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2023.12.05
アジア経済
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オーストラリア中銀、インフレ鈍化を好感して再び利上げ休止
~追加利上げに含みも物価や賃金への見方は幾分ハト派に、当面の豪ドル相場は上値の重い展開~
西濵 徹
- 要旨
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- オーストラリア中銀は5日に開催した定例会合において、2会合ぶりに政策金利を据え置く決定を行った。同行は利上げ局面を一旦停止させたが、物価動向や雇用環境、不動産市況の動向を理由に再利上げや再々利上げを余儀なくされている。なお、先月の前回会合で再々利上げに動いた後は、雇用に底堅さがみられる一方でインフレは鈍化する動きが確認されており、中銀は様子見を図ったと考えられる。ただし、先行きの見方に不確実性の高さを上げる一方、追加利上げの有無は引き続きデータとリスク次第との考えを維持した。このところの豪ドル相場は米ドル高一服を反映して底入れしてきたが、今回の会合で中銀はタカ派スタンスを幾分後退させており、当面はこれまでの底入れの反動も重なり上値が重い展開が続くであろう。
オーストラリアにおいては、過去2年以上に亘ってインフレ率が中銀(オーストラリア準備銀行)の定める目標域を上回る推移が続いている。コロナ禍一巡による景気回復の動きに加え、商品高や国際金融市場での米ドル高も重なりインフレが上振れするとともに、中銀が異例の金融緩和に踏み切ったことによる『カネ余り』も追い風に不動産市況は急上昇するなどバブル化が懸念された。こうした事態を受けて、中銀は昨年5月から1年弱に亘って断続利上げを実施するとともに、昨年末以降は商品高や米ドル高の動きも一服してインフレが頭打ちに転じる動きが確認された。他方、金利上昇を受けて不動産市況は一旦頭打ちするも、その後は金利高に伴う供給減の一方で国境再開による移民流入を追い風とする需要増を反映して不動産市況は再び底入れしている。さらに、中銀による大幅利上げのほか、7月からは最低賃金が大幅に引き上げられたものの、依然として足下の雇用環境は大都市部を中心に堅調な推移が続いている。また、賃金上昇も追い風に家計部門の消費意欲も旺盛な推移をみせるなどインフレに繋がる材料は山積している。よって、中銀は今年4月に一旦利上げ局面を休止させるも、5月と6月に再利上げに追い込まれたほか、7月以降は再び様子見姿勢に転じるといった難しい対応を続けている。こうした背景には、中銀がインフレ対応を巡って『後手を踏んだ』との見方が強まり、ロウ前総裁が事実上の更迭に追い込まれるなど厳しい批判に晒されたことも影響しており(注1)、後任総裁となったブロック氏も難しい舵取りを迫られている。事実、ブロック総裁の下でも中銀は様子見姿勢を維持したものの、家計消費の強さや不動産市況の底入れが続いている上、供給要因によるインフレ圧力の再燃に繋がる動きがみられたため、先月の定例会合で再々利上げに舵を切る果断な対応をみせている(注2)。なお、上述したように足下の雇用環境は依然として堅調な推移が続いているほか、家計消費にも旺盛さがうかがえる一方、インフレ動向については幅広く頭打ちの動きが確認されるとともに、先月の定例会合における再々利上げを後押しした商品高や米ドル高の再燃などインフレ要因の動きも後退するなど状況は変化している。こうしたことから、中銀は5日の定例会合において政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を2会合ぶりに4.35%に据え置く決定を行っている。会合後に公表した声明文では、先月の再々利上げについて「インフレの目標域への回帰が当初の想定より遅れるとの見方を反映したもの」との見方を示した上で、「足下の雇用環境は幾分緩和するも依然タイトであり、住宅価格は全土で上昇が続いてローン件数も増加している」として「インフレが長期に亘って高止まりするリスクが高まったことで利上げが正当化されると判断した」としている。一方、足下の同国経済について「概ね予想通りであり、インフレは引き続き鈍化するなど期待インフレも頭打ちしている」との認識を示すとともに、「金利上昇は需給双方でより持続可能なバランスの確立に寄与しており、先月の利上げを含めた影響は引き続き経済に影響を与える」との見通しを示している。政策運営について「合理的な期間内にインフレを目標域に戻すことが優先事項」との考えを改めて示すとともに、「高いインフレ期待が定着すればインフレ抑制にさらなる金利上昇と失業率の上昇を招くなど大きなコストを要する」との認識を示しつつ「現状はインフレ期待と目標は整合的であり、こうした状態を維持することが重要」とした。そして、「今回の据え置きにより、これまでの利上げが需要、物価、労働市場に与える影響を評価する時間を確保出来る」との見方を示している。他方、先行きについて「不確実性が依然大きい」とした上で、「サービス価格を巡るインフレ動向」、「中国経済の先行きと中東情勢の悪化」、「金融政策の効果発現の遅れや労働需給のひっ迫が続くなかでの価格決定行動や賃金の動向」に起因する形で「家計消費の先行きは依然不透明」との認識を示している。その上で、「さらなる金融引き締めの有無はデータとリスク評価次第」としつつ、「インフレを目標に戻す断固とした決意は変わらず、その実現に向けて必要なことを行う」との従来からの考えを改めて強調している。このところの豪ドル相場を巡っては、中銀がタカ派姿勢を維持する一方、米FRB(連邦準備制度理事会)によるタカ派姿勢の後退を受けた米ドル高圧力の後退を反映して米ドルに対して底入れする展開が続いており、同様に日本円に対しても底堅い動きをみせている。しかし、今回の決定に際しては物価や賃金に対する見方が再々利上げを決定した前回会合に比べて幾分ハト派的であったことに鑑みれば、追加利上げの可能性は後退していると捉えることが出来る。よって、これまで豪ドル相場は底入れの動きを強めてきたことも影響して、当面の豪ドル相場は上値が抑えられる展開が続く可能性に留意する必要があろう。




注1 7月14日付レポート「豪中銀、ロウ総裁が事実上の更迭、ブロック副総裁が昇格へ」
注2 11月7日付レポート「強過ぎる家計消費、不動産市況がオーストラリア中銀を再び後押し」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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