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2025.06.27
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メキシコ中銀、4会合連続の大幅利下げも、今後は利下げ幅縮小か
~米ドル安が利下げを後押しの一方、インフレ再燃リスクもくすぶるなかで今後は慎重な対応が必要に~
西濵 徹
- 要旨
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- メキシコ中銀は、26日の定例会合で政策金利を4会合連続で50bp引き下げ8.00%とする決定を行った。昨年来の累計の利下げ幅は325bpに達し、政策金利も約3年ぶりの低水準となる。背景には、同国経済は米国への依存度が強いなかでトランプ関税による実体経済への悪影響が懸念されるなか、年明け以降のインフレ鈍化を受けて、金融緩和余地が拡大していることが挙げられる。
- ただし、声明文では賛成4対反対1と票が割れ、ヒース副総裁がインフレ再加速リスクを理由に慎重姿勢を取っていることが明らかにされた。先行きの物価について上下双方に振れるリスクを挙げる一方、中銀は将来的な利下げ継続の可能性を示唆している。ただし、調整幅を巡って今回は「同程度」としてきた文言を削除しており、先行きについては利下げ幅を縮小させる可能性は高まっていると判断できる。
- 足元では実質金利のプラス幅が縮小するなど投資妙味が低下しているほか、司法制度の変化などが中長期的な金融政策に影響を与える可能性はある。他方、足元のペソ相場は金融市場における米ドル安が下支え役となるなか、今後の政策運営は米ドル相場を睨みつつ慎重な対応が求められることになろう。
メキシコ中央銀行は、26日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利を4会合連続で50bp引き下げて8.00%とする決定を行った。同行は昨年3月にコロナ禍一巡後初の利下げに動くとともに、その後も小休止を交えつつ、今回の決定により累計の利下げ幅は325bpとなり、政策金利の水準も約3年ぶりとなるなど金融緩和が着実に進められている。この背景には、同国の財輸出の約8割は米国向けである上、GDPに対して4%弱に及ぶ移民送金の大部分も米国からの流入が占めるなど、米国経済への依存度が極めて高く、いわゆる『トランプ関税』による景気への悪影響が懸念される状況にある。こうしたなか、ここ数年の同国はインフレが高止まりする展開が続いてきたものの、商品市況の一服なども追い風となり、年明け以降のインフレは中銀目標(3±1%)の域内に収束するなど落ち着きを取り戻す動きが確認されてきた。さらに、年明け以降の国際金融市場では、米トランプ政権の政策運営を巡る不透明感を理由に米ドル安が進んでおり、昨年は調整局面が続いたペソ相場が一転して底打ちする動きもみられる。よって、中銀にとっては金融緩和による景気下支えに動きやすい展開が続いてきたと捉えられる。

会合後に公表された声明文では、今回の決定は「4(50bpの利下げ)対1(据え置き)」と票が割れており、ヒース副総裁が反対票(据え置き)を投じたことが明らかにされた。上述のように年明け以降のインフレは中銀目標の域内に収まるなど落ち着きを取り戻したものの、足元では再び加速に転じ、直近5月は前年同月比+4.42%と5ヶ月ぶりに目標域を上回る伸びとなり、コアインフレ率も同+4.06%とわずかながら目標域を上回る伸びとなっている。さらに、今月上旬時点におけるインフレ率も前年比+4.51%、コアインフレ率も同+4.20%とともに目標域を上回る伸びとなるなど、インフレ再燃の兆しが高まっている。よって、ヒース氏は今月上旬のインタビュー記事において、先行きの金融政策を巡ってより慎重なアプローチが必要になるとの認識を示していた。他方、声明文は今回の決定について「ペソ相場の動向、景気低迷、世界的な通商政策の変更による影響の可能性を考慮した」としている。ただし、足元の物価動向を反映して「2025年末時点のインフレ予測を上方修正する」一方で、「2026年7-9月に目標域に収束する」との従来見通しを維持している。その上で、物価を巡る上振れリスクに「①ペソ安、②地政学リスクや世界貿易の混乱、③コアインフレの粘着度、④コストプッシュ圧力、⑤気候変動の影響」を、下振れリスクに「①景気下振れ、②価格転嫁の弱さ、③ペソ高による輸入物価の下振れ」を挙げている。その上で、先行きの政策運営について「さらなる調整を検討する」とする一方、『同程度』とした文言が削除されており、利下げ幅を縮小させる可能性は高まっている。中銀が先行きの利下げ幅縮小を示唆している背景には、これまで投資妙味の高さを通じたペソ相場を支える一因となってきた実質金利(政策金利-インフレ)のプラス幅が急速に低下していることがある。インフレ再加速により先行きはプラス幅のさらなる縮小が見込まれるなか、緩和ペースの変更が必要と判断したとみられる。


年明け以降のペソ相場を巡っては、米トランプ政権の政策運営を巡る不透明感を理由に米ドル安が進んだことを反映して底入れの動きを強めてきた。このところは中東情勢に対する懸念が米ドル高を招く局面がみられたものの、収束への期待が高まるとともに米ドル安が再燃しており、ペソ相場は結果的に底堅い動きをみせている。なお、メキシコでは今月1日に裁判官に対する国民投票が実施され、なかでも連邦最高裁判事では政権寄りの判事が多数派を占めるなど、三権分立によるチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)の関係は事実上消滅する事態となっている(注1)。こうした同国の政治情勢の一方、金融市場では米トランプ政権の下でFRB(連邦準備制度理事会)の独立性に対する懸念を理由に、米ドル安が意識されやすい展開が見込まれるなか、ペソ相場は底堅い動きが続く可能性が高まっている。その結果、ペソは日本円に対しても底堅い動きが続くと見込まれる。

注1 6月5日付レポート「メキシコ裁判官選挙、司法も与党支配で三権分立はいよいよ崩壊へ」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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