インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

インドネシア中銀、2回連続で据え置きも利下げを諦めてない模様

~ペリー総裁は米トランプ次期政権の政策運営を注視し、リンギ相場の動向に応じて対応の模様~

西濵 徹

要旨
  • インドネシア中銀は20日に開催した定例会合で政策金利を2会合連続で据え置く決定を行った。昨年来のインフレは中銀目標域内で推移するも、年明け以降も中銀は通貨リンギ安を警戒して慎重姿勢を維持し、通貨防衛を目的とする利上げを余儀なくされる難しい対応を迫られた。他方、米FRBの利下げを受けた米ドル安によるリンギ相場の底入れを受け、中銀は9月にコロナ禍後初の利下げに動いた。しかし、その後は米ドル高が再燃したことで利下げ局面入りを一転させており、今回も米ドル高がくすぶるなかで慎重姿勢を維持したとみられる。同行のペリー総裁は、米トランプ次期政権による経済、政治運営の影響を注視しつつ、将来的な追加利下げ余地を模索する考えを示すなど、利下げを諦めていない様子がうかがえる。ただし、現状はルピア相場の安定を重視せざるを得ないとの考えを再三に亘って説明しており、先行きについてもインドネシアの金融政策の動向は外部環境に縛られる展開が続くことは避けられないであろう。

インドネシア銀行(中銀)は、20日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利である7日物リバースレポ金利を2会合連続で6.00%に据え置く決定を行った。足下のインドネシア経済を巡っては、7-9月の実質GDP成長率が前年同期比+4.95%と前期(同+5.05%)から鈍化して4四半期ぶりに5%を下回る伸びとなったほか、当研究所が試算した季節調整値に基づく前期比年率ベースの成長率も伸びが鈍化しており、底入れの動きが続くもその勢いに陰りが出ている様子がうかがえる(注1)。他方、ここ数年のインドネシアでは、コロナ禍一巡による経済活動の正常化や商品高に加え、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨ルピア安に伴う輸入インフレの動きも重なる形で物価上昇に直面してきた。よって、中銀は物価と為替の安定を目的とする利上げに動いたほか、商品高の動きが一巡したことも重なり、一昨年後半にインフレは一時7年ぶりの水準に昂進するも、その後は頭打ちの動きを強めている。さらに、昨年半ば以降のインフレは中銀目標の域内で推移する展開をみせているものの、中銀は年明け以降もルピア安による輸入インフレを警戒した『通貨防衛』を目的とする利上げに動くなど難しい対応を迫られた。なお、その後は米FRB(連邦準備制度理事会)の利下げ観測を受けて米ドル安の動きが進行し、調整局面が続いたルピア相場を巡る状況が一変したため、中銀は9月の定例会合でコロナ禍後初の利下げに動くとともに、同行のペリー総裁も景気下支えに向けて追加利下げに含みを持たせるなど『ハト派』姿勢を強める動きをみせた(注2)。しかし、その後は米国経済の堅調さが確認されるとともに、米ドル高の動きが再燃してルピア相場を巡る状況が一変したため、中銀は10月の前回会合で金利を据え置くなど早くも利下げ局面入りを一転休止させた(注3)。そして、その後も米大統領選でのトランプ氏勝利を受けて米ドル高圧力が強まり、ルピア相場は頭打ちの動きを強めるとともに、先行きも調整の動きが一段と進む懸念がくすぶっている。こうした事態も中銀が一段の利下げに二の足を踏む一因になっているとみられる。会合後に公表した声明文では、世界経済について「前回会合以降の動向が激変し、地政学リスクや貿易の分断などによるリスクが高まり、米国の拡張的な財政政策や内向き志向が世界の物価動向に影響を与えるほか、米FRBの利下げ幅の縮小を招き、新興国への資金流入にも影響を与える」との見方を示している。他方、同国経済について「良好であり、今年の経済成長率は+4.7~5.5%になり、来年は改善が見込まれる」とした上で、「今年通年の経常赤字はGDP比▲0.9~▲0.1%になり、来年も改善が見込まれる」と今年について従来見通しを据え置いている。そして、物価動向についても「目標域内で推移しており、来年にかけても目標域に収めるべく努力する」とする一方、ルピア相場を巡って「足下の調整の動きは米大統領選後の米国への資本逃避に伴う広範な米ドル高の動きを反映したもの」としつつ「為替は依然管理可能であり、周辺国に比べて調整幅は小さく、ルピアの安定に向けてすべての政策手段は最適化される」との見方を示している。なお、会合後に記者会見に臨んだ同行のペリー総裁は、今回の決定について「今年と来年の物価を目標域に収めるとのスタンスに合致したもの」との考えを示した上で、「金融政策の焦点はルピアの安定と高まる地政学上の不確実性に当てている」としつつ「ルピア相場の動向やインフレ見通しを注視しつつ、追加的な利下げ余地を探る」と述べるなど、利下げを諦めていない様子がうかがえる。その上で、「米国のトランプ次期政権の経済、及び政治政策を注視している」とした上で、「トランプ次期政権による追加関税は来年後半に具現化し、それに伴う世界貿易の分断の動きは関係国の景気の重石になるとともに、世界経済の足かせになる」との見通しを示している。その一方、「米国のインフレ鈍化により米FRBには利下げ余地があり、12月に25bpの利下げを行い、現状は来年も2回(各25bp)の利下げを行うと見込んでいる」としつつ、「米国の財政赤字拡大を受けて利回りの上昇が期待される」との見方を示すなど、政策運営を巡る不透明要因となることは避けられない。政策運営について「物価や景気動向に鑑みれば利下げ余地はあるが、現時点ではルピア相場の安定を重視している」、「以前に比べて追加利下げ余地は縮小している」、「政策スタンスは依然として安定と成長を重視したものだが、現状はルピア相場の安定を重視している」と再三に亘って述べるなど、今後もインドネシア中銀の政策運営は外部環境に縛られる展開が続くであろう。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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