インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

オーストラリア景気は一層の頭打ち確認、豪ドル相場の行方は

~内容は数字以上に悪いが中銀はタカ派姿勢を維持、豪ドルの対円相場は日銀の動きが意識される~

西濵 徹

要旨
  • オーストラリア経済を巡っては内・外需ともに不透明要因が山積する一方、中銀は物価抑制を目的にタカ派姿勢を堅持する姿勢を崩さない状況が続く。昨年末にかけての景気は頭打ちしてきたが、1-3月の実質GDP成長率は前期比年率+0.51%と一段の鈍化が確認されている。その内容も数字以上に悪く、幅広い分野で生産は力強さを欠くなど景気失速が意識される状況にある。ただし、足下のインフレは粘着度の高さが意識されやすい状況が続いている上、中銀は物価抑制を主眼に置いた姿勢を引き続き堅持している模様である。豪ドル相場は米ドルに対しては比較的堅調な動きが見込まれる一方、日本円に対しては上昇の動きに一服感が出ており、当面は日本銀行の「次の手」を意識して上値が抑えられる可能性が考えられる。

オーストラリア経済を巡っては、過去3年近くに亘ってインフレ率が中銀目標を上回るなど物価高が続いているほか、中銀は一昨年半ば以降に累計425bpの利上げに動くなど金利高も重なり、内需の足かせとなる材料が山積している。外需については、最大の輸出相手である中国景気に底打ちの兆しが出るほか、ここ数年悪化が続いた両国関係に改善の動きがみられる一方、コロナ禍からの世界経済の回復をけん引してきた欧米など主要国経済の勢いに陰りが出ており、内・外需双方にけん引役が乏しい状況にある。こうした状況ながら、インフレは中銀目標を上回る推移が続いており、不動産価格も上昇基調が続くなどインフレの粘着度に繋がる動きがみられるなか、中銀は先月の定例会合において『タカ派』姿勢を強調するなど物価抑制を重視する考えをみせている(注1)。昨年末にかけての景気は頭打ちしてきたものの、1-3月の実質GDP成長率も前期比年率+0.51%とプラス成長が続くも前期(同+1.32%)から鈍化しており、中期的な基調を示す前年同期比ベースの成長率も+1.1%と前期(同+1.6%)から鈍化するなど一段と頭打ちの動きを強めていることが確認されている。中国景気の底打ち期待を反映して輸出は2四半期ぶりの拡大に転じているほか、雇用環境の堅調さや住宅価格の上昇による資産効果も追い風に家計消費は底堅く推移するとともに、連邦政府を中心とする政府消費の堅調さも内需を下支えしている。一方、物価高と金利高の共存を受けて住宅投資や企業部門による設備投資需要に下押し圧力が掛かるなど固定資本投資は一段と下振れしており、先行きの景気の足を引っ張ると見込まれる。ただし、家計消費の底堅さなどを反映して輸入は大きく拡大して純輸出(輸出-輸入)の成長率寄与度は前期比年率ベースで▲3.64ptとなる一方、在庫投資の寄与度は+2.94ptとプラス寄与となるなど在庫の積み上がりが確認されるなど、内容は数字以上に悪いと捉えられる。分野別の生産動向も、住宅投資や設備投資の弱さを反映して建設業の生産は下振れする一方、調整の動きが続いた製造業や農林漁業関連の生産に底打ち感が出るも力強さを欠くほか、比較的堅調な推移をみせたサービス業の生産も鈍化しており、全般的に生産活動は勢いを失いつつある。このように足下の景気は一段と頭打ちの動きを強めるとともに、失速が意識される状況にある一方、中銀は景気が頭打ちの動きを強めるなかでも物価抑制を目的とするタカ派姿勢を堅持しているにも拘らず、足下のインフレ率は底打ちが確認されるなど粘着度の高さがあらためて意識される状況にある(注2)。中銀のブロック総裁は足下の景気動向について「消費動向が示すようにかなり弱いが、経済はソフトランディングすると見込んでいる」、物価動向について「低下しているがそのペースはかなり緩やかなものに留まっている」との認識を示した上で、先行きの政策運営について「如何なる方向も否定しない」としつつ「期待通りに低下しなければ躊躇なく行動する」「インフレを巡るリスクは依然としてバランスしている」と述べるなど、タカ派姿勢を維持しているものと捉えられる。豪ドル相場を巡っては、米ドルに対しては米ドル高の動きが後退していることも重なり比較的底堅い動きが続く可能性がある一方、日本円に対しては上昇傾向を強めてきた反動に加え、米ドル高後退の動きが重石となる動きがみられる。当面は日本銀行による『次の手』が意識されるなかで上値が重くなる可能性に注意する必要があろう。

図 1 実質 GDP(季節調整値)と成長率(前年比)の推移
図 1 実質 GDP(季節調整値)と成長率(前年比)の推移

図 2 実質 GDP 成長率(前期比年率)寄与度の推移
図 2 実質 GDP 成長率(前期比年率)寄与度の推移

図 3 インフレ率の推移
図 3 インフレ率の推移

図 4 豪ドル相場(対米ドル、日本円)の推移
図 4 豪ドル相場(対米ドル、日本円)の推移

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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