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2024.09.20
新興国経済
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南アフリカ経済
為替
南ア準備銀がコロナ禍後初の利下げ、ランド相場はどうなる?
~米ドル安と金価格上昇でランド相場は堅調も、政局の動きには引き続き要注意~
西濵 徹
- 要旨
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- 南ア準備銀行は19日の定例会合で政策金利を25bp引き下げて8.00%とする決定を行った。同行の利下げはコロナ禍後初であり、利下げそのものも4年強ぶりである。ここ数年の南アではインフレが上振れするも一昨年半ばを境に頭打ちに転じたほか、足下では頭打ちの動きを強めている。ランド相場も米FRBの利下げを受けた米ドル安に加え、金価格の高止まりも追い風に底入れしており、足下のインフレ鈍化を促している。景気も計画停電の回避を受けて底入れしており、先行きもインフレ鈍化や今月からの年金基金の一部引き出しも追い風になると期待される。中銀は今回の決定について物価安定が見込む一方、抑制的なスタンスを維持した旨を明らかにしつつ漸進的な利下げを志向している模様である。ただし、足下では政局の混乱が懸念される動きが出ており、その行方がランド相場に影響する可能性に留意する必要がある。
南アフリカ準備銀行(中銀)は19日、定例の金融政策委員会において政策金利(レポ金利)を25bp引き下げて8.00%とする決定を行った。同行による利下げ実施はコロナ禍以降で初めてであり、利下げそのものも2020年7月以来で4年強ぶりのこととなる。ここ数年の南ア経済は、コロナ禍一巡による経済活動の正常化に加え、商品高や国際金融市場における米ドル高を受けた通貨ランド安による輸入インフレも重なる形でインフレ昂進に直面してきた。インフレは一昨年半ばに一時13年強ぶりの水準に達したものの、中銀は物価と為替の安定を目的に累計325bpの利上げに動くとともに、商品高の動きが一巡したことも重なり、その後は頭打ちに転じた。昨年以降のインフレは中銀目標(3~6%)の範囲内で推移するとともに、年明け以降は頭打ちの動きを強めており、直近8月のインフレ率は前年比+4.4%、コアインフレ率も同+4.1%と下振れしている様子が確認されている。さらに、ここ数年の通貨ランド相場は米ドル高の余波を受ける形で調整の動きを強める展開が続いてきたほか、今年5月に実施された議会下院(国民議会)総選挙でラマポーザ政権を支えるANC(アフリカ民族会議)の獲得議席数が初めて半数を下回る惨敗を喫したことで混乱が懸念された。その後の政党間協議を経て、ANCを中心に国際金融市場が最も期待した親欧米色の強い白人政党で第2党のDA(民主同盟)、黒人のズールー族から支持を集める保守系民族政党のIFP(インカタ自由党)、カラード(混血)系国民から支持を集める保守政党のPA(愛国同盟)による大連立を形成してラマポーザ政権は3期目入りを果たした。なお、ANCとDAを巡っては経済政策や外交政策などに隔たりがあるなど『同床異夢』感が極めて強く、如何なる政策運営がなされるかが注目される展開が続いている。他方、国際金融市場においては米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げを織り込む形で米ドル安の動きが進んでおり、多くの新興国通貨にとっては底入れが促されやすい環境となっていることに加え、ランド相場を巡っては足下の金価格が最高値を更新するなど堅調な推移をみせていることも追い風に底入れの動きを強めており、こうした動きもインフレ鈍化を促す一助となっている。他方、ここ数年の南ア経済では慢性的な電力不足が幅広い経済活動の足かせとなってきたが、今年は3月下旬から半年近く計画停電が行われておらず、国営電力公社(ESKOM)も向こう半年程度は計画停電が回避可能との見方を示すなど電力需給を巡る状況は最悪期を過ぎつつある模様である。こうした状況も追い風に、4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+1.78%と景気の底打ちが確認されており、インフレ鈍化による実質購買力の押し上げに加え、今月からは年金制度改革に伴い退職前に基金の一部を引き出すことが可能になるなど、家計消費の底入れに繋がることが期待されている。ただし、計画停電の実施は免れるも引き続き計画せざる停電は頻発しており、港湾や鉄道貨物など運輸インフレは停滞が続くなど経済活動の足かせとなる懸念はくすぶるほか、外需を取り巻く環境にも不透明感がくすぶる。よって、中銀が会合後に公表した声明文では、同国経済について「電力需給の改善を受けて見通しは上方修正するが、投資の低迷が足かせとなる形で潜在成長率を下回る伸びに留まる」とした上で、物価動向について「短期的には一段の鈍化が見込まれるほか、2026年まで中銀目標の中央値(4.5%)以下に留まると示唆される」との見通しを示している。その上で、景気と物価に対するリスクは上下双方にバランスしているとした上で、今回の決定について「25bpの利下げと50bpの利下げを検討した」としつつ、「より抑制的なスタンスがインフレの持続的な低下に資する」として25bpの利下げを決定したとしている。そして、先行きの政策運営について「来年には中立金利に向かって7%をやや上回る水準で安定する」と漸進的な利下げを見込む一方、「インフレ期待を固定しつつ、物価の低位安定の実現と景気回復の下支えを目指す」との考えを示している。ただし、足下では政局の混乱が懸念される動きが顕在化しており(注1)、当面はこの行方がランド相場、ひいては物価動向に影響を与える可能性に留意する必要があると捉えられる。


注1 9月17日付レポート「南ア・ランドは景気に関係なく強含むも、政局混乱の兆しに要注意」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

