経済対策は2度に分けて実施へ

~第1弾の物価高対応は参院選前に~

星野 卓也

要旨
  • 経済対策は参院選前と参院選後の2度に分けて実施される見込みだ。第1弾は足元の物価高への対応を中心とした政策に。財源として22年度予算の予備費利用が念頭にあるようだ。規模を確保するために一般予備費0.5兆円に加えてコロナ対策予備費5.0兆円が利用される可能性があるが、本来の使途と異なる目的での予備費利用は財政民主主義の観点で禍根も残しそうだ。
  • 第2弾は岸田政権の「新しい資本主義」実現などを目指す政策パッケージとなる。参院選前に内容を決定、選挙での争点化が図られ、実施されるのは参院選後となる見込みだ。
目次

対策は2度実施へ

22日の本予算成立を受け、ウクライナ危機を受けた経済政策に関する議論が加速している。現時点での報道情報を整理すると、経済対策は①年度明けの早い段階で物価高対応に焦点を当てた対策、②7月の参院選後に岸田政権の「新しい資本主義」を念頭に置いた経済対策、が実施される見込み。対策は2度に分けて行われることになりそうだ。

第1弾:物価高対応―予備費の利用が念頭に

第1弾は足元の原油や食料品価格の上昇への対応になる。現在実施されている石油元売り業者に対する補助金の継続や家計向け給付金等が俎上に載ろう。年度明け4月中にも内容がとりまとめられ、決定に至りそうだ。

参院選前の物価高対策実施はほぼ既定路線になりつつあり、財源は2022年度予算の予備費活用が想定されているようだ。先々週のレポート1執筆時点では補正予算編成を行うと考えていたが、これは①財政当局が急遽の災害等に対応する目的の一般予備費を年度初めから消化して、今後の財政運営のゆとりを無くすようなことはしないとみていた、②予備費を活用するにしても一般予備費(0.5兆円)の範囲では規模が限られる、と考えていたためだ。しかし、報道によれば一般予備費の活用に加えて22年度予算に計上されているコロナ予備費(5.0兆円)の流用も選択肢になっているようだ。この場合には補正予算無しでも計5.5兆円の範囲で追加歳出を組むことが可能ではある。予算を成立させる必要もないため、執行もスムーズだ。

ただ、コロナ対策目的で編成した予備費を、政府の意向で他の使途に用いることは財政民主主義の観点でも禍根も残しそうだ。スケジュール的な厳しさも指摘されるが、参院選前の補正予算編成の方が筋は通っているように思える。

第2弾:岸田政権の「新しい資本主義」実現などを目指した政策パッケージ

第2弾は新しい資本主義の実現を念頭に置いた政策パッケージになろう。参院選前にとりまとめが行われ、参院選後に実施するスケジュールで組まれることになるようだ。経済対策の選挙での争点化が図られる。補正予算編成を伴う形になり、選挙前ということもあり規模は大きくなる可能性が高そうだ。財源には追加国債発行を中心に前年度純剰余金等が充てられる見込みだ。


1 Economic Trends「ウクライナ危機・経済対策の行方」(2022年3月11日)

星野 卓也


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星野 卓也

ほしの たくや

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 日本経済、財政、社会保障、労働諸制度の分析、予測

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