銀のペリー総裁は、足元のルピア相場の安定について「国債市場への資金流入に加え、輸出代金のルピアへの転換の動きが影響している」として、過去に実施された輸出代金の国内銀行への預け入れ義務化の効果が出ている可能性に言及した。その上で、「3市場(オフショア市場、NDF市場、スポット市場)での為替介入も継続している」と述べるなど、引き続き為替介入を行っている様子もうかがえる。そして、今回の決定について「来年にかけてインフレ率が目標域で推移するとの見通しに沿った判断」とした上で、「ルピア相場の安定が見込まれるなかで景気下支えの必要性を勘案したもの」との従来からの考えを繰り返し述べている。また、先行きの政策運営について「物価やルピア相場の安定を考慮しつつ、景気下支えを図るべくさらなる利下げ余地を探る」として、引き続き追加緩和の可能性に含みを持たせている。なお、FRB(米連邦準備制度理事会)の政策運営について「今年後半に2回の利下げを見込んでいる」としつつ、「短期的にはトランプ関税の不確実性に対する警戒を怠ることはできない」との考えをみせるとともに、「不確実性が残るなかでルピア相場の安定に注力する」との考えを強調している。上述したように、足元のルピア相場は米ドル安が意識されるなかで安定しており、こうした環境が続けば中銀はさらなる利下げを模索すると見込まれる一方、この動向に左右される展開が続くと予想される。
注1 7月16日付レポート「インドネシアが通商協議を加速、EUや米国と合意に至った模様」
注2 7月16日付レポート「インドネシア中銀、米国との通商合意を好感して再利下げ」
注3 8月5日付レポート「インドネシア、4-6月成長率は前年比+5.12%と堅調に推移」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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