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ペルー大統領選、フジモリ氏首位も決選投票は激戦必至

~次点候補は僅差の激戦、資源政策の行方を左右する一方、政局の安定は期待しにくい~

西濵 徹

要旨
  • 南米ペルーで4月12日に大統領選が実施された。大乱戦となった今回の大統領選では、中南米における左派退潮の流れを受け、最終盤にかけて右派のケイコ・フジモリ氏が優位に選挙戦を展開した。選挙戦序盤は極右のロペス・アリアガ氏が首位だったが、中東情勢の緊迫化により支持が急落した。フジモリ氏にとって今回の大統領選は4度目の挑戦となる。

  • 物流トラブルによる投票遅延が生じたものの、開票結果ではフジモリ氏が約17%で首位となっている。ただし、過半数に達する候補がおらず、6月7日に決選投票が行われる見通し。2位争いはロペス・アリアガ氏、中道右派のニエト氏、中道左派のサンチェス氏の間で接戦となっており、誰が2位になるかが決選投票の構図を大きく左右する。

  • 二院制復活により議会運営はさらに複雑化し、大統領と議会の対立が深まるおそれがある。その意味では、誰が次期大統領になっても政局安定は見通しにくい。通貨ソルは中東情勢を理由に一時的に調整したが、実質金利の高さや主要な輸出財である銅や金の国際価格の高止まりを背景に堅調を維持している。今後は選挙後の資源政策の動向が焦点となろう。

南米ペルーでは、4月12日に5年に一度の大統領選挙が実施された。今回の大統領選には、2021年の前回大統領選(18人)を大幅に上回る35人が立候補し、支持が分散するなど大乱戦となった。前回の大統領選では、急進左派政党PL(自由ペルー)から出馬したペドロ・カスティジョ氏が勝利し、中南米で広がりをみせてきた「ピンクの潮流」の動きがペルーにも及んだ。しかし、議会との対立を理由にカスティジョ氏は2022年に弾劾を受けた。後任大統領となったディナ・ボルアルテ氏も2025年に、その後任となったホセ・ヘリ氏も2026年2月に罷免されるなど政局は混乱している。ここ数年の中南米ではアルゼンチンに続いて、ボリビア、チリで相次いで右派政権が誕生するなど、ピンクの潮流に変化の兆しが出ている。こうした事情も影響して、世論調査では極右政党RP(人民刷新党)から出馬した首都リマ前市長のラファエル・ロペス・アリアガ氏が首位を走ってきた。しかし、2月末のイスラエルと米国によるイランへの軍事行動を機に中東情勢が緊迫の度合いを増すなか、国民の間で右派志向の強い同氏への支持率が急速に低下した。その後は右派政党FP(人民勢力党)から出馬したケイコ・フジモリ氏の支持が上昇し、最終盤にかけてはフジモリ氏が優位な形で選挙戦を展開した。フジモリ氏は過去に3度(2011年、2016年、2021年)大統領選に出馬したものの、いずれも決戦投票の末に敗北しており、今回の大統領選では「四度目の正直」を目指した。また、前述したように左派勢力の退潮が鮮明になっており、過去に比べて比較的優位に選挙戦を展開できたと考えられる。

ペルー政局は混乱が続いているが、今回の大統領選を巡っても混乱に見舞われた。選挙資材を担当した業者による物流上の問題を理由に、首都リマをはじめとする200ヶ所以上で投票所の開所が遅れたため、対象となる投票所で投票ができなかった5万人以上に対して投票時間が1日延長された。こうした事情により開票作業が遅れているものの、現地報道ではフジモリ氏が17%程度の得票率で首位となっている模様である。しかし、いずれの候補も得票率が当選に必要な50%を大きく下回るため、6月7日に実施される決選投票に持ち越される見通しである。2位にはロペス・アリアガ氏が約14%、3位には中道右派政党PBG(良い統治の党)から出馬したホルヘ・ニエト氏が約13%と僅差で追随している。さらに、4位には中道左派政党JP(ペルーとともに)から出馬したロベルト・サンチェス・パロミーノ氏が約10%となるなど、2位争いは接戦となっている。決選投票に向けては、2位の候補が誰になるかが大きく影響を与える。フジモリ氏はコスタ(沿岸部)やセルバ(熱帯雨林地帯)を支持基盤とする一方、ロペス・アリアガ氏やニエト氏は首都リマなど都市部を、サンチェス氏はシエラ(山岳地帯)を支持基盤としている。仮にロペス・アリアガ氏やニエト氏が2位となれば、2016年と同様の右派候補どうしの争いとなり、右派や中道候補の票を取り込む形での激戦が予想される。一方、サンチェス氏が2位となれば、2011年や2021年と同様に右派と左派による争いとなるため、左派支持者を中心に根強い「反フジモリ」票の行方がカギを握る。

大統領選と同時に実施された議会選挙では、今回から二院制が復活する。過去には多数の政党が乱立するなど議会構成が細分化し、いずれの政党も多数派を形成することができなかったものの、今回も同様の結果となる可能性は高い。したがって、議会運営はこれまで以上に複雑化することが予想される。議会構成の複雑さは、大統領と議会のけん制関係を一段と強め、2018年以降に8人もの大統領が入れ替わる一因になってきた。したがって、決選投票を経ていずれの候補が次期大統領に選出されたとしても、政局が安定に向かうかは見通しにくい。こうした状況に加えて、通貨ソル相場は中東情勢の緊迫化による金融市場の動揺を受けて調整したものの、足元では実質金利(政策金利-インフレ率)のプラス幅の大きさに加え、主要な輸出財である銅や金の国際価格の高止まりを追い風に堅調な動きをみせている。今後は、選挙結果を受けた資源政策の動向を含め、市場環境を巡る状況に左右される展開が続くことが予想される。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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