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2022.09.06
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OPECプラス、2022年10月は前月の「気持ち」の取り返しを決定
~世界経済の不透明感の高まりに加え、イラン核合意の行方への警戒も影響している模様~
西濵 徹
- 要旨
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- 足下の世界経済は、中国の「ゼロ・コロナ」戦略への拘泥に加え、世界的な物価高を受けた米FRBなど主要国中銀のタカ派傾斜も重なり、全体として頭打ちが意識される状況にある。OPECプラスはコロナ禍対応を目的に過去最大の協調減産に動くも、昨年以降は一転段階的に減産縮小に動いてきた。原油高を受けてOPE Cプラスは減産縮小の前倒しに加え、米バイデン大統領の増産要請を受けて9月には日量10万バレルと気持ちばかりの増産に動いた。しかし、世界経済の減速懸念を受けて原油価格は調整したため、10月は日量10万バレルの減産を決定し、気持ちばかりの増産を取り返した格好である。状況に応じて緊急会合の開催に含みを持たせるなど、原油価格の下支えを図る取り組みを強化する可能性は高いと判断出来る。
足下の世界経済を巡っては、中国当局による『ゼロ・コロナ』戦略への拘泥が中国経済の足かせになっている上、コロナ禍からの回復が続いた欧米など主要国も幅広い商品市況の底入れなどによる物価高に直面し、中銀は物価抑制を目的にタカ派傾斜を強めて金利高も進むなど景気に冷や水を浴びせることが懸念されており、全体として頭打ちが意識されている。他方、コロナ禍による世界経済の減速を受けて過去最大規模の協調減産に動いたロシアを含む主要産油国(OPECプラス)は、昨年から段階的に協調減産の縮小に動いてきたほか、先月末時点において協調減産を実質的に終了させるなど『ポスト・コロナ』を意識した対応を進めてきた。この背景には、年明け以降にウクライナ問題の激化を受けて欧米などがロシアに対する経済制裁を強化したことで供給懸念が意識されて国際原油価格は上振れする一方、米国など主要原油消費国は戦略原油備蓄の放出に動くとともに、米国はOPECプラスの一員であるサウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)に対して増産を求めたことがある。なお、OPECプラスは全会一致を原則としており、コロナ禍を経てOPECプラスの国々はロシアを含めた枠組強化により価格安定を図ったことでロシアの意向を無視することが出来ない一方、中東諸国のなかにはここ数年の米国の対中東戦略を巡って不信感が高まっていることも重なり、両国は明確なスタンスを示さない姿勢をみせた(注1)。その一方、ウクライナ情勢の悪化を受けて欧州はロシア産原油の輸入縮小への取り組みを強化したほか、ロシア産原油への価格上限を設定するなど圧力を強める一方、戦略備蓄放出や米国などのシェールオイル増産にも拘らず、ロシア産原油の供給減に加えてアフリカ諸国の生産低迷も重なり、世界的な需給はひっ迫して国際原油価格は上振れした。よって、OPECプラスは今年7月及び8月の協調減産枠について、9月末の協調減産終了を前提にしつつ、9月の協調減産縮小分を7月及び8月に均等に上乗せして実質的な増産とすることにより、OPECプラスの枠組を重視するロシアにも、増産を求める米国の双方の顔を立てる決定を行った(注2)。ただし、その後の国際原油価格も高止まりしたため、米国のバイデン大統領は7月の中東歴訪に際してサウジのムハンマド皇太子との初会談に臨み、同皇太子の関与が疑われるサウジ人記者殺害事件を理由に悪化した関係修復に動いたほか、湾岸協力会議(GCC)の拡大首脳会議に出席するなど原油増産に向けた交渉を強めた。結果、OPECプラスは9月の産油量を日量10万バレルとわずかな追加増産を決定し、上述のように米国による増産要求に対して『気持ち』ばかりの対応をみせた(注3)。他方、足下の世界経済は上述のように頭打ちが意識される動きが顕在化している上、こうした状況を反映して底入れする動きが続いた国際原油価格は一転して調整してきた。なお、7月のOPECプラス全体の原油生産量は目標を289.2万バレル下回る一方、IEA(世界エネルギー機関)に拠れば原油在庫は年内については日量90万バレル、来年前半も日量50万バレル増加する(供給過剰)と見込まれるとの見通しが示されている。他方、OPECプラスが10月の生産動向を協議する閣僚級会合前のJTC(合同専門委員会)やJMMC(合同閣僚監視委員会)では、一部加盟国の生産低迷を理由に年内の供給過剰予想を日量40万バレルと従来見通し(同80万バレル)から縮小するとの見通しが共有された。事前の金融市場においては減産に動くとの見方が出る一方、ロシアは減産に反対するなど市場の見方が交錯する動きがみられたなか、閣僚級会合では10月の産油量について日量10万バレルの小幅減産を実施することで合意し、9月の小幅増産という気持ちばかりの対応を取り返した格好である。今回の合意による減産幅(日量10万バレル)は世界の需要の0.1%相当に留まり、直接的な影響は大きくないとみられる一方、会合後に公表された声明文では、「市場動向に対応すべく、必要であればいつでもOPECプラス閣僚級会合の招集検討を求める」として10月5日の次回会合前の緊急会合開催に含みを持たせた。段階的増産から一転して減産に動いた背景には、世界経済を巡る不透明感の高まりに加え、足下ではイラン核合意の再建協議が大詰めを迎えるなか、制裁緩和に伴いイランの生産が拡大に動けば需給が大きく緩むことを警戒していることも大きいとみられる。足下の国際原油価格の水準は多くの産油国にとり財政均衡水準をわずかに上回るなど依然『心地よい』と捉えられる水準であるなか、一段の調整に対しては毅然とした対応を取ることを示唆したものと捉えられる。よって、今後もOPECプラスは原油価格を下支えする対応を強化する可能性は高いと見込まれる。


注1 3月14日付レポート「OPECプラスは米国の増産要請に応えるだろうか」
注2 6月3日付レポート「OPECプラス、米国・ロシア双方の「顔を立てる」(2022年7月及び8月は日量64.8万バレルの増産)」
注3 8月4日付レポート「OPECプラス、2022年9月は日量10万バレルの「小幅増産」で合意」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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