資金循環統計(2024年1-3月期)

~新NISAで起こったのは「保険から投資へ」~

星野 卓也

要旨
  • 家計部門は資金余剰主体に回帰。主な背景は消費の伸び悩み。所得面ではこの間の政府による低所得世帯向け給付も押し上げに効いているとみられる。6月開始の定額減税は、主に次の4-6月期に押し上げ要因として寄与するだろう。類似統計である内閣府公表のSNAベースの家計貯蓄率は23年7-9月期・10-12月期と2四半期連続のマイナスとなっているが、方向としてはマイナス幅縮小、プラス圏復帰に向かっていく蓋然性が高い。
  • 企業部門は変わらず資金余剰傾向が続いている。季節調整値ベースの急増は資産側フローの「その他」が跳ねたことが影響しており一時的要因とみられるが、移動平均値でみた趨勢も資金余剰は拡大傾向にある。内訳では資産側で対外直接投資のフローが引き続き拡大していることが背景だ。
  • 今回の注目点として、1月から始まった新NISAの影響が挙げられる。1-3月期の家計からの投資信託受益証券へのフローは3.5兆円のプラス。2007年2Q以来の大きさであり、新NISA開始に伴って家計の投資信託への流入が加速したことがうかがえる。現預金のフローは▲9.2兆円であり、一見すると現預金から投資信託へ資金がシフトしたようにみえるが、これは12月のボーナスが年始以降に支出されるなどの季節性によるところが大きい。むしろ目立つのは投資信託への流入拡大に対応して生命保険フローのマイナスが拡大している点。過去のレポートでも指摘 した点だが、家計は「貯蓄(現預金)から投資へ」というよりは「保険から投資へ」資金を動かしている。また、家計の資金余剰が拡大している点に照らすと、消費を減らして投資に回す「消費から投資へ」の動きが生じていることも考えられるが、現時点では物価高によって増加した個人消費が遅れて所得見合いに戻っていく動き、と整理した方が自然かもしれない。
  • 一般政府債務のGDP比(2024年3月末)は総債務が241.3%(前期末:241.5%)と低下、純債務も94.7%(前期末:102.8%)へ低下した。政府純債務/GDPは2010年2Q以来の100%割れだ。政府総債務/GDPは政府赤字と名目GDPの増加が相殺する形で概ね横ばい圏にあるが、純債務は円安などによる資産増を背景に低下傾向が明確だ。
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星野 卓也

ほしの たくや

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 日本経済、財政、社会保障、労働諸制度の分析、予測

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