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2024.10.16
アジア経済
アジア金融政策
インドネシア経済
為替
インドネシア中銀、ルピア相場を巡る環境変化を受けて利下げ休止
~金融市場の動揺拡大で早くも利下げ局面休止、先行きも外部環境次第の展開が続くであろう~
西濵 徹
- 要旨
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- インドネシア中銀は16日の定例会合で政策金利を2会合ぶりに据え置く決定を行った。同行は先月の定例会合でコロナ禍後初の利下げに動き、先行きの追加利下げに含みを持たせる考えをみせた。足下のインフレは落ち着いた推移が続く一方、国際金融市場では米ドル安の動きが一巡しており、中東情勢の悪化やプラボウォ次期政権の財政運営を巡る不透明感を理由に通貨ルピア相場が頭打ちの動きを強めた。よって、中銀は追加利下げを巡るシナリオの変更を余儀なくされたと捉えられる。なお、先行きの政策運営について同行のペリー総裁は「安定と成長を重視する」としつつ、「ペースと度合いはデータ次第」と慎重姿勢をみせる。景気下支えに向けた流動性供給策に動く考えを明らかにした上で、政策運営を巡って政府と協調しつつ、その判断は独立して行うとの姿勢をみせており、当面は外部環境次第の展開が続くと予想される。
インドネシア中銀は16日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利である7日物リバースレポ金利を2会合ぶりに6.00%に据え置く決定を行った。同行は先月の定例会合において、コロナ禍以降で初めて、かつ3年半強ぶりとなる利下げに舵を切るなど、ここ数年の物価と為替の安定を目的とする利上げ局面は一周した格好である(注1)。なお、インフレ率はコロナ禍一巡による経済活動の正常化に加え、商品高や国際金融市場における米ドル高を受けた通貨ルピア安も重なり、一昨年後半に一時7年ぶりの高水準となる事態に直面した。ただし、中銀の断続利上げに加え、商品高の動きも一巡したことも重なる形でその後は頭打ちに転じるとともに、昨年後半以降は中銀目標域で推移するなど落ち着きを取り戻す動きをみせてきた。こうした状況ながら、その後も国際金融市場においては米ドル高圧力がくすぶるとともに、ルピア相場は調整の動きを強めて輸入インフレが警戒される展開をみせたため、中銀は通貨防衛と目的とする追加利上げのみならず、金融引き締め姿勢を維持せざるを得ない状況が続いてきた。他方、このところの国際金融市場では米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げ実施を追い風に米ドル安の動きが強まり、長きに亘って調整局面が続いたルピア相場も一転して底入れの動きを強めるなど輸入インフレに対する懸念が後退したため、中銀の先月の定例会合における利下げ実施を後押ししたと捉えられる。なお、米ドル安の動きを追い風にルピアの対ドル相場は先月末から今月初めにかけて1年強ぶりとなる水準に底入れする動きを強めたものの、その後は米国経済の堅調さが確認されるとともに、米FRBが一段の大幅利下げに動くとの観測が後退していることに加え、中東情勢を巡る不透明感が一層増すなかで国際原油価格は底入れの動きを強めており、原油の純輸入国であるインドネシアにとっては対外収支の悪化と物価上昇を招くとの懸念が高まり、ルピア相場は一転して頭打ちの動きを強める状況に直面した。また、このところのルピア相場を巡っては、今月20日に発足するプラボウォ次期政権の財政運営に対する不透明感がくすぶっていることも影響を与えている可能性もある(注2)。よって、中銀は先月の定例会合での利下げ決定に際して追加利下げに含みを持たせる考えをみせたものの、その後のルピア相場を取り巻く環境変化を受けてシナリオの見直しを余儀なくされたと捉えられる。会合後に公表した声明文では、国際金融市場を巡って「主要国における金融政策の動向や中東情勢を巡る地政学リスクの高まりを受けて不確実性が再燃している」との認識を示している。他方、同国経済については「堅調な推移をみせており、内需をけん引役にした拡大が見込まれる」として「今年の経済成長率は+4.7~5.5%」、対外収支についても「健全な推移が続いて安定さも維持されている」として「今年の経常赤字はGDP比▲0.9~▲0.1%」とともに従来見通しを維持している。他方、ルピア相場については「中銀による政策的なコミットメントを反映して安定が図られたが、地政学リスクを受けた金融市場の動揺の余波を受けた」としつつ、「フィリピンペソや台湾ドル、韓国ウォンに比べて小幅な調整に留まった」との認識を示すとともに「先行きは安定を見込んでおり、政策対応を強化する」との考えを示す。そして、物価動向については「目標域内での推移が見込まれる」との見方を示している。なお、会合後に記者会見に臨んだ同行のペリー総裁は、米FRBの政策運営について「年内に2回、来年には3~4回のいずれも25bpの利下げを見込む」との見方を示すとともに、「米FRBによる利下げの動向や中東を巡る地政学リスクに注意を払う必要がある」との認識を示している。他方、政策運営について「安定と成長を重視する上で何も変わっておらず、追加利下げのタイミングと度合いについてはデータ次第」としつつ、「ルピア相場が強含みしつつ安定するとの見方を信じている」との認識を示している。その上で、新たな政策対応として「来年1月から流動性供給を巡るインセンティブ付与に動く」とした上で「農業や製造業、貿易など雇用拡大に資する分野を対象に信用拡大を促す方針を示す」としている。そして、「政府と協調しつつ、政策運営を巡っては独立した判断を下す」と述べるなど、市場が警戒する中銀の独立性をあくまで重視する考えを示した格好である。よって、当面の政策運営は引き続き外部環境次第の展開が続くことは避けられそうにないと予想される。


注1 9月18日付レポート「インドネシア中銀、物価と為替を好感してコロナ禍後初の利下げ」
注2 10月8日付レポート「インドネシア、ジョコ政権を継ぐプラボウォ次期政権の向かう先は」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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