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2025.07.16
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インドネシア中銀、米国との通商合意を好感して再利下げ
~ペリー総裁は追加利下げを探るも、政府と外部環境を睨んだ慎重な政策対応を迫られる局面が続く~
西濵 徹
- 要旨
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インドネシア銀行(中銀)は、16 日の定例会合で政策金利を 25bp 引き下げて 5.25%とする決定を行った。これは 2 会合ぶりの利下げであり、昨年以降で計 4 回目となる。足下のインフレ率は目標域内にある上、コアインフレ率も鈍化するなど、利下げしやすい環境が整っていることが影響している。一方、過去には米ドル高に伴うルピア安を警戒して利下げに二の足を踏む場面がみられたが、足下では米国の政策運営への不透明感が米ドル安を招くなか、ルピア相場は安定している。さらに、EU や米国との通商協議が合意に達したことが明らかになり、外需を巡る不透明感が後退したことも中銀の利下げ決定を後押ししたと見込まれる。
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声明では、世界経済の減速と不確実性を指摘しつつも、同国経済は外需を巡る不透明感の後退や政策支援も追い風に回復が見込まれるほか、資金流入がルピア相場の安定を促すとの見方を示す。その一方、物価安定に向けて中銀は為替介入を含めた安定化策を継続しつつ、景気下支えに向けて流動性の確保と金利低下を促す姿勢をみせる。同行のペリー総裁は追加利下げ余地を探る姿勢を示しているが、政府からの成長重視への圧力と外部環境の不透明さが続くと見込まれるなか、先行きも慎重な政策運営を迫られる局面が続くことは避けられないと予想される。
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インドネシア銀行(中銀)は 16日、15~16日の日程で開催した定例の金融政策委員会において、政策金利である7日物リバースレポ金利を 25bp 引き下げて 5.25%とする決定を行った。同行が利下げに踏み切るのは2会合ぶりであり、昨年以降の利下げ局面において計4回、累計100bp の利下げに動くなど金融緩和を進めている。足下のインフレ率 は、プラボウォ政権が今年1~2月を対象に実施した電力料金の割引措置を受けた一時的な下振れの動きが一巡するも、中銀が定めるインフレ目標(2.5±1%)の域内で推移しており、落ち着いた動きをみせている。さらに、コアインフレ率もインフレ目標の域内で推移するも、昨年以降は緩やかに加速する展開が続いてきたものの、足下では鈍化に転じるなど変化の兆しがうかがえる。このように、足下の物価動向は中銀 にとって景気下支えに向けた利下げに動きやすい環境にあると捉えられる。

一方、中銀は昨年以降の利下げ局面において、度々利下げに二の足を踏む動きをみせてきた。これは、ここ数年の国際金融市場では、米FRB(連邦準備制度理事会)によるタカ派姿勢を受けた米ドル高が続いたことが背景にあった。米ドル高によるルピア安の進展は、輸入物価を押し上げてインフレ圧力を増幅させることが懸念される。そうしたことから、中銀は物価が落ち着いているにもかかわらず利下げに躊躇せざるを得ない局面が続いてきた。しかし、このところは関税政策をはじめとするトランプ米政権の政策運営への不透明感に加え、トランプ氏が度々FRB人事に言及するなどその独立性が脅かされるとの警戒感が強まっている。その結果、このところの国際金融市場では一転して米ドル安圧力が強まっている。さらに、トランプ氏の言動については『TALO(暴言)』と『TACO(尻込み)』が繰り返されたことで、金融市場はその言動を理由に一時的に動揺するも、すぐにその収束を見越してリスク選好が強まる傾向がみられる。よって、ルピアの足下の対ドル相場は年初水準をうかがうなど持ち直しの動きが鮮明になるとともに、主要株式指数(ジャカルタ総合指数)も度々調整する動きがみられるも、足下においては堅調な動きが確認されている。そして、足下ではEU(欧州連合)との包括的経済連携協定(CEPA)の政治合意に加え、米国との通商協議の合意が明らかにされるなど外需を巡る不透明感が後退する兆しもみられる(注1)。こうした事情も中銀による追加利下げを後押しした可能性がある。

会合後に公表した声明文では、世界経済について「米国による関税通知を受けて不確実性が高まり、先進国を中心に景気の足かせとなるとともに、中国経済も精彩を欠く」とした上で、「今年の世界経済の成長率は3%近傍となるも、2.9%に近付く」と下振れするとの見方を示す。一方、「米国からの資金流出が続いている」とした上で、「先行きも金融市場の不確実性への柔軟な対応が必要」としつつ、同国経済について「世界経済が弱含むなかで政策支援が必要であり、個人消費にも下支えが不可欠」とするも「年後半は景気回復が見込まれ、今年の経済成長率は+4.6~5.4%」と従来見通しを据え置いている。その上で、「米国との通商合意は経済見通しの改善を促す」とともに、「金融政策は景気下支えのみならず、安定にも資する」との考えを示している。そして、「輸出の回復が見込まれるなか、経常赤字はGDP比▲1.3~▲0.5%に収まる」との従来見通しを維持するとともに、ルピア相場についても「資金流入や中銀の安定化策を受けて強含んでおり、先行きも安定が見込まれる」とした上で、今後も「3市場(オフショア市場、NDF市場、スポット市場)での為替介入を含む安定化策を継続する」との考えを示した。また、物価動向についても「今年も来年も目標域内での推移が見込まれる」とした上で、金融市場についても「流動性は潤沢だが、市中金利が高止まりするなかで金利低下を促す必要がある」との認識を示すなど、中銀は景気下支えを重視している様子がうかがえる。
さらに、会合後に記者会見に臨んだ同行のペリー総裁は、今回の決定について「インフレが鈍化するとの見通しに沿った判断」とした上で「ルピア相場の安定が見込まれるなかで景気下支えの必要性を勘案したもの」としている。その上で、先行きの政策運営について「景気下支えを図るべく、さらなる利下げ余地を探る」一方、「インフレを目標域に抑えるべくルピア相場の安定も継続する」と状況に応じて為替介入を強化する考えを示した。そして、前回会合同様に「貸付拡大と流動性管理の自由度向上により景気下支えを図りつつ、マクロプルーデンス政策の最適化を図る」との考えをみせた。また、米国との通商合意について「景気見通しに追い風となるなど歓迎している」とした上で、「詳細な影響については後々明らかになる」としつつ「追加利下げの時期と幅は国内・外の景気動向に左右される」と、慎重な政策運営を維持する可能性を示唆している。とはいえ、プラボウォ大統領は任期中に経済成長率の大幅な引き上げを目標に掲げるなか、今後は中銀に対する政府の圧力が強まることも予想されるなど、外部環境を含めて難しい判断を迫られる局面が続くであろう。
注1 7月16日付レポート「インドネシアが通商協議を加速、EUや米国と合意に至った模様」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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阿原 健一郎

