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2025.01.30
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ブラジル中銀、ガリポロ体制下の初会合も大幅利上げで「タカ派」堅持
~次回会合でも同程度(100bp)の利上げに含み、タカ派堅持の一方でレアル相場には不安要因が残る~
西濵 徹
- 要旨
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- ブラジル中銀は28~29日の定例会合で4会合連続の利上げを決定した。利上げ幅は2会合連続で100bpと大幅となり、政策金利は13.25%と1年5ヶ月ぶりの水準となる。中銀の金融引き締めや商品高の一巡を受けて、一時18年ぶりの水準に高進したインフレは頭打ちし、中銀は一昨年以降利下げに動いてきた。しかし、利下げによる景気回復や異常気象を受けて昨年後半以降のインフレは再び加速し、足下では中銀目標を上回る推移が続く。さらに、ルラ政権の財政運営への懸念が折からの米ドル高も相俟ってレアル相場の調整を加速させるなど、輸入インフレ懸念もくすぶる。こうしたなかで今月総裁に就任したガリポロ氏もタカ派姿勢を強めており、次回会合でも同程度(100bp)の利上げに含みを持たせる考えをみせる。足下のレアル相場は米ドル高の一服を受けて底打ちしており、実質金利の高さも投資妙味に繋がる一方、ルラ政権の財政運営に対する不透明感がくすぶることを勘案すれば、当面は一進一退の展開をみせる可能性がある。
ブラジル中央銀行は、28~29日に開催した定例の金融政策委員会(COPOM)において、4会合連続の利上げに加え、2会合連続で100bpという大幅利上げを実施して、政策金利(Selic)を13.25%と1年5ヶ月ぶりの水準とする決定を行った。同国においては、コロナ禍一巡による経済活動の正常化、商品高、通貨レアル安による輸入インフレ、異常気象の頻発による火力発電の再稼働などの要因が重なり、2022年半ばにインフレ率が一時18年ぶりの高水準となる事態に直面した。しかし、その後は商品高の一巡のほか、中銀が物価と為替の安定を目的に累計1175bpもの利上げを実施し、実質金利のプラス幅拡大という投資妙味の向上を追い風とするレアル相場の安定を受け、インフレは頭打ちに転じた。そして、物価高と金利高の共存による景気頭打ちの動きも追い風にインフレは頭打ちの動きを強めたため、中銀は一昨年以降に一転して利下げに舵を切ったものの、インフレの再燃が警戒される懸念がくすぶり、累計の利下げ幅は325bpに留めた。これは、コロナ禍を経て悪化した財政状況は右派のボルソナロ前政権の下で改善したが、一昨年に発足した左派のルラ政権の下ではそのバラ撒き志向も影響して再び悪化している上、ルラ氏が中銀に利下げを求めて『圧力』を掛けるなど、その独立性に対する懸念が高まり、レアル相場が調整局面に転じていることも影響している。事実、中銀はレアル相場の急変動を抑えるべく為替介入を迫られるとともに、昨年以降は大洪水をはじめとする異常気象が頻発して食料品など生活必需品で物価が上昇しているほか、利下げによる景気回復を受けた雇用改善の動きもインフレ圧力を増幅させている。結果、足下のインフレ率は中銀が定めるインフレ目標(3±1.5%)の上限を上回る推移が続いているほか、コアインフレ率も加速に転じて中央値を上回る伸びをみせている。ブラジル中銀は伝統的に『タカ派』色が強く、インフレ率が目標の中央を上回る伸びとなれば金融引き締めに舵を切る傾向がある上、昨年以降の国際金融市場においては上述のようにレアル相場に調整圧力が掛かりやすい局面にあるほか、米ドル高が意識される環境にあることも、中銀がタカ派姿勢を強めることに繋がっている。さらに、昨年末にかけては米大統領選でのトランプ氏勝利を受けて米ドル高の動きが加速するとともに、レアルの対ドル相場は過去最安値を更新する事態に直面した。足下においては米ドル高の動きに一服感が出ていることを受けて、レアル相場は底打ちに転じる動きをみせている。なお、ルラ政権は金融市場が抱く財政運営への懸念に対応すべく、歳出削減に動く方針を示したものの、同時に公表した所得税改正案で課税最低限の大幅引き上げを定めており、財政規則法(歳出の伸びを歳入の伸びの7割以下、その範囲もインフレ率+0.6~2.5%に留めるほか、目標達成不能な場合は歳出の伸びを歳入の伸びの5割に制限すると規定)に抵触する懸念も高まっている(注1)。今月1日に中銀総裁に就任したガリポロ氏を巡っては、ルラ大統領に近いことを理由に当初はハト派姿勢に傾くことが意識されたものの、先月に行った講演でタカ派姿勢を堅持する考えを示したため(注2)、今回の利上げ実施は想定内であったと捉えられる。会合後に公表した声明文では、今回の決定が「全会一致」であるとともに、足下の経済状況について「国内経済は力強く推移しており、物価も上昇基調を強めている」との認識を示した上で「財政運営が金融政策や金融市場に与える影響を注視している」としている。その上で、先行きのインフレ見通しについて「今年は+5.2%」と従来予想(+4.0%)から大幅に引き上げるとともに、インフレ目標を大きく上回る水準としている。そして、金融政策について「インフレ期待の大幅な上昇や実体経済や労働市場の堅調さを勘案すれば、より引き締め姿勢の強い政策が必要になる」としたほか、「次回会合では同程度(100bp)の利上げを見込むとともに、引き締めサイクルの規模はインフレ目標実現に向けた確固たる意志により決定される」と、次回会合での大幅利上げに含みを持たせる考えをみせた。上述したように、足下のレアル相場は米ドル高の動きに一服感が出ていることが底入れの動きを促しているほか、実質金利(政策金利-インフレ率)のプラス幅の大きさは投資妙味に繋がるとみられる一方、ルラ政権の政策運営に対する不透明さがレアル相場の足かせとなる懸念はくすぶるなど一進一退の展開が続くと見込まれる。


注1 2024年11月29日付レポート「金融市場はブラジルの税制改正に「失望」、レアル相場は最安値更新」
注2 2024年12月3日付レポート「ブラジル中銀・ガリポロ次期総裁、タカ派堅持示唆もレアル相場は」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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