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- 一時、株価6万円到達の背景
- 要旨
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日経平均株価が上昇する背景には、世界的なAI需要の高まりがある。これは、日本のみならず海外でも起こっている変化であり、日本株もその勢いに乗っている格好だ。
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世界半導体統計では、半導体メモリー価格の急騰が起こり、2026年1-2月の売上が著しく伸びている。イラン情勢が不安定でも、その悪影響を受けにくいかたちで半導体需要が膨らんでいるのだ。
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半年間で5万円から6万円
日経平均株価が6万円台にワンタッチした(4月23日の高値60,013.98円)。株価5万円台を終値ベースで超えたのは2025年10月27日だから、それから約半年間で次の6万円台へと移行する目前まできた(図表1)。日経平均株価は、イラン攻撃開始(2月28日)の直前から3月31日まで約1か月間ほど下落を続け(ピーク比▲13%)、4月に入って攻撃前の株価水準を回復してさらに伸びている。日本株の時価総額は、3市場計で約1,300兆円に達し、2025年の名目GDP664兆円の約2倍にまで膨らんだ。

イラン情勢がまだ緊迫化していて、停戦合意が見通せない中で、なぜ株価だけがリバウンドするのかと疑問を投げかける声は根強い。投資家からは楽観的過ぎるという見方もある。しかし、筆者は別のロジックが働いているとみている。原油高の影響を受けにくいAI関連の株価上昇が、停戦合意などの政治情勢とは別のところで進んでいるのではないかという見方である。
多くの人が指摘するように、株価はAI関連の特定銘柄を中心に大きくリバウンドしている。この変化は、米国の大手ハイテク企業の株価上昇とも連動したものでもある。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は、3月末のボトムから4月22日まで実に38.7%もリバウンドしている(この間、日経平均株価は15.8%)。日経平均株価の構成銘柄の中で、AI・半導体関連と言われる銘柄はSOX指数に引っ張られるように大きく上がった。米国株価の上昇は、海外投資家の対日株式投資を通じて日本にも波及しやすい。日本取引所グループの売買統計でも、2026年3月(直近)の委託売買に占める海外投資家の売買シェアは68%に達する。そうした海外マネーの牽引力が現在に至る急上昇の背景になっていよう。米AI関連需要の高まり→日本株のリバウンドという連鎖である。
半導体価格の爆発
では、米国のAI関連需要の高まりはどのように起こっているのだろうか。その背景には、世界的な半導体需要の高まりと、それに呼応した半導体価格上昇があるとみられる。世界半導体統計(WSTS)のデータは、直近2026年2月まで発表されている。そこでの半導体売上高は、1月の前年比が58.3%増、2月が同86.1%と文字通りの著増となっている(図表2)。このデータは何かの間違いではないかと何度も見直した。世界全体の半導体売上の急増は、日本以外の売上増加によるものだ。日本の半導体売上は2月前年比12.6%(1月同▲0.5%)、日本以外のアジア太平洋は同89.8%(1月同76.6%)、米国は同99.1%(1月同47.2%)、欧州は65.6%(1月同37.7%)となっている。いずれにしても、日本以外の地域は半導体売上が急増しているのである。巷間、これは生成AIの利用が増えて、データセンター需要も高まったためだとされる。もう少し詳細にみると、半導体メモリー価格などが2025年末から急騰している。このメモリー価格上昇は、半年で4倍と言われている。DRAMやNANDの価格は、昨年10-12月から猛烈に上昇している。人によっては、価格爆発と呼んでいる。データセンター需要によってメモリー供給が逼迫し、生産能力が追いつかないことがこの価格急騰の背景にある。

こうした事情を考えると、特定の半導体関連銘柄の収益拡大が期待されていて、たとえイラン攻撃が起こったとしても、AI・半導体需要は独立して高まっていくのだろうという推論が成り立つ。
ちょうどトランプ政権下では、AIの軍事利用が問題視されている。おそらく、イラン攻撃が苛烈を極める中で、水面下では軍事関連のAI需要も高まっているだろうから、このメモリー価格の爆発に拍車がかかっていく可能性もある。ここにきての株価上昇は、そうしたAI需要の高まりも背景になっているのだろう。
AI・半導体需要は安泰か?
今後、株価は順調に上昇して、6万円台に移行していくのだろうか。仮に、AIブームが続くのであれば、AI関連株の上昇は続きそうだ。ChatGPTが公開されたのは2022年11月で、そこから大きなブームが始まった。このChatGPTは異例のスピードで進化を続けて、新しい需要を開拓している。世界半導体売上のサイクルは、2022年まで3~4年周期でアップダウンを繰り返してきたのが、2022年以降は一貫した拡大過程に移っている。これをスーパーサイクルと呼ぶ人もいる。もしも、生成AIが大きな需要期を迎えているのであれば、株価上昇の盛り上がりは当面続くことになりそうだ。6万円台移行のシナリオも成り立つ。
しかし、世界半導体売上の前年比が異常なほど跳ね上がっているのを見ると、かえって持続性に不安を覚える。半導体メモリーの価格上昇は、どこまで持続性があるのか。年初から「最近、サーバーは値段が高すぎますよね」という話はあちこちで耳にする。高価格があまり長く続くと今度は需要が着いてこれなくなる状況が生じる。価格上昇が原因になって、需給バランスを悪化させる可能性である。
2026年の世界経済は、原油高騰によって、徐々に企業収益が侵食されていく展開も起こりそうだ。産油国・エネルギー産業にマネーが偏在する図式になるだろう。これが米国のさらなる株価上昇のパワーになるのか、株価下落につながる歪みになるのかは、まだわからない。
もう1つ、米国株に関しては、これまでFRBの利下げ期待が潜在的な押し上げの要因になってきた。原油発のインフレ傾向は、こうした利下げ期待を崩すものになるだろう。FRBが年内利下げを見送るだけではなく、利上げに転じることを示唆すれば、それは株価にも大きなインパクトを与える。半導体のスーパーサイクルが勢いを失う可能性としてはまだかなり低いとは思うが、少しずつ警戒をしておく必要があろう。
熊野 英生
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