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2026.05.25
日本経済
経済財政政策
物価
物価指標(日本)
高市政権
電気・ガス代補助の物価への影響と今後の課題
~夏で終わらず、秋以降の支援延長・拡大の可能性も~
新家 義貴
- 要旨
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- 政府は、2026年夏に電気・ガス料金補助を再開する方向で最終調整している。報道によると、期間は7~9月、支出規模は5,000億円程度、世帯あたりの負担軽減額は3か月で5,000円程度とされる。前年夏より手厚い内容となる見込みである。
- CPIへの影響は8~10月に表れ、補助がない場合に比べてコアCPIを▲0.4~▲0.6%Pt程度押し下げると試算される。ただし、前年夏にも補助があったため、前年比での追加的な押し下げ効果は▲0.2%Pt程度になる。
- 資源価格上昇の影響は秋から冬に本格化するため、支援が3か月で終了しない可能性がある。補助の恒常化による財政負担の拡大と出口戦略が課題となる。
1. 電気・ガス代補助が昨年対比拡充されて実施か
各種報道によると、政府は電気・ガス料金の補助(電気・ガス価格激変緩和対策事業)を再開する方針で最終調整に入っているとされる。本制度は2023年1月使用分から開始され、その後、延長・縮小・休止・再開を繰り返してきた。時期を問わず通年で実施されていた時期もあったが、近年は、冷房需要や暖房需要が増える夏と冬に、期間限定で実施されることが多くなっている。
直近では、26年1月~3月にかけて補助が実施された。1、2月使用分については、電気料金が家庭向けで1キロワットアワーあたり4.5円、都市ガス料金が1立方メートルあたり18.0円引き下げられた。3月使用分については、電気料金が1キロワットアワーあたり1.5円、都市ガス料金が1立方メートルあたり6.0円の引き下げとなった。この補助はいったん26年3月使用分で終了したが、物価高に苦しむ家計への支援策として、今夏に再び実施される見通しである。実施時期は、前年夏と同様に7月から9月となる見込みだ。
具体的な補助額については、現時点で政府から正式には公表されていない。5月25日の日本経済新聞の報道によると、電気料金について、家庭向けで1キロワットアワーあたり7月が3.5円、8月が4.5円、9月が3.5円の支援とする方向で調整されているとのことである。前年夏の支援額は、7月が2.0円、8月が2.4円、9月が2.0円であったため、報道通りであれば、今回は前年夏よりも1キロワットアワーあたり1.5~2.1円大きい支援となる。
都市ガスについても補助は実施される見込みであるが、支援額についての具体的な報道はまだ確認されていない。今回の支出規模は電気・ガスを含めて5,000億円程度が想定されており、世帯あたりの負担軽減額は3か月合計で5,000円程度になるとされている。前年夏の支援では、支出規模が2,881億円、標準的な世帯の負担軽減額が3か月合計で3,000円程度であった。これと比べると、今夏の支援は規模が大きく拡大する見込みである。

2. 8~10月のCPIコアを前年比で▲0.2%Pt程度押し下げか
次に、消費者物価指数への影響を見る。電気代、ガス代のCPIへの反映は「使用月」ではなく「請求月」に基づくため、26年7~9月使用分の補助は、CPI上では26年8~10月に影響する点に注意が必要である。
ここでは、電気料金について、7月が1キロワットアワーあたり3.5円、8月が4.5円、9月が3.5円の補助が実施されると仮定する。都市ガスについては具体的な報道がないため、前年夏と同じく、1立方メートルあたり7月が8.0円、8月が10.0円、9月が8.0円の補助が実施されると仮定する。
この場合、補助が実施されないケースと比較して、CPIコアは26年8月に▲0.45%Pt、9月に▲0.58%Pt、10月に▲0.45%Pt程度押し下げられると試算される。前年夏の支援よりも補助額が拡充されるため、CPIの押し下げ効果も大きくなる。もっとも、前年同月にも夏場の補助が実施されていたため、前年比で見た追加的な押し下げ効果は、補助がない場合との比較よりも小さくなる。今回の電気料金補助が前年夏よりも1キロワットアワーあたり1.5~2.1円大きいことを踏まえると、前年比ベースでは、8~10月のCPIコアを▲0.2%Pt程度押し下げるとみられる。
3. 秋以降も延長される可能性あり。見えない出口
ガソリン、灯油、電気・ガスなどについて、資源価格高騰を背景とした急激な上昇をならすために、時限的な補助を行うことは理解できる。財政負担は増えるものの、家計負担軽減のための緊急対応として致し方ないだろう。
ただし、補助を長期化・恒久化させることは望ましくない。あくまで緊急対応としての一時的措置であることを明確にし、危機が解消された後には速やかに手じまえる制度設計としておく必要がある。
もっとも、23年1月に始まった電気・ガス料金補助は、途中で支援規模の縮小や休止をはさみながらも、現在に至るまで断続的に続いている。最近では、以前のように年間を通じて補助する形ではないものの、冷房代や暖房代がかさむ夏と冬の支援策として定着しつつある。一度始めた補助金を終了することが、いかに難しいかがよくわかる。
筆者は、今回の支援が3か月で終わらない可能性が高いと考えている。実際のところ、イラン情勢悪化を受けた3月以降の資源価格上昇の影響は、夏の段階では限定的なものにとどまるとみられる。資源価格の上昇が実際の電気・ガス料金に反映されるには、制度上、一定の時間を要するためである。電気・ガス料金の上昇が本格化し始めるのは秋以降とみられ、上昇幅が最も大きくなるのは冬場になる可能性が高い。
そのため、夏で支援を打ち切れば、秋から冬にかけて予想される電気・ガス料金の上昇によって、家計負担は大きく増加する可能性がある。これまでの政権の対応を踏まえると、秋にも支援を継続し、冬には支援を拡充するなど、何らかの追加対応が行われる可能性が高いように思われる。
とりわけ、政策判断が難しくなるのは冬である。すでに26年1~3月にかけての支援では、5,000億円を超える額が支出されている。仮に、27年1~3月の電気・ガス料金上昇による物価押し上げを抑制しようとすれば、これを大きく上回る規模の支出が必要になる可能性がある。冬場の支援をどの程度の規模で実施するのか、また、その財源をどのように確保するのかが、今後の大きな論点となるだろう。
このように、今夏の電気・ガス料金支援は、家計負担の軽減とCPIの押し下げに一定の効果を持つと考えられる。報道ベースの電気料金補助額を前提とすれば、前年夏よりも支援は手厚くなり、8~10月の物価上昇率を一時的に下押しするだろう。ただし、こうした物価押し下げは、補助によって利用者の負担を一時的に肩代わりするものであり、燃料費の上昇圧力自体を取り除くものではない。むしろ、燃料費上昇の影響が秋から冬にかけて本格的に料金へ反映される場合、支援の継続や拡充を求める圧力は一段と強まる可能性がある。電気・ガス料金補助は、すでに夏冬恒例の物価高対策になりつつあり、財政負担の拡大と出口戦略の難しさが今後の課題である。政府には、緊急対応としての必要性を説明すると同時に、支援の対象、規模、終了条件を明確にし、補助金の恒常化を避ける姿勢が求められる。
新家 義貴
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。