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2022.05.13
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メキシコ中銀、米FRBのタカ派傾斜に追随して50bpの追加利上げ
~先行きの「一段の強力な措置」を示唆、スタグフレーション懸念も難しい対応を迫られる展開が続こう~
西濵 徹
- 要旨
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- 国際金融市場では、世界経済の回復が続く一方、ウクライナ情勢の悪化による商品市況の上振れがインフレを招くなかで米FRBなどはタカ派傾斜を強めており、新興国を取り巻く状況は厳しさを増している。メキシコでは原油高や米国経済の堅調さが追い風になる一方、足下では米FRBのオーバーキルや中国景気の減速懸念が逆風となりつつある。昨年来インフレは昂進しており、中銀は昨年6月以降断続的な利上げを実施してきたが、米FRBのタカ派傾斜や金融市場環境の変化を受けて通貨ペソ相場を取り巻く環境は厳しさを増している。こうしたなか、中銀は12日の定例会合で50bpの利上げを決定し、昨年後半以降8会合連続の利上げに動いた。先行きも「一段の強力な措置」を検討するなどタカ派傾斜を強めている。景気の不透明感の一方で物価高という難しい環境にあるなか、中銀は先行きもタカ派傾斜という難しい対応を迫られよう。
このところの国際金融市場においては、欧米など主要国を中心に世界経済がコロナ禍からの回復を続ける一方、ウクライナ情勢の悪化を理由とする欧米諸国などのロシアへの経済制裁強化を受けて幅広い国際商品市況は上振れしており、世界的なインフレが警戒されている。こうしたなか、米FRB(連邦準備制度理事会)など主要国中銀はタカ派傾斜を強めており、コロナ禍対応を目的とする全世界的な金融緩和を追い風に『カネ余り』の様相を強めてきた状況は変化している。全世界的なカネ余りに加え、主要国の金利低下を背景により高い収益を求める一部のマネーは新興国に回帰する動きがみられたものの、金融市場を取り巻く環境変化を受けて縮小、ないし逆流する動きがみられる。こうした動きは経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の脆弱な新興国を中心に資金流出に繋がりやすいなか、メキシコは枯渇が懸念されるも産油国であることを理由に商品市況の上振れが資金流入を促す展開が続いてきた。さらに、メキシコは輸出の約8割を米国向けが占める上、GDPの4%に相当する移民送金の9割超が米国から流入するなど米国経済への依存度が極めて高く、米国経済が底堅く推移していることも資金流入の追い風となる動きが続いてきた。しかし、足下においては米FRBがタカ派傾斜を強めるなか『オーバーキル』に繋がることに加え、『ゼロ・コロナ』戦略を理由に中国景気が失速状態に陥ることが警戒されるなど、世界経済の下振れが意識されており、原油をはじめとする商品市況も一進一退の動きをみせるなど資源国を取り巻く状況も変化している。メキシコにおいては、国際商品市況の底入れを反映して生活必需品を中心にインフレ圧力が強まるなか、過去数年に亘る通貨ペソ安に伴う輸入物価の上振れもインフレ懸念を招いており、中銀は昨年半ば以降断続的な利上げに動いてきた。しかし、足下では商品市況の上振れにより生活必需品を中心とするインフレ圧力が強まっている上、感染一服による経済活動の正常化の動きもインフレ圧力を増幅させており、インフレ率、コアインフレ率ともに中銀の定める目標を大きく上回る推移が続いている。こうしたなか、米FRBは今月3~4日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)において50bpの大幅利上げの実施を決定するとともに、先行きも継続的な利上げ実施を示唆するなどタカ派傾斜を強めていることが改めて確認された。過去の米FRBの利上げ局面においては、メキシコは米国と時差が小さいことも影響して米国への資金流出が加速する動きが強まる傾向があり、中銀は資金流出を食い止める観点から追随して利上げに追い込まれる動きがみられた。足下の景気動向を巡っては、製造業の企業マインドは好不況の分かれ目となる水準を下回る推移が続くなど回復途上にある上、外需環境を取り巻く不透明感が高まっているにも拘らず、上述のようにインフレが顕在化しており、資金流出に伴うペソ安はインフレ懸念を増幅させることが懸念される。よって、中銀は12日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利を50bp引き上げて7.00%とする決定を行った。同行による利上げ実施は昨年6月以降8回連続となり、累計の利上げ幅も300bpとなるなど急激な引き締めに追い込まれている様子がうかがえる。なお、会合後に公表された声明文では、5人の政策委員のうち4人が50bpの利上げを主張する一方、1名(エスピノサ委員)が75bpの利上げを主張するなど、一段の大幅利上げが検討されている様子が確認された。さらに、先行きの政策運営について「インフレ及びインフレ期待を取り巻く環境は複雑化しており、目標実現に向けては一段と強力な措置が検討される可能性がある」として、政策委員がタカ派姿勢を強めている様子もうかがえる。同行を巡っては、昨年末に総裁人事で混乱する動きがみられたほか(注1)、3月の前回会合の直前にはロペス=オブラドール大統領が決定内容を公表するハプニングが発生するなど独立性に対する懸念が高まる動きがみられたものの(注2)、現時点においては独立した政策運営が担保されている模様である。ただし、景気の先行き不透明感が高まる一方で物価高が顕在化するなどスタグフレーションが懸念されるなか、中銀はこれまで以上に難しい対応を迫られると予想されるが、先行きも一段の利上げやタカ派傾斜が避けられないであろう。


注1 2021年12月8日付レポート「メキシコ中銀、次期総裁の手腕は未知数も、金融市場の混乱はひとまず一服」
注2 3月28日付レポート「メキシコ、原油高はペソ相場を支えるも、中銀は難しい対応を迫られる展開」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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