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2024.06.26
アジア経済
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オーストラリア中銀を悩ませる物価の動き、豪ドル相場はどうなるか
~インフレ率は加速も当局が重視する指標はわずかに鈍化。ただし、中銀が利下げに動く理由はみえず~
西濵 徹
- 要旨
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- オーストラリアでは3年以上インフレが中銀目標を上回る推移が続く上、中銀の利上げを受けた金利高、外需を巡る不透明感も重なり足下の景気は頭打ちの動きを強めている。ただし、インフレの高止まりを理由に、中銀は今月の定例会合で金利据え置きを決定した上で、利上げの検討に言及するなどタカ派姿勢を示した。これは金融市場が早期の利下げを見込むなかでけん制の動きを強めているとみられる一方、5月のインフレ率やコアインフレ率は加速の動きを強めている。他方、当局が重視する指標はわずかに伸びが鈍化しているが、住宅価格は上昇の動きを強めるなどインフレ懸念はくすぶる。足下の豪ドルの日本円相場は金融政策の方向性の違いを理由に強含む動きをみせているが、中銀が極めて強いタカ派姿勢をみせていることを勘案すれば、先行きもしばらくは堅調な推移をみせる可能性は高まっていると判断できる。
オーストラリアでは3年以上に亘ってインフレ率が中銀目標を上回る展開が続いており、中銀は物価と為替の安定を目的に累計425bpもの利上げを実施するなど金融引き締めの動きを強めるなか、物価高と金利高の共存が景気の足かせとなる懸念が高まっている。さらに、外需を巡っても最大の輸出相手である中国景気の底打ちや関係改善への期待はある一方、コロナ禍からの世界経済のけん引役となってきた欧米など主要国景気の勢いに陰りが出ていることは商品市況とともに重石となるなど、景気の不透明要因は山積している。事実、1-3月の実質GDP成長率は前期比年率+0.51%とプラス成長が続くも一段と勢いを欠く推移をみせているほか、中期的な基調を示す前年同期比ベースでも+1.1%と前期(同+1.6%)から鈍化するなど頭打ちの様相を強めている(注1)。こうしたなか、中銀は物価安定を重視する観点から今月の定例会合においても政策金利を据え置く決定を行うとともに、インフレの上振れリスクを警戒するなど引き締め姿勢を長期に亘って維持する考えをみせている。その上で、会合後に記者会見に臨んだブロック総裁は今回の会合を巡って「利上げも検討した」と述べるなど『タカ派』姿勢をあらためて強調する考えを示した(注2)。中銀がこうした姿勢を示す背景には、上述のように足下の景気が頭打ちするなかで国際金融市場では中銀が景気下支えに向けて早晩利下げを余儀なくされるとの観測が出る動きがみられるものの、こうした状況への『けん制』を狙ったものと捉えられる。他方、一昨年末を境に加速の動きを強めたインフレは中銀の金融引き締めも追い風に頭打ちに転じてきたものの、年明け以降はその反動も影響して底打ちに転じる動きをみせている。さらに、5月のインフレ率は前年同月比+4.0%と前月(同+3.6%)から伸びが加速しているものの、前月比は▲0.08%と前月(同+0.73%)から4ヶ月ぶりの下落に転じるなどインフレ圧力そのものは幾分後退している様子がうかがえる。ただし、昨年後半以降の中東情勢の混乱をきっかけとする国際原油価格の底入れの動きに一服感が出ていることを反映してエネルギー価格は下落している一方、異常気象の頻発を理由とする農作物の生育不良などによる供給懸念がくすぶるなかで食料品価格は上昇の動きが続いており、生活必需品を巡る物価の動きはまちまちの様相をみせている。前月はイースター(復活祭)連休の時期が重なった影響で余暇関連を中心とするサービス物価が上振れしたものの、当月はその反動により下押し圧力が掛かる一方、保険料や金融緩和を中心とするサービス物価で上昇圧力がくすぶり、分野ごとにサービス物価もまちまちの動きをみせている。こうした動きを反映してコアインフレ率(トリム平均値)は前年同月比+4.4%と前月(同+4.1%)から伸びが加速している。一方、中銀が注目する物価変動の大きい品目と旅行関連を除いたベースのインフレ率は同+4.0%と前月(同+4.1%)からわずかに伸びが鈍化するもの、前月比は+0.24%と前月(同+0.41%)からペースは鈍化するも上昇が続くなどインフレ圧力がくすぶる状況は変わらない。足下では家賃をはじめとする住宅関連で物価上昇圧力が強まる動きがみられるが、これは金利高の長期化により低価格住宅の供給がひっ迫する一方、堅調な移民流入などを追い風に需要拡大の動きが続いており、全国的に住宅価格に押し上げ圧力が掛かっていることが影響している。こうしたなか、中銀のケント総裁補が銀行業界向けの講演において、足下の金利水準が明らかに中立金利の推計値を上回っているとの見方を示した上で多くの家計に経済的負担を強いているとの認識を示す一方、物価抑制に向けて必要であれば追加引き締めも排除しない考えを示すなどタカ派姿勢の強さをうかがわせる動きをみせている。こうした見方を反映して、金融市場では豪ドルの対米ドル相場は米ドル高の動きが意識されるなかでこう着した動きをみせる一方、日本円に対しては金融政策の方向性の違いを理由に強含みする動きをみせている。中銀が極めて強いタカ派姿勢を堅持する考えを繰り返していることを勘案すれば、先行きの豪ドルは日本円に対して堅調な推移をみせる可能性が高まっていると判断できる。



注1 6月5日付レポート「オーストラリア景気は一層の頭打ち確認、豪ドル相場の行方は」
注2 6月18日付レポート「オーストラリア中銀はタカ派姿勢堅持、豪ドルの底堅さを促すか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

