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2025.06.30
新興国経済
南アフリカ経済
為替
南ア・ランド相場に暗雲か、連立政権の一角DAが政策対話から離脱
~連立政権自体は維持も、今後の政権運営に影響を与える可能性、ランド相場の行方にも要注意~
西濵 徹
- 要旨
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- 南アフリカでは、昨年の総選挙後にANC(アフリカ民族会議)を中心に11党による大連立政権が発足し、ラマポーザ政権は3期目入りした。しかし、ANCと白人系政党DA(民主同盟)は政権発足以降度々対立するなど、政権内は不安定な展開が続く。背景には、歴史的背景や政策の違いなどがあり、教育や土地収用、予算安などで対立してきた。政治不安に加え、実体経済は低迷しているにもかかわらず、同国の通貨ランド相場は米ドル安や金価格の上昇、高金利環境などを追い風に堅調な推移をみせてきた。
- しかし、ここにきてDA出身の副貿易産業相であったホイットフィールド氏が無許可での訪米を理由に解任されたことをきっかけに、連立内の緊張関係が再燃している。DAは反発を強めるとともに、政策対話からの離脱を表明するなど、連立政権の行方に不透明感が増している。今後の連立政権の行方は政策運営とともに、ランド相場の動向にも影響を与えることが予想されるなど、当面はその動きに注意が必要と言える。
南アフリカで昨年、議会下院(国民議会)総選挙を経て、計11党による大連立によりラマポーザ政権は3期目入りを果たした(注1)。来月には大連立の発足から丸1年が経過するが、連立内では第1党で1994年の民主化から一貫して政権与党の座にあるANC(アフリカ民族会議)と、第2党のDA(民主同盟)が対立する場面が散見された。その背景には、ANCは故マンデラ元大統領の下でアパルトヘイト(人種隔離政策)の撤廃を主導するとともに、その後も政権与党として君臨し続けてきた歴史を有する一方、DAは白人系政党であるなど、その出自が大きく異なる。よって、ANCの支持者のなかには、大連立の発足を前に、DAなど白人系政党との連立に対する根強い拒否感があり、連立政権が構築される背後では、その受け皿としてANC前議長のズマ前大統領が率いる新党MK(民族の槍)や、急進左派EFF(経済的開放の闘志)が存在感を高める動きに繋がったとされる。
このように、ラマポーザ連立政権は不安な形で船出を迎えた。さらに、その後もANCが主導する学校における使用言語を定める教育関連法改正、公正かつ公平な公共の利益を目的に政府が補償なしに土地収用を可能とする土地収用法改正、予算案などを巡って、DAはその内容に反発を強める場面がみられた。その結果、ラマポーザ連立政権は同床異夢感が強いなかでの政権運営を余儀なくされた。そして、土地収用法を巡っては、米トランプ政権が批判を強めるなど外圧にも晒される展開が続いた(注2)。また、過去2年の経済成長率は1%に満たない水準に留まるなど、新興国のなかでも勢いに乏しい。このように国内外に不安要因が山積し、実体経済も力強さを欠くにもかかわらず、国際金融市場において同国通貨ランドは堅調な推移をみせてきた。なお、ランド相場が堅調な動きをみせた背景には、米トランプ政権の政策運営を巡る不透明感を理由に米ドル安の動きが進んでいることに加え、同国は長らく世界有数の金産出国であった名残として、このところの金価格の上振れや高止まりしていることが影響している可能性が考えられる。さらに、足元のインフレはSARB(中銀)が定める目標域を下回るなど落ち着いた推移をみせる一方、SARBは慎重な政策運営を続けており、結果的に実質金利(政策金利-インフレ)は歴史的高水準となるなど、投資妙味が高いこともランド相場を下支えしていると考えられる。


もっとも、これまでランド相場は実体経済や政治動向に関係なく堅調な動きをみせてきたものの、先行きは一転して不透明感が増す懸念が高まっている。きっかけは、DA出身で副貿易産業相であったホイットフィールド氏が突如解任されたことに始まる。ラマポーザ氏は同氏の解任理由について、同氏が無許可で訪米したことを挙げているが、同国では過去にも2007年のムベキ政権時に閣僚が無許可での海外出張を理由に解任されたことがある。しかし、当時はANC単独政権ゆえに問題とならなかったものの、今回は連立政権であり、かつ、その対象がDA出身であるため、後任人事の行方は閣内における政党間力学に影響を与えることが懸念される。今回の決定に対してDAは強く反発するとともに、ANC出身閣僚の間で汚職容疑が高まっていることへの徹底調査を要求している。さらに、DAは連立を維持する一方、ANCが主導する政策対話からの離脱を表明するなど、政権発足までまもなく1年を迎える前に政権運営の雲行きが怪しくなりつつある。連立政権の行方を巡っては、ホイットフィールド氏の後任人事の動向がカギを握るとみられるものの、仮にANCとDAとの対立が先鋭化すれば政権基盤が急速に厳しさを増すとともに、政策運営に対する不透明感がランド相場に悪影響を与える可能性もある。これまで堅調な動きをみせてきた南ア・ランド相場の行方に注意を払う必要性が高まっている。
注1 2024年7月2日付レポート「ラマポーザ政権が閣僚名簿発表、「同床異夢」で南アランドはどうなる?」
注2 3月18日付レポート「米トランプ政権による南アへの「強硬姿勢」の裏側にあるもの」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

