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2025.05.28
金融市場
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株価
資産形成・資産運用
つみたて型投信のパフォーマンス
~高値で全世界株投資を始めても、つみたて型ではすでに含み益の可能性~
嶌峰 義清
- 要旨
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新NISAの登場により、日本の投資人口はさらに拡大した。なかでもつみたてNISAは投資未経験者の割合が9割近くを占めている。
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トランプ関税により世界の株式市場は不安定化したが、一時の混乱は一旦収束したこともあり、新NISAで運用を始めた人の運用パフォーマンスも好転している。特につみたて型運用のケースでは、最高値時点から運用を始めたとしても、含み益に転じている可能性がある。
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トランプ関税についての最終結論は見えておらず、株式市場の不安定な局面はしばらく続くと見込まれるものの、つみたて型による長期運用を目指す人は、一喜一憂しないことが必要だろう。
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新NISAで投資未経験者の積立投資増える
2024年にリニューアルした新NISAにより、2024年のNISA枠での有価証券買付額は前年の約3.3倍もの急増となった。また、銀行なども含む全金融機関で開設されたNISA口座は436万口座の増加(計2,560万口座)と、年間の増加数としては過去最大となった(図表1)。これは、長らく続いたデフレによる低金利や公的年金に対する不安などを背景に、個人による資産運用の必要性が高まっている中で、賃金の上昇や市況の好転とNISA制度の改正がマッチした結果といえよう。
NISA制度を利用した投資の特徴として、同制度が創設されたことで初めて資産運用を行った人の割合が高いことが挙げられる。旧NISA制度であった2023年末における投資未経験者(2013年4月以降に証券総合口座を開いた人)の割合は(全証券会社ベース)、当時の一般NISAで51.6%、つみたてNISAでは89.3%にのぼる(図表2)。

株式相場の持ち直しで、2024年来の運用パフォーマンスは改善
このようにNISAは多くの投資初心者に道を開いた。一方で、この間の運用環境に目を転じると、今年4月にはトランプ米大統領による一方的な相互関税の発表を機に、株式市場は世界的に混乱するなど、不安定な展開に陥った。この展開には、多くの投資家が気をもんだと推察される。
そこで、新NISA制度が開始された2024年1月以降の株価について、NISAでの人気が高い全世界株(オール・カントリー)投信の指針の一つとなるMSCI全世界株指数の推移を見ると(図表3)、トランプ大統領が中国やカナダ、メキシコに対して関税をかけることを表明したあたりから軟調に推移し、4月2日の相互関税発表で急落した。しかし、その後は持ち直しに転じ、足元では年初来高値水準に近づいており、直近(5月27日時点)での2024年初以降の上昇率は+21.2%に達している。
ただし、同指数はドル建てであるため、日本から投資する場合のパフォーマンスを見るには円建てに換算する必要がある。同期間のドル円相場は、1ドル=140.87円から同144.27円へと円安となっているため、円建てでの上昇率は+22.6%とドル建てを上回る結果となった。これが、2024年初に同指数に一括投資した場合の円建てでの運用益ということになる。一方、投資未経験者が大半を占めている積立運用の場合のパフォーマンスを円建てで見ると(2024年1月から毎月一定額MSCI全世界株を購入したと仮定)、こちらも+4.4%の運用益が出ている(図表4)1。
この結果を見ると、相場は一時大きく崩れる局面が見られたものの、新NISA開始時にMSCI世界株指数に一括で投資した人の方が、つみたてNISAで投資した人よりも高いパフォーマンスを得られていることになる。

最高値から運用を始めてしまっても、積立運用ならすでに含み益の可能性
しかし、投資を始めたタイミングがたまたま悪いタイミング、たとえば同指数が高値をつけたとき(2025年2月18日)であった場合、直近での円建てでの損益は一括投資では▲5.8%と、含み損となっている。
これに対し、つみたて型(高値時を起点とし、翌月以降は月初に同額ずつ投資するケースを想定)の場合は円建てで+0.7%の運用益が出ている(図表5)。

このように、相場が不安定な局面においても、時間の分散運用ともいえる積立運用では好結果を残している。ただし、3月から4月上旬にかけての下落局面においては含み損が拡大しており、含み益に転じるまでは数ヶ月かかっている。この間に慌てて売却していれば、運用して資産を減らす結果となっていた。
過去を振り返れば、下落相場はいつまでも続くわけではなく、反転して上昇に転じる局面も出てくる。つみたて型の投資の場合、相場が下落している局面では平均買付単価が下がるため、保有資産が含み益に転じる水準(損益分岐点)も徐々に低下する。そのため、相場が反転して上昇に転じる局面では、一括購入した場合よりも早く含み益に転じることが可能となる。
トランプ関税相場の混乱はまだ終わったとは言えないが、一喜一憂しないことも重要
先行きに目を転じると、トランプ関税とその景気への影響がどうなるのかはまだ判明していない。関税交渉を終えたのは英国だけで、中国との関税引き下げについても撤廃した115%の報復分を除けば最終的な結論が出るのは8月だ。目下、EUや日本との交渉が続いているが、米国から見て巨額の貿易赤字を抱えているEUや日本は、貿易黒字対象である英国と同様に関税を10%まで下げられれば“御の字”かもしれない。また、EUの場合は、結果次第ではEU側が報復措置に講じる可能性もあり、米国との間で新たな報復合戦が始まるリスクもゼロではない(弊社レポート「トランプ大統領のEUに対する一の矢 ~50%への関税引き上げを示唆~ 田中主席エコノミスト」をご参照)。
しかし、長期の視点から見れば、世界の経済活動がこのまま長期間にわたって落ち込み、株価が下落し続けるとは考えにくい。特に積立運用の場合は下落局面で多くの投資を行うことになるため、評価損を限定的なものにとどめ、安定して利益を増やす長期投資に向いている(図表6)。

つみたてNISAなどで積立運用をしている投資家の大半は、数年から数十年以上の長期投資による資産形成を目標としていると考えられるが、そうであればこそ短期的な下落などに一喜一憂しないことが重要だといえよう。
1 ここでの結果はMSCI世界株指数の騰落に基づくもので、すべての世界株投信が同じパフォーマンスとなっているわけではない。また、実際の投資パフォーマンスには運用手数料などの経費を考慮すべきだが、ここではそういったコストは考慮していない。投資信託の実際の収益については、購入した投信の基準価額を確認する必要がある。
嶌峰 義清
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

