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- 過去の米利上げ局面との比較
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- 米FRBは3月のFOMCで利上げを開始し、今回分を含めて来年末までに2.55%ポイント、0.25%刻み換算で10回の利上げを見込む。過去の利上げ局面の株価パフォーマンスは、利上げ開始から1~3ヶ月は調整色が強まるが、その後は上昇に転じることが多い。今回の利上げペースは、インフレ圧力が抑制された1990年代以降の平均をやや下回るが、2015~18年の前回利上げ局面を大きく上回る。FRBの大勢意見は、インフレ抑制には中立金利を上回る水準への利上げが必要と判断しており、その後の景気後退をある程度容認する内容と言える。物価の上振れが続けば、景気のオーバーキルへの警戒が高まる恐れがある。
米連邦準備制度理事会(FRB)は3月15・16日の公開市場委員会(FOMC)で、2018年12月以来の利上げを決定し、FF金利の誘導目標レンジを0.00~0.25%から0.25~0.50%に引き上げた。経済活動と雇用指標が力強さを増し、コロナ関連の需給不均衡、エネルギー価格上昇、広範な価格上昇圧力を背景に物価が高止まりしている。ウクライナ情勢が米国経済に与える影響は不透明だが、短期的には物価のさらなる上振れをもたらす。雇用最大化と長期的な2%インフレの達成には、今後も誘導目標レンジの継続的な引き上げが適切との見解を示した。FOMC参加者の政策金利見通しの中央値は2022年末時点で1.9%、2023年末時点で2.8%に上方修正され、25bp刻みの利上げを前提にすると、これは2022年中に5~6回、2023年にも3~4回の追加利上げを想定している。FRBの大勢意見は、インフレ圧力の封じ込めに、2.4%の中立金利を上回るアグレシッブな利上げが必要と判断している。来年の積極利上げは金融市場の想定をやや上回ったが、既に年7回の利上げがコンセンサスとなっていたことや、ウクライナの停戦交渉や中国の景気刺激策への期待もあり、米株式相場は上昇して引けた。
FRBが誘導目標の公表を開始した1971年以降の期間について、誘導目標の水準を参考に過去の利上げ局面を比較した(図表1)。マネーサプライ目標の採用でFF金利の動きが不安定な時期もあったが、過去9回の利上げ局面は、最短で約200日、最長で1000日超、平均で約580日継続した。利上げ幅は、最小で1.75%ポイント、最大で11.75%ポイント、年換算では平均3.75%ポイント、1990年代以降の過去4回の利上げ局面の年換算は平均1.97%ポイントにとどまった。利上げ開始後の株価パフォーマンスを比較すると、開始から1~3ヶ月の間は調整色が強まる傾向にあるが、その後は上昇に転じることが多い。利上げを継続している間の株価パフォーマンスも総じて堅調で、必ずしも「利上げ=株安」ではない(図表2)。こうした傾向は過去に比べてインフレ圧力が抑制され、利上げ幅が小さかった近年により当てはまる。
FOMC参加者の中央値予想によれば、今回の利上げ局面では2023年末までに2.55%ポイントの利上げを見込む。0.25%刻みを前提にすれば、これは10回の利上げに相当する。年平均に換算した利上げ幅は約1.4%ポイントと、2015~18年の前回利上げ局面の年平均(0.75%)を上回るが、1990年代以降の平均(1.97%)をやや下回る。
利上げ開始から景気が後退局面入りするまでの期間は、最短が1980~81年の利上げ局面の10ヶ月、最長が2015~18年の利上げ局面の51ヶ月だった(図表3)。次の利上げ局面まで景気が後退しなかったのが1983~84年と1994~95年の利上げ局面の2回、これを除く7回の利上げ局面の平均は32ヶ月だった。FOMC参加者の中央値予想では、2022~23年に利上げを継続した後、2024年に2.8%で政策金利を据え置き、長期的には2.4%への利下げを見込んでいる。積極利上げは米景気の堅調持続の裏返しだが、インフレ抑制のための積極利上げで、その後の景気後退をある程度容認する内容と言える。物価の上振れが続けば、景気のオーバーキルへの警戒が高まる恐れがある。
田中 理
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- 田中 理
たなか おさむ
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: 欧州・米国経済
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