- HOME
- レポート一覧
- 経済分析レポート(Trends)
- コロンビア・ペソは他の中南米通貨と異なる動きをみせる展開
- World Trends
-
2024.10.01
新興国経済
原油
新興国金融政策
産油国経済
その他新興国経済
為替
コロンビア・ペソは他の中南米通貨と異なる動きをみせる展開
~原油安に財政の懸念、インフレ鎮静化にほど遠いなかで中銀は一段の利下げなど悪材料は多い~
西濵 徹
- 要旨
-
- 南米コロンビア中銀は、30日の定例会合で政策金利を50bp引き下げて10.75%とする決定を行った。ここ数年のコロンビアはインフレに直面したため、中銀は累計1150bpもの利上げに動いた。中南米では昨年から「利下げドミノ」と呼べる動きが広がったが、コロンビアではインフレが高止まりしたため中銀は慎重姿勢を維持した。しかし、景気減速が鮮明になったことを受け、中銀は昨年12月にインフレ収束にほど遠い状況ながら利下げに舵を切り、その後も断続的な金融緩和に動いてきた。他方、米FRBによる利下げを受けた米ドル安にも拘らず、通貨ペソ相場は原油相場の低迷や財政悪化懸念が重石となる展開が続く。インフレ懸念がくすぶるにも拘らず、中銀は一段の金融緩和を決定したほか、政策委員の間には一段の金融緩和を志向する動きもみられる。政治も経済も低迷が続くなかでペソ相場も見通しの立ちにくい展開が続こう。
南米コロンビアの中銀は、30日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利を50bp引き下げて10.75%とする決定を行った。ここ数年のコロンビアでは、コロナ禍一巡による経済活動の正常化や商品高に加え、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨ペソ安による輸入インフレ、歴史的な大干ばつに伴う電源構成の6割以上を占める水力発電の稼働低迷なども重なり、インフレは大きく上振れした。よって、中銀は物価と為替の安定を目的に累計1150bpもの断続利上げに動き、昨年初めにインフレは一時24年ぶりの水準となるも、その後は商品高の一巡も重なり頭打ちに転じてきた。なお、昨年来の中南米ではインフレ鈍化を理由に利下げに舵を切る『利下げドミノ』とも呼べる動きが広がりをみせてきたものの、コロンビアではインフレ率が中銀目標を上回る推移が続いたため、中銀は慎重な姿勢をみせてきた。他方、金利高と物価高の共存長期化に加え、主力の輸出財である原油価格も世界経済を巡る不透明感を理由に上値の重い展開が続いており、昨年の経済成長率は+0.6%に留まるなど他の新興国と比較して見劣りする展開をみせてきた。したがって、インフレ率は中銀目標を大幅に上回る状況ながら、中銀は昨年12月に3年3ヶ月ぶりの利下げに舵を切り(注1)、その後も7月の定例会合まで計6回利下げを行い、8月の定例会合では預金準備率の引き下げに動くなど金融緩和を進めてきた。しかし、足下のインフレ率は依然中銀目標を上回る推移が続いており、インフレ収束にはほど遠い状況にあると捉えることができる。また、このところの国際金融市場においては米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げ実施を追い風に米ドル安の動きが広がり、多くの新興国通貨で底入れの動きが確認されているにも拘らず、ペソ相場を巡っては上値の重い展開をみせている。この背景には、コロンビアの主力の輸出財である原油の国際価格の低迷が長期化していることに加え、左派のペトロ政権の下で財政状況が悪化していることに対する懸念も影響していると考えられる。したがって、足下のインフレは鈍化傾向が続いているものの、ペソ安による輸入インフレ懸念がくすぶるなど難しい状況に直面していると捉えられる。こうした状況ながら、中銀は昨年12月からの利下げ局面において7回目となる利下げを決定するとともに、会合後に公表した声明文では「7人の政策委員のうち4名が50bpの利下げ、3名が75bpの利下げを主張した」ことを明らかにするなど、中銀が一段の金融緩和に傾いていることが示された格好である。その上で、今回の決定について「インフレ見通しへの持続的なリスクを勘案した上で、必要とされる慎重さを維持しつつ、景気回復を引き続き支援することを目的としたもの」との考えを示した上で、先行きの政策運営について「入手可能なデータに基づいて決定されることをあらためて表明する」とするなど、追加利下げありきではないとの考えを滲ませている。しかし、中銀が金融緩和に大きく舵を切る姿勢をみせている背景には、インフレ鈍化や中銀による利下げも追い風に昨年末から年明け直後にかけての景気が底入れの動きを強める動きが確認されているものの、4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+0.40%と3四半期連続のプラス成長となるも勢いを欠く動きをみせていることが考えられる。一昨年の大統領選での勝利を経て誕生した左派のペトロ政権は今年8月に4年の任期の折り返しを迎えたものの、政権内部や大統領の身の回りで相次いでスキャンダルが噴出するとともに、経済も勢いを欠くなかで難しい状況に直面する展開が続いている。原油相場を巡っては、中国による景気刺激策の恩恵を受けにくいことに加え、中東情勢を巡る不透明感が重石となる展開が続いているなか、中銀による緩和姿勢も相俟ってペソ相場の足かせとなる可能性に留意する必要があろう。



注1 1月19日付レポート「コロンビア中銀、インフレ収束にほど遠いながら、景気下支えへ利下げに舵」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
-
経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
執筆者の最近のレポート
-
台湾・3月輸出額は過去最高額を更新(Asia Weekly(4/6~4/10)) ~台湾、タイ、フィリピンで原油高がエネルギー価格を大きく押し上げる動き~
アジア経済
西濵 徹
-
中国、企業はインフレに直面も、家計はデフレ圧力を脱せず ~中東情勢悪化による原油高の一方、家計部門は雇用不安と不動産不況の「呪縛」が続く~
アジア経済
西濵 徹
-
韓国中銀、李昌鏞総裁最後の定例会合は「様子見」を強調 ~中東情勢は物価や景気にリスク、金融市場の動向をみつつ様子見姿勢が続く~
アジア経済
西濵 徹
-
ベトナムの高成長目標に暗雲、1-3月GDPは前年比+7.83%に鈍化 ~イラン情勢、強権姿勢への懸念はあるが、金融市場は「その後」を見据える動きも~
アジア経済
西濵 徹
-
インド中銀、景気見通しを下方修正も、様子見姿勢を維持 ~様子見姿勢継続も、見通しの再修正の可能性は残り、市場もイラン情勢の動向に左右される~
アジア経済
西濵 徹
関連テーマのレポート
-
イラン情勢が金融市場を揺さぶるなかでの新興国の「体力測定」 ~資金流入が活発化してきたなか、環境一変で「体力」が覚束ない国も散見される~
新興国経済
西濵 徹
-
OPECプラス有志8ヶ国、5月も日量20.6万バレル増産で合意 ~ホルムズ海峡の事実上封鎖で、合意は「絵に描いた餅」となる可能性は高い~
新興国経済
西濵 徹
-
コロンビア中銀は2会合連続利上げの一方、政府との対立は一層鮮明に ~原油高はマクロ面でプラスも物価に懸念、ペソ相場は当面外部環境に左右される展開続く~
新興国経済
西濵 徹
-
中東情勢悪化で注目される中央アジア・コーカサス産原油とは ~日本企業が権益を有するカザフ、アゼル産原油、多様化の観点で重要な調達先となるか~
新興国経済
西濵 徹
-
メキシコ中銀、インフレと景気悪化のリスクを睨み、僅差で利下げ決定 ~原油高、有事のドル買い、治安情勢の悪化、USMCA再交渉の不透明感、ペソ相場に不安材料山積~
新興国経済
西濵 徹

