FRBは早くも利上げ加速へ

~5月の50bp利上げは既定路線~

田中 理

要旨
  • 16日の利上げ開始後、米FRB関係者から今後の利上げ幅拡大を示唆する発言が相次いでいる。労働需給逼迫やインフレ圧力を示唆する経済指標が続いており、5月FOMCでの50bp利上げはほぼ確実な情勢。資源価格の高止まりや需給逼迫の持続が予想され、その後も25bpを上回る利上げが継続される可能性が高まりつつある。利上げ開始を無難に消化し、50bp利上げ観測浮上後も、米株式相場は底打ち傾向にある。今後もこうした相場展開が続くかは、6月以降の利上げ幅、量的引き締めの開始、欧州諸国のロシア産原油・天然ガス禁輸の有無、資源価格の動向が鍵を握ろう。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は21日の講演で、必要に応じて25bpよりも大幅な利上げを実施する可能性や、中立金利を上回る水準に政策金利を引き上げる可能性に言及し、その後もFRB関係者による50bp利上げを示唆する発言が相次いでいる。こうしたなか、24日に発表された3月19日までの週の新規失業保険申請件数は18万7千件と1969年9月6日の週以来、52年半振りの低水準を記録し、労働需給の著しい逼迫が続いていることを確認。同日発表された3月の米国の総合PMIの速報値も前月の55.9から58.5に改善モメンタムが加速し、ウクライナ情勢の余波で同月に改善が鈍化したユーロ圏の計数とは対照的に、米国では製造業・サービス業ともに業況が上向いている。企業の採用意欲も引き続き旺盛で、雇用判断指数は製造業が昨年7月以来、サービス業が昨年4月以来の水準を回復し、コロナ第一波終了後の既往ピークに迫っている。財・労働需給の逼迫と資源高を反映し、投入物価と産出物価指数がともに過去最高圏にあり、物価上昇圧力の継続が確認される。

FRB高官の相次ぐタカ派発言や、旺盛な需要、労働需給の逼迫、インフレ圧力を示唆する最近の経済指標の数々に鑑みれば、5月の公開市場委員会(FOMC)での50bp利上げはほぼ確実な情勢にある。今後の利上げペースはデータ次第だが、ウクライナ情勢の緊迫継続で資源価格の高止まりが予想されるうえ、3月と5月の連続利上げで景気や労働需給の逼迫が十分に解消される公算は低く、その後も25bpを上回る利上げが継続される可能性が高まりつつある。3月の米国のPMI速報値では、製造業の入荷遅延指数が上昇(製造業PMI作成時に用いる逆数が低下)し、財需給逼迫の一因となっていた供給制約がやや緩和した可能性が示唆される。その一方で、中国でのコロナの感染再拡大と各地で広がるロックダウン再開が、新たな供給制約をもたらす恐れがある。また、欧州を訪問中の米国のバイデン大統領がロシア産天然ガスへの依存を減らす方策について欧州首脳との協議を予定している。欧州連合(EU)はエネルギー調達でのロシア依存の見直しを模索するが、ロシア産の原油や天然ガスの禁輸に踏み切るかを巡っては、今のところ加盟国間で意見の隔たりが大きい。今のところ欧州が禁輸で一致する見通しは立たない。ただ、ロシアのプーチン大統領は23日、日米欧の非友好国に対して同国が輸出する天然ガス代金の支払いをルーブルで行うことを要求した。欧州諸国はこれに反発しており、資源供給を巡る思惑が原油や天然ガス価格の高止まりにつながりやすい。

米国の株式相場は、3月の利上げ開始に向けたFRBの市場対話が奏功した形で、初回利上げを無難に消化し、このところ底打ち傾向にある。パウエル議長は21日の講演で50bpの利上げを示唆したのと同時に、1994年を除く過去の利上げが米景気の軟着陸につながっていることに言及し、中立金利を上回る利上げに米国経済が耐えられることに自信を深めている。「利上げ=株安」という図式は当てはまらない。ウクライナ戦線の停滞で新たなニュースフローが乏しいことや、欧州諸国の足並みの乱れでロシア産原油・天然ガスの禁輸に踏み込めないことも、資源価格の上昇一服を通じて、金融市場の動揺一服につながっている。今後もこうした相場展開が続くかは、米国発の要因としては、労働需給やインフレ動向に加えて、5月のFOMC後も50bp利上げが続くかどうか、量的引き締め(QT)の開始など、海外発の要因としては、戦線膠着を打開するロシアの強硬手段の有無、脱ロシアに向けた欧州諸国の動きと禁輸措置、それによる資源価格の動向が注目されよう。

以上

田中 理

田中 理

たなか おさむ

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 欧州・米国経済

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