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2023.09.21
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ブラジル中銀、政府の圧力を排除して利下げペースの堅持を改めて強調
~2会合連続で50bpの利下げ実施、当面のレアル相場は上値が抑えられる展開が続くであろう~
西濵 徹
- 要旨
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- ブラジル中銀は19~20日の定例会合において、政策金利を2会合連続で50bp引き下げて12.75%とする決定を行った。1月に発足したルラ政権は中銀に早期の利下げを求める一方、中銀はインフレ懸念がくすぶる上、財政政策への懸念を理由に慎重姿勢を示してきた。しかし、インフレ鈍化が進むとともに、政府が財政規律法成立に動いたこともあり、中銀は8月の前回会合で3年ぶりの利下げに動いた。中銀は利下げペースの維持を示唆する一方、政府からは利下げ加速を示唆する動きもみられたが、インフレ再燃の兆候がみられるなかで中銀は利下げペースの維持を改めて強調した。中銀はインフレ見通しを上方修正するなど利上げペースの加速観測を排除したと捉えられる。レアル相場はインフレ鈍化による実質金利のプラス幅拡大を追い風に堅調に推移したが、利下げや米ドル高の再燃も重なり当面は上値が抑えられるであろう。
ブラジル中央銀行は、19~20日の日程で開催した定例の金融政策委員会において政策金利(Selic)を50bp引き下げて12.75%とする決定を行った。同行を巡っては、先月の定例会合において3年ぶりとなる利下げに舵を切る決定を行っており(注1)、一昨年以降の利上げ局面が大きく転換する動きをみせている。この背景には、ここ数年の歴史的大干ばつに加え、商品高や国際金融市場における米ドル高、コロナ禍からの経済活動の正常化の動きなどが重なりインフレが大きく上振れする展開が続いてきたものの、商品高や米ドル高の一巡も追い風に昨年末以降のインフレ率が頭打ちの動きを強めてきたことがある。さらに、今年4月以降のインフレ率は中銀の定めるインフレ目標(3.00±1.50%)の範囲内で推移するなどインフレ収束の動きが確認されるとともに、政府は財政規律の向上に向けた取り組みを強化させたことも中銀の利下げ実施を後押ししたと考えられる。なお、足下の同国経済を巡っては、インフレ鈍化による実質購買力の押し上げを受けた家計消費の堅調さが景気底入れの動きを後押しする一方、中銀の高金利政策が企業の設備投資や家計の住宅投資の重石となる展開が続いている(注2)。同国では今年1月に左派のルラ政権が誕生しており、政権からはルラ大統領をはじめ、経済閣僚が中銀に対して早期の利下げ実施を求めるなど『圧力』を強めるとともに、上述した財政規律向上への取り組みを通じて側面支援する動きをみせてきた。8月の前回会合において同行は、先行きの政策運営を巡って数回は同程度(50bp)の追加利下げを示唆する姿勢をみせる一方、足下では商品市況が底入れするとともに、米ドル高の動きも再燃するなか、足下のインフレ率は再び加速に転じるなどインフレが再燃する動きが確認されている。こうした状況にも拘らず、政府内では利下げペースの加速を示唆するなど中銀にけん制を掛ける動きがみられたものの、中銀はあくまで前回会合で示した通り50bpの利下げを決定した上で、会合後に公表した声明文では「全会一致で決定するとともに、今後数会合で同規模の追加利下げを予想する」との見通しを維持した。一方、利下げサイクルがどの程度続くかを巡っては「インフレ動向、市場のインフレ期待、中銀のインフレ予想、需給ギャップといったリスクバランスに左右される」との考えを示している。また、財政規律向上への取り組みを巡って「インフレ期待の固定による金融緩和には、財政目標の実現が重要であり、目標実現の重要性を強調する」とするなど、政府に対して改めて財政規則法に基づく慎重な財政運営の重要性を訴えた格好である。というのも、政府が先月末に連邦議会に提出した来年度予算案については、来年度のプライマリー収支の黒字化を見込む一方、大幅な税収増を前提とするなど実現のハードルが極めて高いものとなっていることがある。なお、同国経済については「想定より力強い回復が示されたが、先行きについては引き続き数四半期の景気減速が見込まれる」としつつ、物価動向について「今年は+5.0%、来年は+3.5%、再来年は+3.1%」と先月時点(今年は+4.9%、来年は+3.4%、再来年は+3.0%)からそれぞれわずかに上方修正している。よって、中銀はあくまで先行きについて同程度(50bp)の利下げの可能性に含みをみせる一方、利下げ幅の拡大についてその可能性を排除したものと捉えることが出来る。他方、レアル相場はインフレ鈍化による実質金利のプラス幅拡大に伴う投資妙味の向上を追い風に底入れする展開が続いたものの、足下では利下げ実施や米ドル高の再燃を受けて頭打ちしており、当面は上値が抑えられる展開が続くと予想される。


注1 8月3日付レポート「ブラジル中銀は一転してハト派姿勢を強める形で3年ぶりの利下げ実施」
注2 9月4日付レポート「ブラジル、景気底入れは続くも用心すべき材料には事欠かない状況」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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