インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

電力不足が続く南アフリカ、経済のみならず政治の動きにも要注意

~「中立」から「親ロシア」にシフトする兆しもみられるなか、政治を揺さぶる可能性も予想される~

西濵 徹

要旨
  • 南アフリカでは、度々コロナ禍が再燃するも足下では経済活動の正常化が進められている。他方、近年は中国との結び付きが強まるなか、中国のゼロコロナが景気の足を引っ張ることが懸念される。さらに、慢性的な電力不足に伴い全土で計画停電が実施されるなど、幅広い経済活動の足かせとなる状況も続く。また、商品高によるインフレに加えて米ドル高による通貨ランド安も重なり、中銀は断続的な利上げとともに、大幅利上げを余儀なくされる展開が続いた。足下では米ドル高の一服でランド相場は底打ちしている上、商品高の一服でインフレ率も鈍化している。こうしたなか、中銀は26日の定例会合で8会合連続の利上げを行うも、利上げ幅を25bpに縮小させた。計画停電が景気の足かせとなるなか、中銀は先行きのインフレ鈍化を期待して利上げ幅の縮小に動いたが、中国のゼロコロナ終了はインフレ再燃を招く可能性はくすぶる。ロシア産原油受け入れに向けて関係深化を図る動きもみられ、来年の総選挙に向けてナショナリズムが政治を揺さぶることも予想されるなど、先行きは経済のみならず政治にも不透明感が高まる可能性に注意が必要となる。

南アフリカを巡っては、ワクチン接種の遅れを理由に度々コロナ禍が再燃する動きがみられたものの、過去の感染爆発などにより集団免疫の獲得が進んでいるとみられるほか、平均年齢の若さなども影響して感染収束が進むとともに、経済活動の正常化の動きが広がっている。他方、同国経済は輸出がGDPの約3分の1を占めるなど構造的に輸出依存度が相対的に高い上、財輸出の約6割を鉱物資源などが占めるなど、国際商品市況の動向の影響を受けやすい特徴がある。さらに、近年の高成長を追い風に輸出に占める中国向け(含、香港・マカオ)の比率が高まり、足下では輸出全体の13%強を占める水準まで上昇しているほか、中国資本による対内直接投資も拡大しており、中国経済の動向の影響を受けやすくなっている。こうしたなか、中国のゼロコロナ戦略への拘泥が中国景気の減速のみならず、サプライチェーンの混乱を通じて中国経済との連動性が高い国々に悪影響が伝播したほか、欧米など主要国景気の不透明感が高まるなど世界経済の減速が意識されたことは、同国の輸出にとって額、及び数量の両面で下押し圧力となることが懸念される。また、商品市況の上振れの動きは世界的なインフレを招くなか、同国においても食料品やエネルギーなど生活必需品を中心にインフレが顕在化しており、中銀は一昨年11月に3年ぶりの利上げに動くとともに、その後も物価抑制を目的に断続的な利上げを実施した。さらに、昨年の国際金融市場では米FRB(連邦準備制度理事会)などのタカ派傾斜に伴い経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の脆弱な新興国を中心に資金流出が強まり、その動きに伴う米ドル高はランド安を招くとともに、昨年10月にランド相場は一時コロナ禍以来の安値を更新した。ランド安は輸入インフレを通じて一段のインフレ昂進を招く懸念があるため、中銀は物価、及び為替の安定を目的に米FRBに歩調を併せる形で大幅利上げを余儀なくされた(注1)。なお、昨年末以降は米ドル高の動きに一服感が出ていることを受けて調整が続いたランド相場も底打ちに転じており、ランド安が輸入インフレを招く懸念は後退しているほか、インフレ率も昨年7月をピークに頭打ちに転じている上、昨年末にかけては世界経済の減速懸念を受けた商品市況の一服も追い風に伸びが鈍化している。他方、同国では慢性的な電力不足を理由に全土で計画停電が実施されるなど幅広い経済活動の足かせとなるなか、停電措置が来年まで続く可能性が指摘されるなど長期化が避けられない状況にある。こうしたなか、中銀は26日に開催した定例会合において政策金利を8会合連続で引き上げるも、利上げ幅を25bpに縮小して7.25%とする決定を行った。会合後に公表した声明文では、5人の政策委員のうち「3名が25bp、2名が50bpの利上げを主張した」と票が割れたことを示す一方、「利上げ実施後も短期的には資金需要の追い風となる状況が続く」としつつ「これまで景気動向は不安定な状況が続き、先行きは一段と不透明になっているが、電力不足が解消すれば上向くことが予想される」として、計画停電の影響に留意する姿勢をみせた。同行は計画停電による実体経済への影響について、最大で経済成長率が▲2pt下押しされるとの見方を示す一方、ESKOMの試算では昨年は220億ランド(GDP比0.3%)の生産が下押しされたとしており、悪影響が出ることは避けられそうにない。中銀は先行きのインフレ率について、短期的に高止まりするも順調に鈍化するとの見方を示しているが、中国によるゼロコロナ終了の動きは先行きの商品市況を押し上げるなどインフレ再燃に繋がる可能性もくすぶる。他方、来月には中国、及びロシアとの合同軍事演習の開催を予定するなど、旧ソ連時代から関係が深いロシアへの協調姿勢を示すことでロシア産原油の受け入れ拡大による物価安定を目指す動きもみられる。この背景には、同国が元々英国の植民地であった歴史から欧米への忌避感が根強い一方、旧ソ連が反アパルトヘイト(人種隔離政策)闘争を支援した経緯からロシアに親近感を持つ層が一定程度存在するほか、外交面では長らく東西双方に属しない非同盟運動に加盟することで全方位外交を展開してきたことが影響している。さらに、ウクライナ問題が激化して以降、インターネットなどではここ数年広がりをみせるナショナリズムと結び付く形で反欧米的な論調が流布される動きもみられ、昨年末に実施された与党ANC(アフリカ民族会議)議長選ではラマポーザ大統領が勝利を収めて政権が維持されたものの(注2)、来年に予定される総選挙に向けてはこうした動きが政治を揺るがすことも予想される。その意味では、経済のみならず、政治を巡っても不安定な展開が続く可能性が高まることも考えられる。

図表1
図表1

図表2
図表2

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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